音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

ホールトーンスケールの使い方

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今日のテーマはホールトーン・スケールです。どんなものか早速見てみましょう。

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全ての音程が全音で出来ていて、半音が一つも含まれないのが特徴です。「whole tone」とは全音のことです。日本語では「全音音階」と呼ばれます。全音階と似ているので間違えないようにしましょう。

 

全全全全全全

普通、音階には半音関係の音が何箇所か含まれます。半音があると、それが目印の代わりになるので、今自分が音階上のどの位置にいるのかが非常に分かりやすい。

しかしこの音階には半音が含まれていません。「ケンケンパ」の「パ」が半音だとすると、全音音階は「ケンケンケンケン…」とずっと続いていくようなもので、移動しているうちに何マス進んだのか分からなくなり、前後左右が分からず、無重力でフワフワしているような印象を与えます。

 

和音を作る際も、この音階には完全5度関係の音が一つも含まれていないので、「#5」か「♭5」しか作ることができず、非常に不安定な音だけで構成することになります。

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移調

次に、この音階を移調してみましょう。まずは冒頭で紹介したCから始まる音階をもう一度見てみましょう。

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次に、半音上げてC#(D♭)から始めてみましょう。

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さらに半音上げてDから。

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はい、一旦ストップ!

このDから始まる全音音階をよく見ると、Cから始まるバージョンと構成音が全く一緒ですね! さらにもう半音上げると、C#のときと同じ音階になります。

つまり、全音音階は主音を無視すれば「Cから始まるバージョン」と「C#から始まるバージョン」の2種類しか存在しないのです。覚えやすいですね。

 

12パターン存在する長音階や短音階などと違って、全音音階は2パターンしか存在しないため、メシアンは「移調の限られた旋法」の第1番として全音音階を挙げました。

 

使用例

では実際の楽曲での使用例を見てみましょう。まずはこの国民的アニメの歌を外すわけにはいきません。


鉄腕アトム

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鉄腕アトムのオープニング曲です。

イントロでいきなり全音音階を使っていますが、これはアトムが空を飛んでいく様子を表しているそうです。

 


Stevie Wonder You Are The Sunshine Of My Life

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スティービー・ワンダーの「You Are The Sunshine Of My Life」でもイントロで使われています。(楽譜を見やすくするため調号を省略しています)

 


Debussy - Voiles

あとは、ドビュッシーの「前奏曲集 第1巻」より「Voiles」

2分2秒~2分27秒までの僅かな時間を除き、曲のほぼ全てが全音音階で作られています。全音音階について知りたければ、この一曲を研究すればそれで充分と言っても過言ではありません。

 

あとはジャズではセロニアス・モンクウェス・モンゴメリーがよく使ったと言われています。モンクは正直あまりピンと来ませんが、確かにウェスは隙あらば入れるイメージですね。(←実はどちらも少ししか聞いたことがないw)

 

コードを作る

ここからは細かい理論について色々見ていきましょう。ただし、全音音階は近代以降の音楽の分野なので、まだルールが整備されていません。結局のところは「自由」です。

 

まずは全音音階上で作れるコードですが、下譜例の1番と2番のように、メジャーコードの5度の音を半音上下させた形が基本です。

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3番のようにテンションを入れてもいいですし、4番のように分数の形にしても構いません。普通の音階と同じように色々作ることが出来ます。実際の使用例としては、7thか9th(もしくは両方)の音を加えた形が多いようです。

また、全音音階は音が6つしかないので、スケール上の全ての音を使ったコードを簡単に作ることが出来ます。3番の和音にファ#の音を足せば、もう全てコンプリートです。面白い性質なので覚えておいて下さい。

 

さらに、下譜例5のように普通のコードに混ぜて使うことも出来るし、譜例6のように2種類の全音音階を同時に使うことも出来ます。これらはちょっと上級者向けですね。

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コード進行

スケール内でのコード進行は自由です。特に制限は無いので好きなように進行して下さい。

なぜ自由なのかと言うと、冒頭でお伝えしたように全音音階は全ての音程が全音で構成されているため、今自分がどこにいるのかが分からず、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ…という分類が意味を成さなくなるからです。全音音階には属音が存在しないのは勿論、主音もあまり意味を持ちません。

 

もう一つ理由を紹介すると、#5のコードは転回すると別のコードになってしまうからです。

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このように、一つのコードで3通りの解釈ができます。7thなどを加えて音数を増やせば、より多様な解釈が可能です。

 

先程言ったように、全音音階は音階上の全ての音を使ったコードを簡単に作ることが出来ます。ということは、Cホールトーンを基に作れる全ての和音は、C9(#5 , #11)というコードのいずれかの音を省略した形だと考えることが出来ます。

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よって、どんな進行をしようとも「同じ和音をグルグル転回させているだけ」となるので、特にコード進行上の制限を考える必要がないのです。

 

ついでに言うと、C9(#5 , #11)というコードはC(#5)とF#(#5)という2つのコードが合わさった形でもあります。この場合はただの全音音階の和音ですが、もし5度が#にならなかった場合はCとF#が同時に鳴ることになり、複調の和音が出来上がります。

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(シ♭は、厳密に言うとラ#)

 

転入・離脱

次に、全音音階から普通(?)の音階へ、或いは普通の音階から全音音階へ移る方法を考えてみましょう。

今まで見てきたように、全音音階によって作られる和音は7thや9thのコードを#5・♭5させた形です。ということは、普通の音階上ではドミナントの機能を持つので、ドミナントモーションさせることによって普通の長音階や短音階に繋げることが出来ます。

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先程のスティービー・ワンダーの曲もそうでしたし、ジャズで使う場合もほとんどがコレですね。

全音音階は、リディアン7thやオルタードスケールといったドミナントの定番スケールと何となく似ています。よって、これらのスケールの変化球バージョンとして使うことが出来ます。

ただし、全音音階は非常に特徴的なサウンドなので、音楽をやっている人には一発で分かってしまいます。多用すると「アイツまたホールトーン使ってるよw」と影でヒソヒソ言われてしまうので注意しましょうw

 

もう一つ特殊な進行例として、「前の全音音階上の音をルートに持つコードに進行する」というものがあります。

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分かりづらいので具体的に説明すると、例えば上の譜例では最初の2拍でCホールトーンを使っていますよね。そこから普通のコードに繋げる場合、Cホールトーンに含まれるいずれかの音(C D E F# G# A#)をルートに持つコードに進行することが出来るのです(譜例ではE)。もちろんマイナーや7thが付いても構いません。

この進行を逆にすると、普通の音階から全音音階に繋げることも出来ます。つまり、C・D・E・F#・G#・A#をルートとするコードからCホールトーンに進行することが出来るのです。便利ですね。

 

以上の2パターンがよく使われますが、これ以外では駄目ということではありません。先程言ったように全音音階の理論はまだ確立されていませんから、令和元年現在ではどんな進行でも可能です。

と言うか、現代の我々が色々な進行を試すことによって、後世の人達がそれらを取捨選択して理論を形成するので、未来の音楽界のためにも色々試しまくりましょう。

 

クラスター

最後にこれを軽く紹介して終わりにしましょう。

クラスターとは簡単に言えばピアノの白鍵を肘や掌でバーンと押さえたときのような音で、一口にクラスターと言っても色々あるのですが、長2度堆積のクラスターは全音音階上に作られた和音だと解釈することが出来ます。

 

クラスターは一般的にはただの効果音として使われがちですが、この解釈により和声的な意味を持たせることも可能です。

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ホールトーン・スケールの解説は以上です。

そう言えば2011年にソフトバンクで19勝し、翌年から巨人でプレイした外国人投手って今何をしているんでしょうか。

 

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