音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

古代ギリシア音楽 前編

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今日は古代ギリシアの音楽理論について見てみましょう。

紀元前の話だからと言って侮るなかれ。この時代の理論が中世に伝わってグレゴリオ聖歌と融合し、それがクラシック音楽の元になり、クラシックは全てのポピュラー音楽の元になりました。

つまり、我々が普段演奏したり聞いたりする音楽は、元を辿れば古代ギリシアに行き着き、しかも基礎的な理論は既にこの時代に完成されているのです。

確かに、西洋音楽史の本でもだいたい最初に古代ギリシアについて書かれていますよね。古代ギリシア人が凄いのか、現代人が怠慢なのか…。

 

しかし、この時代の音楽については謎が多く…、私も知らないことが多々あるのですが、それが私の勉強不足によるものなのか、それとも歴史的に解明されていないせいなのかは分かりません。

 

当時の理論書は色々と残っているものの、楽譜は数十曲程度の断片しか残されておらず、当然音源やライブ映像などは有るわけないので細かい部分は全く分かりません。

 

「数十曲も残っているなら充分じゃないか」と思いますか?

いえいえ、古代ギリシア時代ってけっこう長いんですよ。ポリスが成立したのがBC8世紀頃、ローマ帝国に飲み込まれるのがBC146年頃なので、少なくとも約550年の歴史があります。その中でたったの数十曲です。

日本で言えば室町時代の能の音楽から、江戸時代の筝・三味線・尺八、明治になって滝廉太郎・山田耕筰、昭和の演歌・歌謡曲、武満徹などの現代音楽、平成・令和のJ-POPなど、全部ゴチャゴチャに数十曲です。しかもBメロだけとか、間奏だけとか。

そんな状態で「これが日本の音楽だ!」なんて分かるわけがありません。

 

そんな中、フルで残っている曲が存在します。

それは「セイキロスの墓碑銘」と呼ばれるもので、これは曲のタイトルなのか、それとも墓に刻まれているからそう呼ばれているだけなのかは分かりませんが、ともかく貴重な資料です。

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第九の歌の部分が始まったのかと思ったw

 

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ピタゴラスイッチ

前置きが長くなってしまいました。

古代ギリシアの音学理論と言えばピタゴラス音律「ピタゴラス音律」が有名ですね。

ただしピタゴラスは音の研究をメインとしていた訳ではありません。

 

ご存知のように、ピタゴラスは宇宙は数で出来ていると考えました。

その宇宙を支配する数の調和を、人間にも聞こえる形にしたものが「良い音楽」であるとしたのです。

つまり、ピタゴラスが重要視していたのは宇宙の秩序と調和の研究であり、作曲や演奏に力を入れていたわけではありません。

 

そもそも、ピタゴラス音律も実際の現場にどの程度浸透していたのかは謎です。

アリストクセノスは「ピタゴラスはうるせーな。音楽に数学なんていらねーよ。耳で聞いて心地よけりゃいいんだよ!」的なことを言いました。

理論派vs感覚派の戦いはこの頃から存在していたようですw

(一応付け加えますが、アリストクセノスも音楽についてかなり理屈っぽく語っているので、もしかしたら数字に弱かった、もしくは「ちょっとズレてる方が心地いい場合もある」程度のニュアンスで言ったのかもしれません)

 

当然ながらピタゴラス以前にも音楽は存在していたわけですから、もしかしたらピタゴラスは、それまでの音楽が何となく経験則的に調律・演奏されていたものを、数学を使って体系化しただけなのかもしれませんね。

 

テトラコルド

では実際の現場はどんな感じだったのかと言うと、まず最初にテトラコルド(テトラコード)という4音のグループが考え出されました。

なぜ4音なのかと言うと、古代ギリシアで使われていたキタラ(キタラー)やリラ(リュラ、ライアー)といった弦楽器が4弦だったためと言われています。

つまり、弦楽器の調律法として考え出されたのです。

 

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(反対向きの♭は、4分の1音下げることを表しています)

テトラコルドは大きく分けて3種類存在します。

下行形で書かれているのでちょっと見づらいですが、古代ギリシアでは音階は下行するものと考えられていたらしいです。

テトラコルドについて詳しく知りたい方はこちら「テトラコルド」をご覧下さい。

 

注意しなければいけないのは、当時はまだ絶対音高の考え方は無かったということです。

つまり、基準音が変わればキーはいくらでも変わります。当時の理論家も「高くて歌えなかったらチューニングを下げりゃいいじゃん」と言っています。

 

オクターブ

最初は4弦だったキタラですが、時代とともに弦の数が5→6→7…と、どんどん増えていき、最終的に15弦まで増えます。お前はEXILEかw

弦が増えると当然一つのテトラコルドだけでは間に合わなくなるので、複数のテトラコルドを連結することで音階を拡張させていきました。

例えば8弦の場合、次のように2つのテトラコルドを並べればオクターブが作れるのです。

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上の譜例ではディアトノンのテトラコルドを2つ連結させていますが、クロマティコンを2つ、或いはエンハルモニオンを2つ連結させてオクターブを作ることも可能です。

ただし「ディアトノン+クロマティコン」のように、異なる種類のテトラコルドを連結するのはNGらしいです。

 

音程

ちなみにこの時代、既に音程という概念が存在しておりまして、4度のことをディアテッサロン、5度のことをディアペンテ、8度のことをディアパソーンなどと呼んでおりました。

古典ギリシア語では4のことをテッタレス、5のことをペンテと言うらしいです。パソーンは分からん。(これも色々ややこしくて、8という意味ではないらしい)

 

数字のゼロが発見されたのは、5世紀頃のインドらしい。

しかし冒頭で申し上げたように、古代ギリシア時代とは紀元前です。当然その頃にはゼロの概念はありません。

そのため、同じ音を0度ではなく1度として数え始めてしまったのです。

それが何千年も受け継がれて、現代でも同じ音を1度としているってわけさ。

 

 

さて、まだまだ説明することはあるのですが、ちょっと長くなってしまったので続きは後編で。

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