今回解説する曲は、おジャ魔女どれみの初代オープニング曲「おジャ魔女カーニバル!!」です。
作曲者は80年代後半から90年代前半にかけて鬼のように名曲を生み出した池毅(いけたけし)先生です。
早速聞いてみましょう。
(歌詞)おジャ魔女どれみOP「おジャ魔女カーニバル!!」高音質
普通の子供向けアニソンに聞こえますね。でも実は色々と技が隠されているのです。
イントロ
非常にワチャワチャした派手なイントロから始まります。
主人公のどれみちゃんは元気な小学生の女の子で、ストーリー的にも小学生同士の友情やドタバタシーンが多く描かれていますから、これくらいで丁度良いのです。
イントロのコードは、基本的には「Ⅰ→Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ」というシンプルな進行ですが、8小節目(Aメロ直前)のⅤは普通のB♭ではなくB♭augになっています。
コードというものは、5度の音がルートをしっかりと支えることで安定感が生まれます。
しかしaugコードはその5度音が半音上がっているため、支える力が弱まり、非常にフワフワした印象を与えます。
ホールトーンスケール「ホールトーンスケールの使い方」を思い出すと分かりやすいですね。
さらにダメ押しとして、メロディが半音進行になっています。半音階も調性を感じさせないので現実感が薄れます。
このaugコードと半音進行により、曲に現実感がなくなり、逆にファンタジー感が生まれます。
ただの元気なアニソンに聞こえますが、実はすんなりと魔法少女モノの世界に入り込めるように計算されているのです。
ちなみに一曲を通して「ズン、ズン、ズン、ズン」という四つ打ちのリズムが聞こえますが、これはアニメの内容とは全く関係なく、放送開始日が1999年2月7日。つまり、当時はユーロビート(パラパラ)ブームの真っ只中だったからです。
アニソンとは多かれ少なかれその時代の流行を取り入れるものです。1999年頃から2002年頃までのアニソンは、四つ打ちの曲が非常に多い。
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Bメロ
Aメロは特に解説することは無いので、すっ飛ばしてBメロ(0分28秒頃)に行きましょうw
Bメロ頭の4小節は「E♭→E♭aug→E♭6→E♭7」というコード進行になっており、ここでもaugコードが使われると共に、コードトーンに「シ♭→シ→ド→レ♭」という半音進行が含まれています。
オケではこの流れをストリングスとコーラスのユニゾンで奏でており、ちょっと強調しすぎな感じもしますが、ともかくここでもファンタジー感が表現されています。
Cメロ
Cメロ(0分40秒頃)はCmコードから始まっていますが、これは転調というよりは単純にⅥから始まるE♭メジャーですね。
また、この部分はAメロの「不思議なチカラがわいたらどーしよ」の部分と同じメロディになっており、曲に統一感を持たせています。
しかしサビ直前にG7コードが登場すると一気に曲の雰囲気が変わり、続くサビで本格的にCmキーに転調します。
つまりこのCメロは、元気なAメロ・Bメロと暗いサビとの、巧みな中継地点になっているということです。
ちなみにここまで、歌のメロディはほぼ五音音階(階名で言うとドレミソラ)で出来ています。
ワチャワチャしている割に歌いやすく覚えやすいのはこのためです。
サビ
いよいよサビです。
テンポが速くてオケがリズミカルで声が可愛くて歌詞が面白いので気付きにくいのですが、実はこのサビが超暗いwww
原曲では、3分04秒頃からの落ちサビをお聞き頂くと暗さが分かりやすいかと思います。
まぁマイナーキーであること自体はどうでもいいのですが、ポイントとしては2小節目のミのナチュラルですね。
これはFmにとってのメロディックマイナー、もしくはハーモニックマイナーの音なので、本来ならクラシック風に聞こえるはずなのですが、ここではどこかの民族風の音楽が連想されます。
ハリー・ポッター的なカッコ良い魔法使いではなく、インドか中東あたりの怪しい魔法使いですねw
間奏
そして間奏(1分33秒頃)では、またまた雰囲気が一気に変わります。
どれみちゃん達が魔法の呪文を唱えているのか。それとも魔女に変身しているのか。
しかしコード進行的には「G♭M7/A♭→D♭M7」の繰り返しだし、メロディ的にもそこまで魔法っぽさを感じさせる要素はありません。
おそらく、前後のワチャワチャした曲調に対して急に華麗なテンションコードを使い、且つ転調もしているので、その雰囲気のギャップがファンタジーを演出しているのでしょう。
3拍子
また、ラスト(3分28秒頃)の「年中無休 ずっとずっとね 年中無休」の部分は、オフィシャルスコアを見ると3拍子で書かれています。
まぁこの書き方のほうがスッキリしていて見やすいのですが、リズムの強弱を考えると、ここは「4+2+4」のほうが正確です。演奏するときはこのリズムを意識しましょう。
さて、今回は「おジャ魔女カーニバル!!」について解説いたしました。ちょいちょい続編が作られているようですが、やはりTVシリーズが一番ですね。
私は瀬川おんぷちゃんのファンだったのですが、彼女の声優さんもアイドルであると知ったときは衝撃でした。