音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

M(プリンセス プリンセス)

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今回解説する曲は、プリンセスプリンセスの「M」です。様々なアーティストにカバーされているので、若い方でも一度くらいは聞いたことありますよね。

私はてっきりシングル曲かと思っていたのですが、実は元々はアルバムの曲だそうです。


プリンセス プリンセス 『M』

 

名曲ですね~。

奥居香氏がこの曲を作ったのは、おそらく20~21歳頃です。その若さでこんな曲を作ってしまうなんて驚愕ですが、実は若さ故に少々詰めが甘い部分もあります。

今回はその辺も含めて解説いたします。

 

イントロ

まずはイントロですが、ピアノの超有名フレーズから始まります。静かなオルゴールのような音が、これから始まる悲しい話を引き立てます。

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コードや音符の形だけを見ると難しそうですが、右手の高い音はドで固定。低い音はミから半音進行で上がったり下がったりするだけです。

実はちょっと練習すれば誰でも弾けるので、ハッタリをかますのに非常に便利ですよw 「うわ、あいつピアノ上手いな~」と思ってもらえますから、初心者の方は是非マスターしましょう。

ちなみに、この「半音進行」がこの曲のポイントになりますので頭に入れておいてください。

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右手は同じことをオクターブ違いで2回繰り返すだけですが、左手は微妙に違います。ベース音が、1回目はE音から下がっていましたが、2回目はG音から下がっていますね。

 

右手が同じなのに左手が異なるのは、なかなか芸が細かいですね。

しかし2回目はメロディとベース音が同じ音になってしまっているので、あまり面白くありません。かと言って他に適切なコードも思い付かないし、1回目も2回目も同じコードを使うというのもそれはそれで面白くありません。何とも悩ましいところです。

 

1回目と2回目のコード進行を逆にすると、ベース音が「G→F#→F→E→D#→D→C」という一本の綺麗なクリシェが出来上がるのですが、先程言ったように「G→F#→F→E」の流れは音楽的にあまり良いものではないので、それを1発目に持ってくるのも気が引けます。

結局、原曲の流れで妥協するしかないのかな、というところです。

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Aメロ

続いてAメロです。

「いつも一緒にいたかった」と「季節はまた変わるのに」の後に、ピアノのオブリガートが入ります。

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ボーカルのメロディを繰り返すような形になっていますね。

これによって「いつも一緒にいたかった…かった…かった…」と、ディレイのような役割を果たし、寂しさを上手く表現しています。

 

 

Bメロの直前には、C7のコードを挟むことで、次のFへと滑らかに繋いでいます。

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しかしよく見ると、ベース音がGですね。

理論的には決してダメなわけではないのですが、やはり分数にしてしまうと本来のC7よりもパワーが落ちるので、私だったらここは普通のC7にします。

 

もしくは、いっそのこと4拍目に「C7/F#」を入れてしまいます。

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こうすれば「G→F#→F」という綺麗な半音進行が出来上がります。

 

Bメロ

Bメロは基本的に「逆循環」と呼ばれるコード進行で作られています。逆循環について詳しく知りたい方はこちら「逆循環」をご覧下さい。

 

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「F→G→Em→Am」という2小節単位のパターンを3回繰り返すのですが、2回目と3回目はEmのところにE7/G#を挟んでいます。

 

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しかし、2回目「つもりでいたのに」の部分は、メロディ的にも特にE7/G#を入れなければいけない理由はないので、私だったら1回目と2回目はEmだけにして、3回目のみE7/G#を入れます。

こうすれば、1球目と2球目にストライクを投げて、バッターが「お、次もストライクだな」と思ったところにボール球が来るので、バッターを三振させることが出来ます。

2回目と3回目、両方E7/G#だと、2回目のときは多少「おっ!」と思われるかもしれませんが、結局3回目で「またこれかよ」と思われてしまいます。

 

Bメロの最後「あなたを忘れる勇気だけ」の部分は、ボーカルはずっと「ラシド」という形を繰り返すだけですが、ルートが「F→F#→G」と半音ずつ上がって行きます。

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このF#音が無かったらどうなるか、ちょっと実験してみましょう。

音源前半はFだけ。後半はF#を挟んでいます。

やはり後者のほうが圧倒的に曲が盛り上がりますね。こうやってサビに向けてどんどんパワーを溜めていくのです。

 

しかし、ここのベースパートは疑問です。

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F#dimのコードトーンを順番に弾いていますが、最後のミ♭音は、理論的にはGコードのレの音に落ちたがる性質があります。

しかし原曲ではソに向かって上行しているので非常に不自然な進行となっています。曲が盛り上がる重要な場面なのに勿体無いですね。

 

ここは素直にルート音だけを弾く(実際、2番はルートだけ弾いている)か、もしくはオクターブ上のファ#音まで上行してからソに進行するべきでした(ベースだと弾きづらいかもしれませんが)。

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サビ

サビのコード進行は、8小節を1つの単位とすると、前半4小節はAメロと似た進行。後半4小節はBメロと似た進行になっています。

これによって曲全体に統一性を持たせています。

 

ところで、この曲って間奏が変な位置にありますよね。

普通は「A→B→サビ」「間奏」「A→B→サビ」といった構成が一般的だと思うのですが、この曲は「A→B→サビ→A」「間奏」「B→サビ」という構成になっています。

つまり間奏よりも2番のAメロが先に来ているのです。

これについてちょっと考えてみましょう。

 

この曲は詞先で書かれているそうです。

つまり完成した歌詞を見ながら奥居香氏が曲をつけていったわけですが、サビの最後「はしゃいだあの時の私も」の部分で上手くメロディを終わらせることが出来なかったのではないでしょうか。

試しに無理矢理曲を終わらせてみましょう。

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う~む、盛り上がらない(-ω-;)

 

なので、原曲ではサビの最後をGコードにしたのでしょう。

しかし、Gコードだと曲がまだ続いているかのように聞こえてしまいますから、もう一度Aメロをくっ付けて、その後に間奏を持ってきたのではないでしょうか。

 

いや、完全に私の推測なんですけどね。

 

間奏

というわけで、満を持して間奏に入りますが、この間奏が酷いwww

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いきなりA♭やらB♭やら、何の前触れもなく無関係のコードが登場し、唐突にギターソロが激しく鳴り響きます。

さっきまで静かな悲しい曲だったのに、いきなりどうした? 思い出の品を全部燃やしたのか? それとも夜中にバイクで街中を疾走したのか?

 

おそらく、この間奏はメンバーの本意ではなく、スタッフの指示ではないでしょうか。

こちらのサイト「プリプリの名曲『M』、今だから明かせる誕生秘話」で曲の誕生秘話が語られていますが、この中でディレクターが、

「プリプリは女性版のロックバンドをやろうと始まった経緯があるから、こういう静かな曲を演奏していいのかと迷った」

「クイーンをヒントにしようとひらめいた。ああいう感じならバラードでありながらロックさを出せる」

との発言をしています。

 

つまり、バンドのコンセプトのために無理矢理ロック風の間奏をねじ込んだのです。

そのせいで曲は台無し。アルバムの中の一曲のためにそこまでする必要があったのか、甚だ疑問です。

 

アウトロ

歌の最後「あなたしか見えない私も」の部分は、原曲では3拍目(赤線部)からDm/Gのコードになっていますが、ここにドミナントが来ると、次の小節の頭にCを期待してしまうので違和感があります。

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ここは、赤線部はD7のままにして、次の小節の頭からDm/Gにしたほうが自然に聞こえます。ちょっと比べてみましょう。

前半が原曲バージョン、後半が私の考えたバージョンです。微妙な違いなので、分からない方もいるかもしれませんねσ(^_^;)

 

さらにその後は次のような進行になっています。

ここでもう一度フラット系のコードが登場することで、間奏の唐突さが多少和らいでいます。

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この進行は決して駄目ではないのですが、「C→B♭→A→A♭」と綺麗に下がったのに、最後の最後でA♭からCに上がることで、クリシェが途切れてしまっていますね。どうせなら最後も下がりたいものです。

しかし、かと言ってC/Gに下がってしまうと曲が終わりません。どうすればいいでしょうか。

 

 

私だったら、ベース音ではなく上声を下行させます。

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さらに、このままだとベースが上がったり下がったりガタガタになってしまうので、全てのコードのルートをCにします。

 

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こうすれば曲が綺麗に締まります。

 

 

さて、今回はプリンセスプリンセスの「M」について解説いたしました。

色々解説しましたが、結局私がこの曲を聞いて真っ先に思い浮かべるのは、替え歌「あそこ蹴られて 痛かった」ですw