今日のテーマは「移調の限られた旋法(移高が限られた旋法)」です。
英語では「Modes of Limited Transposition」です。
提唱者はオリヴィエ・メシアンですが、旋法によってはメシアン以前にも使った人は結構います。
なぜ移調が限られているのかと言うと、音階がシンメトリー…と言うか、規則的な音程で構成されているため、音階を半音ずつ上げていくとある地点で最初の音階の形に戻ってしまうからです。
詳しくは後述します。
第1旋法
移調の限られた旋法には第1旋法から第7旋法まで存在します。
まずは第1旋法ですが、これはジャズで言うホールトーン・スケールと同じ音階です。
日本語では「全音音階」と言います。
全ての音程が長2度、つまり「全全全全全全」という規則で出来ています。
大抵の音階には半音関係の音程がいくつか含まれていて、これによって今自分が音階上のどの位置にいるかが分かりやすくなるのですが、全音音階には半音が無いため、だんだんと自分がどこにいるか分からなくなり、フワフワした印象となります。
詳しくはこちら「ホールトーンスケールの使い方」をご覧下さい。
全音音階は長2度移調すると元の音階と同じ構成音になってしまいます。
例えばCホールトーンとDホールトーンは構成音が同じ。
GホールトーンとAホールトーンも構成音が同じです。
普通の音階ではこんなことは起こりません。
長音階や短音階は、どの音から始めようとも構成音がカブることはないため、主音ごとに12パターンの音階が存在します。
しかし全音音階は、主音を無視すれば「Cから始まるパターン」と「C#から始まるパターン」の2種類しか存在しません。
12パターン用意することが出来ないので「移調の限られた旋法」と言うのです。
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第2旋法
第2旋法は「半全半全半全半全」という音程で出来ています。
ジャズで言うコンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケールと同じですね。
この音階を2番目の音から始めると「全半全半…」となりディミニッシュ・スケールと同じになりますが、開始音が変わっただけなので、どちらも第2旋法に含まれます。
詳しくはこちら「dimスケール・コンディミスケール」をご覧下さい。
この音階は短3度移調すると元の音階と同じになってしまいます。
例えばCコンディミとE♭コンディミは構成音が同じ。
FコンディミとA♭コンディミも構成音が同じです。
先程の全音音階もそうでしたが、移調の限られた旋法は音程が規則的に構成されているため、半音ずつズラしていくと、循環小数のようにある地点で音程がピッタリ合致してしまいます。
つまり音程が規則的に構成されていれば、何でも移調の限られた旋法に成り得るのです。
構成音がカブるということは、例えばCコンディミは E♭ , F# , A の各コンディミと似た性質を持っているということです。
つまり、複調・多調の技法を使うことなく多数の調性の雰囲気を出すことが出来る。
調性を曖昧にしてもいいし、勿論この4つの中のどれか1つ(例えばCコンディミ)のみをフィーチャーしてもいいのです。
第3旋法
第3旋法は「全半半全半半全半半」という音程で構成されます。
これも2番目の音や3番目の音から開始しても構いません。
3番目の音から開始したものは一般に「チェレプニン音階」と呼ばれています。
詳しくはこちら「(作成中)」をご覧下さい。
この音階はC・E・A♭の各音の倍音列上の音を集めたものです。(もちろん平均律で近似しています)
また、長3度移調すると元の音階と同じになってしまうので、全部で4種類しか存在しません。
第4旋法
第4~7旋法は、全て6種類存在します。
これらは移調回数が多い…つまり今までの旋法に比べてカブリが少なく、複調・多調感が薄いため、メシアン自身は「さほどの興味は生じない」と言っています。
第4旋法は「半・半・短3度・半」という音程の繰り返しで構成されています。
この音階は第5旋法に2音(レ・ラ♭)を足したものとなっています。
第5旋法
第5旋法は「半・長3度・半」という音程の繰り返しで構成されています。
ある音から増4度と完全4度音程の音を交互に取っていくと、この音階が出来上がります。
第6旋法
第6旋法は「全全半半」という音程の繰り返しで構成されています。
これはホールトーンに2音(ファ・シ)を足したものとなっています。
ホールトーンに似ているものの、半音も含まれているため人工感は若干薄れ、これはこれで独特な雰囲気を持っています。
第7旋法
第7旋法は「半半半全半」という音程の繰り返しで構成されています。
これは12音から2音(ミとシ♭)を除いたものとなっています。
書籍
これらの音階は、メシアン本人が著した「音楽言語の技法(わが音楽語法)」という本の最後の方に載っています。
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それほどページを割いているわけではないし、読んだからといって使いこなせるようになる訳ではないので購入することはオススメしませんが、古本屋や図書館にあったらラッキー。
その他
先程チラッと触れましたが、規則的な音程で構成されていれば何でも移調の限られた旋法になります。
音階っぽい形をしたもの(例えば各音の音程が2度以内で構成されるようなもの)はメシアン先生が全部書き出してしまいましたが、音数を削れば上記以外にもいくつか存在しますよ。
例えば「オーギュメント・スケール」と呼ばれるこれとか。
(よく見かけるのは、これを第2音から始めたタイプ)
或いはこういったものとか。
(コンディミから2音抜いただけ)
あと当たり前ですが、完全な半音階も該当しますねw
1オクターブでなくてもいいのなら、次のようなものも可能。
私が考えた2オクターブに渡る音階。
これは「全半全全半」という音程の繰り返しで出来ています。
ポイントは、主音の1オクターブ上のドは使わないようにすることです。
「2オクターブ」ということをコンセプトに作っているので、1オクターブ上の音を使ってしまうと普通の音階と変わらなくなってしまいます。
「音階」という言葉を音楽辞典で調べても「1オクターブでなければいけない」とは書かれていなかったので、多分問題ないと思うw
移調回数は何回でしょうか。一つずつズラしていくと長3度上げたときに同じ構成音の音階が出来上がります。
しかしここで注意。
これは2オクターブを1つの単位とする音階なので、C1・D1・E1…の音とC2・D2・E2…の音は、同じ音名でも意味が異なります。
つまり、完全に合致する音階は短6度移調しないと現れません。よって全部で8種類存在するのです。
ちなみに、同じ理屈で3オクターブに渡る音階もいけます。
「全全半全全」という音程の繰り返しで構成されています。
全部で9種類存在するはずなのですが、あまり真面目に考えてはいないので分かりませんw
これも1オクターブ・2オクターブ上のドは使わないのがポイントです。
もしかしたら誰かが既に同じものを考えているかもしれませんが、私が調べた限りでは見当たりませんでした。
誰か知ってたら教えてw