今回解説する曲は、パーマン第2作目のオープニングテーマ「きてよパーマン」です。
作曲は、Sugarの「ウエディング・ベル」でお馴染みの古田喜昭先生です。
イントロ
まずは上行していくブラス音から始まります。
基本的にはE♭メジャースケール上の音に、半音下の刺繍音がくっ付いた形です。
これによって半音進行っぽい音型を作り出すと共に、上行していくことによってパーマンがフワフワと上空へ飛び上がっていく様子を表しています。
調性を曖昧にして、且つ上行形で空を飛ぶ様子を表現するのは、鉄腕アトムのOP曲と同じですね。
続いて「パーマン パーマン パーマン」とタイトルコール。
(3連符を八分音符で書いています)
「パー」が拍の裏からの付点四分音符、「マン」が拍の表で八分音符。規則的に作られているので歌いやすいのですが、楽譜で表すとけっこう複雑です。
譜例のように、拍上で打つべきリズムが前後にズレることを「シンコペーション」と言いますが、これが使われると歌のリズムと本来の拍がズレるため、それを補完しようとしていつも以上に拍が意識され、曲にスピード感・躍動感が生まれます。
これにより、助けを求める人々の焦りや事件の緊迫感、それからパーマンが今にも現場に向かわんとしている様子などが表現されています。
シンコペーションが無かったらどうなるか、ちょっと聞いてみましょう。
最初がシンコペ無し。次が八分音符でシンコペ。最後が原曲通り3連符でシンコペです。
テンポは全部一緒ですが、やはり原曲のバージョンが最も緊迫感がありますね。シンコペ無しだと、助けを求めると言うよりは「ねぇ、ちょっとパーマンさん」とただ呼んでいるだけに聞こえるw
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Aメロ
Aメロ(0分12秒頃から)は特に重要ポイントは無いのですが、まぁ強いて言うなら頭がドミナント(B♭7)から始まっているところ。
珍しい構成ですが、先程解説した「パーマン パーマン パーマン」の部分がAメロ頭のようにも聞こえるので、それほど違和感はありません。
それからもう一点は、「きてよパーマン」の部分でG7コードが使われていることくらいでしょうか。
このG7の効果については、後程説明します。
Bメロ
続いてBメロ(0分37秒頃から)ですが、前半部分のコード進行を見てみましょう。
注目すべきは1小節目のC7と、5小節目のB♭7です。これらのコードは次のコードに対するドミナントですね。
ドミナントコードは不安定で、1秒でも早く安定した和音に解決したがる性質があります。
特にC7は曲の音階(E♭メジャー)から外れた音を含んでいるので、その性質をより強く持っています。
ゆったりしたメロディなのに、曲にスピード感を感じるのはこのためです。
「行くよ 待ってて」という歌詞、つまりパーマンの「1秒でも早く現場に行きたい!」という気持ちと、和音の「早く次に進みたい!」という性質、それからドミナントコードによる緊迫感などがばっちりリンクしていますね。
この曲は作詞が藤子・F・不二雄先生ご本人であること、それから「パーマン」という言葉がいたるところで繰り返されていることから、詞先で書かれていると推測できます。
歌詞と曲を細かくリンクさせられるのは、詞先ならではのテクニックです。
ちなみに、このC7のような和音を「セカンダリー・ドミナント」と言います。
これについて詳しく知りたい方はこちら「ノンダイアトニックコードを使う 前編」をご覧下さい。
Aメロでチラッと登場したG7もセカンダリー・ドミナントに該当します。
BメロでいきなりC7が登場すると唐突になってしまうので、AメロのG7が良いジャブになってくれているわけです。
しかし、それにしてもコード進行をはじめとして、3連のリズム、それからウォーキングベースなど、この曲は完全にジャズですね。
0分56秒頃「あの空へ」の部分などが分かりやすいでしょうか。
作曲の古田先生は音大出身のクラシック畑らしいのですが、なぜか作品はジャズ調のものが多く存在します。
間奏
間奏(1分05秒頃から)ではストリングスのゆったりとした旋律が流れます。
今まで通り空を飛んでいる様子は感じられるのですが、急いでいる感じはありませんね。
おそらくこの場面は事件が解決した帰り道で、のんびり飛行しているのでしょう。
しかし、ヒーローに休む暇はありません。
1分17秒頃に再び「パーマン パーマン パーマン」と助けを呼ぶ声が聞こえ、パーマンは次の現場へと向かいます。
さて、今回は「きてよパーマン」を解説いたしました。
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ところで、私がパーマンに任命されたときのためにコレを購入しておこうかと思ったのですが、よく考えたら俺一人暮らしだから意味ねぇやwww