音楽理論 ざっくり解説

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リディア旋法

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教会旋法シリーズ第3回目 リディア旋法です。

「リディアンスケール」「リディアンモード」「ファの旋法」などと呼ばれることもあります。

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このように「ドレミファソラシド」をファから始めた旋法を指します。

上譜例はF音から始まるリディア旋法なので、これを「Fリディア旋法」もしくは「Fリディアンスケール」などと言います。

 

特徴

リディア旋法をドから始めると下のようになります。長音階と比べると#が1つ増えた形ですね。

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つまり、長音階の第4音を半音上げれば何でもリディア旋法になります。

DリディアンはDメジャーに対してソが#になった形。E♭リディアンだったらE♭メジャーに対してラがナチュラルになった形、AリディアンだったらAメジャーに対してレが#になった形です。

 

第4音が半音上下することによって長音階とリディア旋法の差が決定づけられるので、この第4音のことを特性音(特徴音)と言います。

 

 

長音階に比べて第4音が半音高いので、リディア旋法では主音と第4音の間が増音程となってしまいます。

中世ヨーロッパではこれが「悪魔の音程」として嫌われていたため、リディア旋法の曲では第4音にしばしば♭が付けられました。

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なるほど、確かに前者は第4音に進んだときに不安定な感じがしますが、後者は安定感がありますね。

しかし第4音を♭にしてしまうと、これはもう普通の長音階と変わりません。

つまりリディア旋法とは、歴史的に最も早く長音階化した旋法であり、逆に言うと、中世ヨーロッパでは純粋な(第4音に♭が一切付かない)リディア旋法はなかなか見られないという変わり者です。

 

長音階に慣れた現代人にとっては、第4音が通常よりも半音高いことによって、フワッと浮き上がるような感覚がありますね。

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ハリウッド映画などでは、地平線や宇宙など、広さを表現するためにリディア旋法が使われたりします。

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コード進行

以下、特に指定がない限り全てFリディアンで説明いたします。

 

基本的なことは今まで勉強した旋法と一緒です。

長調・短調のような、細かいコード進行の規則は無い。Bm(♭5) は使わないほうが無難。

 

ただし、今までの旋法とは多少違いがあります。

今までの旋法では、Ⅰの和音がトニックであること以外は、各和音の機能は曖昧でした。

しかしリディア旋法では、Ⅴの和音が割としっかりドミナントの役割を果たします。

長調・短調のときのように逐一トニックに進行させる必要はありませんが、曲の段落部分ではちゃんと「C→F」という進行を使いましょう。

 

さらに、リディア旋法は長音階に比べて第4音が半音上がっているため、Ⅱの和音がメジャーとなります。つまり「Ⅱ→Ⅴ→Ⅰ」という進行が「G7→C→F」となって、非常に綺麗になります。

よって、今までの旋法では「G7→C」という進行はCメジャーを連想させるためNGでしたが、リディア旋法ではOKです。

 

しかし、ここで一つ注意事項!

モードジャズでリディア旋法を使う場合、上記の進行「C→F」「G7→C」「G7→C→F」などを使ってしまうと、普通の長音階の曲と大差ないのでモード感が薄れてしまいます。

よって、モードジャズではこれらの進行は避けられます。

 

 

話を戻しましょう。

リディア旋法では、「G→F」というコード進行もOKです。

先程言ったように、教会旋法はトニック・ドミナントといった機能が長調・短調に比べて曖昧ですし、それにこれはCメジャーの「Ⅴ→Ⅳ」ではなく、あくまでFリディアの「Ⅱ→Ⅰ」なので問題ありません。

(ⅡからⅠって進行していいんだっけ? という突っ込みは置いといて…)

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ただし、Gコードのシ音はちゃんとドに解決させてくださいね。

 

さらに、リディア旋法上に属七の和音を作ろうとするとC7ではなくCM7になってしまいます。

見た目はかなり変ですが、実際に使ってみるとそれほど違和感はありません。

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以上を踏まえて、実際にリディア旋法の曲を作ってみましょう。

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今までの旋法と同様に、メロディに対して適当にコードをくっつけていくだけです。長音階に似ているので、今までの旋法に比べたら作りやすいかも。

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メロディを修飾するとこんな感じ。

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使用例

では実際の使用例をいくつか見てみましょう。

まずは中世ヨーロッパの曲を紹介したいのですが、先述のように、純粋なリディア旋法で書かれた曲は見当たらない…(ー_ー;)

とりあえず、14世紀に活躍した作曲家ランディーニの「涙まなこにあふれ」など。


Ballata di F. Landini: GRAN PIANT' AGLI OCCHI; Giovanni Vianini, P.M.A. Milano, It.

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ところどころシが♭になっていますね。

 

 

続いてベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番より第3楽章


Beethoven, String Quartet No.15, Op.132 [3/4]

これには「リディア調による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」という題が付けられています。腸の病気から回復した喜びをリディア調で表現しています。

しかし、一般的にリディア旋法は教会旋法の中で最も明るいと言われていますが、この曲ではリディア旋法の部分よりも、合間に現れるDメジャーの部分のほうが明るく聞こえますよねw

おそらく、リディア旋法部分は、神のご加護と言うかご利益と言うか、ともかく神様側の視点で、Dメジャー部分は、その神様からのパワーを授かった人間(ベートーヴェン)側の視点ではないでしょうか。

 

 

続いてバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」


Béla Bartók plays his Romanian Folk Dances No. 1, 2 & 6

1分30秒頃から始まる第6番をお聞きください。

旋法がコロコロ変化するのでちょっと分かりづらいですが、Aメロの最初の部分がDリディアン、Bメロの最初の部分がCリディアンですね。

 

 

続いてショパンのマズルカ 作品24の2


Chopin Mazurka Op.24 No.2 By Arthur Rubinstein (34/154)

0分23秒頃から始まるBメロ部分がリディア旋法です。コード進行は「F→G/B→C→F」だけで出来ており、非常にシンプル。

先程のバルトークの曲も、このショパンの曲も、元ネタは民俗音楽です。民俗音楽では長音階・短音階以外の旋法を用いた曲がたまに見られます。

 

 

続いては映画「E.T.」のサウンドトラックより「Three million light years from home」


Three Million Light Years From Home (From "E.T. The Extra-Terrestrial" Soundtrack)

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音量が小さくて聞き取りにくいですが、0分30秒頃までがB♭リディアンです。

先程少し触れましたが、映画音楽では「広さ」を表現するためにリディア旋法が使われることがあります。ミのナチュラルが聞こえた瞬間、フワッと浮き上がるような感覚になりますね。

 

 

続いてクロノ・トリガーより「ガルディア城」


ガルディア城~勇気と誇り~

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1分22秒頃までBリディアンです。コードはBとC#くらいしか使われておらず、非常にシンプル。

 

 

最後にFF8より「Eyes On Me」


Eyes On Meアイズオンミー◆フェイウォンFF8日本語歌詞 Faye Wong ファイナルファンタジー8Lyrics和訳付き

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イントロ前半、及びアウトロ部分がCリディアンです。ただのGメジャーと解釈すべきか微妙なところではありますが…。

旧スクウェア社のゲームは教会旋法の曲がよく登場する印象があります。

 

 

今回はリディア旋法について解説いたしました。

リディアと言えば、FF8よりもFF4ですねw

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