音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

テトラコルド

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本日はテトラコルドについて解説いたします。

テトラコルド(テトラコード)とは、その名の通り4つの音(弦)を一つのまとまりとする考え方のことで、一般には音階・旋法をさらに細分化した単位として使われます。

 

オクターブを分割

では実際に見てみましょう。

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このように、4つの音を並べたものをテトラコルドと言います。

この「ドレミファ」の各音程に注目してみましょう。「全→全→半」というインターバルで構成されていますね。

この「ドレミファ」のテトラコルドの隣に、ソから始まり、且つ同じ「全→全→半」というインターバルを持つテトラコルドをくっ付けてみましょう。

 

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はい、長音階が出来上がりました。

つまり長音階は、「全→全→半」という音程から成る2つのテトラコルドで構成されていると考えられるのです。

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連接・離接

テトラコルドには、今説明したような並べ方と、1つの音を2つのテトラコルドで共有する並べ方の2種類が存在します。

音を共有する並べ方を「連接型」とか「連結型」などと言いますが、あまり例は多くありません。

一方、先程のように2つのテトラコルドが音を共有していない形を「離接型」とか「分離型」などと言います。こちらの並べ方のほうが多数派です。

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古代ギリシア人は、低音から高音に向かって「半→全→全」というテトラコルドを連接型や離接型で4つ組み合わせることにより、2オクターブの音階を考え出しました。

これについて詳しく知りたい方はこちら「古代ギリシア音楽 前編」をご覧下さい。

 

小泉理論

民族音楽学者の小泉文夫は、日本の5音音階は3音から成るテトラコルドを2つ並べることで説明できるとしています。

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一番上は陽音階(民謡音階)で、「1.5音→全音」というテトラコルドを2つ並べて作られています。

2番目は陰音階(都節音階)で、「半音→2全音」です。

3番目は律音階で、「全音→1.5音」です。

最後は琉球音階で、「2全音→半音」です。

 

3音だったら「テトラ」ではないだろう、と言いたくなるところですが、面白い理論なので突っ込むのはやめましょう。「東京ディズニーランド」みたいなもんです。

(一応「トリコルド」という言い方もあります)

 

古代ギリシア

先程ちらっと登場しましたが、テトラコルドの起源は古代ギリシアです。

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(反対向きの♭は、4分の1音下げることを表しています)

下行形で書かれているのでちょっと見づらいですが、古代ギリシアでは音階は下行するものと考えられていたらしいです。

 

古代ギリシア人は、このように大きく分けて3種類のテトラコルドを考え出しました。

いずれも両端が4度音程で、真ん中の音が可動式ですね。

厳密に言うと、例えば2番目の音を低く取るとか、3番目を高く取るとか、この中でもさらに色々細かく分かれます。

 

何となく予想がつくと思いますが、ディアトノンは「ダイアトニック」、クロマティコンは「クロマティック」、エンハルモニオンは「エンハーモニック」の語源になりました。

日本語では順番に「全音階」「陰影音階」「ハルモニア音階」と呼ばれます。

 

このテトラコルドを組み合わせることで音階を作ります。

例えばディアトノンを離接型で2つ並べると、現代で言うフリジア旋法が出来ますね。

勿論クロマティコンを2つ、或いはエンハルモニオンを2つ並べることも可能なのですが、「ディアトノン+クロマティコン」のように、異なる種類のテトラコルドを並べるのはNGらしいです。

 

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古代ギリシアにはこのような音階も存在していました。

歴史的にはディアトノンが最も古く、そこから派生する形でクロマティコンとエンハルモニオンが生まれました。

しかし「歌いにくい!」という当然の理由で、割とすぐに廃れてしまいました。(特にエンハルモニオンは)

作るときに気が付かなかったのかなぁ……

 

興味のある方はこの音階を使って曲を書いてみましょう。古代ギリシア人もきっと喜びますよ。

 

起源を考える

ところで、テトラコルドの両端はなぜ4度音程なのでしょうか。

「音が4つなんだから4度なのは当たり前だろう」と思いますか?

 

いえ、それは現代人の思い込みです。

音楽が体系立っていなかった古代ギリシア人にとっては、別に4度に拘る必要はなかったはずです。

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色々調べてみたのですが、この理由がどうも分からない。

 

もちろん「偶然」ということも大いに有り得ます。

歴史的には6度・7度・9度の音階(?)、或いは7音から成る8度の音階などを経て、我々が想像するような全音階に到達しました。

よって、6度や7度の音階以前に4度の音階が存在していても不思議ではありません。

しかし、「なんとなく出来たっぽいよ」では答えとして面白くないので、私の個人的な推測を述べてみようと思います。

 

そもそもテトラコルドは、キタラ(キタラー)やリラ(リュラ、ライアー)といった4弦楽器の調律法として考え出されたものなのですが、このキタラを発明したのはギリシア神話に登場するヘルメス(マーキュリー)だと言われています。

ちなみにヘルメスが作ったキタラは「ド ファ ソ ド」にチューニングされていたんだとか。

ほらね、4音だからと言って必ずしも両端が4度である必要はないんですよ。

 

その後、5弦→6弦→7弦…と、時代とともに弦が一本ずつ増えていき、最終的に15本にまで到達するのですが、8弦になったときに現代の我々が想像する全音階が出来上がります。

私は、テトラコルドの概念は8度(もしくはそれ以上)の音階が出来てから後付けで考え出されたものなのではないかと推測します。

つまり、最初にテトラコルドが存在して、それを2つ並べることでオクターブを作り出したのではなく、オクターブという物が出来た後、頭の良い人が2つの4度音程に分割できることを発見したのではないでしょうか。

 

なぜそう思うのか。

実は、弦を増やしたとされるのは、ほとんど伝説上の人物なのです。

つまり日本で言うと、イザナギが4弦楽器を発明して、天照大神が5弦にして、神武天皇が6弦にして…という感じ。

仮にモデルとなる人物が本当に存在していたとしても、そんな著名人たちがこぞって弦を1本ずつ増やしていったなんて考えられないし、4弦から15弦までスムーズに進化しすぎ。(もっと紆余曲折あったはず)

よって、これは後世の人間が考えたフィクションであると考えたほうが自然です。


もう一つ、数学的な理由もあります。

一辺が4cmの正方形を考えます。DCに中点Eを取ると、ECは当然2cmですね。

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点Aと点Eを結ぶと、四角形ABCEはハープのような形になりますね。

ABとECを弦とすると、ECはABの半分の長さなので、この2弦はオクターブ(8度)の関係になります。(この間に何本か弦を加えれば音階が出来ます)

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次に、ADに中点Fを取り、点FからBCに向かって垂線を下ろします。

途中で出来る2つの交点は点G、点Hとでもしましょう。

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すると、FGの長さは中学校で習った中点連結定理によりDEの半分、つまり1cmです。

よってGHは3cmですね。

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つまりAB=4cmに対してGH=3cmですから、この2つの弦は4度の関係にあります。

このように、幾何学的にはオクターブの丁度真ん中は4度の音になるのです。

 

両端がオクターブの弦楽器を作っているときに誰かがこの事実に気付き、「テトラコルド」という最小単位を提唱したのではないでしょうか。

古代ギリシアには四大元素論がありましたから、4弦・4音・4度を最小単位としたほうが都合が良かったのでしょう。

そんなわけで、私はこれがテトラコルドの起源ではないかと考えています。

 

 

ところで、先程紹介したヘルメスですが、音楽の神であると同時に、窃盗・嘘つきの神でもあるそうです。音楽家は嘘つきだということでしょうか。

 

ここに書いてあることも全部嘘かもしれませんねw