音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

2度堆積和音とクラスター

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今日のテーマは、2度堆積の和音とクラスターです。

我々が通常よく見る和音は3度堆積。それ以外にも4度堆積・5度堆積など色々ありますが、2度はかなり珍しい部類です。

レア和音なのでなかなか説明することも少ないのですが、頑張って解説していこうと思います。

 

2度堆積和音

まず重ね方ですが、長2度・短2度・増2度など、何でも可能。音数も特に制限はありません。

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一番右の和音はちょっと見づらいですが「ド・ド#・レ」です。

 

2度音程を転回すると7度になります。

よって、4度堆積和音と5度堆積和音が仲間であるのと同様に、2度・7度、さらには9度堆積の和音も、それぞれ似たような性質を持っています。

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メロディに2度上、もしくは2度下の音をくっつけて、線的な動きをさせることも出来ます。

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これを発展させて、2声以上の曲のそれぞれのパートを2度堆積和音にすれば対位法っぽく扱えます。

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3度堆積・4度堆積など、他の構造の和音と連結させることも可能です。

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ちなみに、音数が多いコード(テンションコード)は、その構成音の一部を簡単に2度堆積の形にすることが出来ます。

第5音が半音上下しているとさらに作りやすいですね。

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このようにして作られた2度堆積和音は、和声的な連結が容易となります。

これについては、こちら「ホールトーンスケールの使い方」のページでも少しですが触れています。

 

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譜例2は、譜例1のコード進行をアルペジオの形にしたものです。

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使用例

モーツァルトの通称「きらきら星変奏曲」


Mozart Variations on Ah, vous dirai je maman, K. 265 - 300e Tibor Szasz

冒頭で「2度和音はレア」と申し上げましたが、コード構成音の一部を2度でぶつけるやり方(例えば、G7のファとソを2度でぶつけて弾く)、あるいは掛留音の形ならば昔からよく使われています。 

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分かりやすいのは1分54秒頃。それ以降もちょいちょい登場。

 

ハチャトゥリアンの「剣の舞」


Sabre Dance - Liberace - transcription (for single piano score)

伴奏パートの一部が2度堆積になっていますね。

例として適切なのかどうかは微妙ですが、とりあえず分かりやすいので挙げてみました。

私はずっと、この音は剣と剣がぶつかり合う音だと思っていたのですが、実はこれは戦いではなくただのダンスの場面で流れる曲らしいです。ではこの音は一体何を表しているのか…。

 

 

それからラヴェルの「水の戯れ」


Ravel:Jeux d'eau

0分49秒頃と、4分27秒頃。

しかし美しい曲ですね。「天才」とはこういう作曲家のことを指すんだな、と思わせてくれる一曲。

 

 

続いてシマノフスキの「12の練習曲」より第2番


K. Szymanowski: Etudes op. 33 (Rudy) - 1/2

1分15秒頃から。

最初が2度、4~8小節目が7度、9小節目からまた2度と、今回のテーマのお手本のような作品。

 

トーン・クラスター

次は2度堆積和音の仲間であるトーン・クラスターに行きましょう。

「cluster」とは、最近すっかり悪いイメージが定着してしまった言葉ですが「房・集団」という意味で、音楽的には次のような和音を指します。

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2度堆積和音をズラズラと並べた形ですね。

(一応申し上げておきますが、何音までが単なる「2度堆積和音」で、何音以上だとクラスターなのかという明確な基準はありません)

 

聞いて頂ければ…いや、聞かなくても分かりますが、かなり濁った響きがします。よって、効果音としてはかなり昔から使われていたようです。

私も効果音としてなら何度かライブで使ったことがあります。

 

さて、ここまで音が密集してしまうともはや内声の状況は把握しきれないので、クラスターで大事なのは外声となります。

また、半音階で重ねてしまうとクドイので、基本的には全音階的な配置が用いられます。(勿論そうでない場合もある)

 

一気に鳴らすだけではなく、徐々に音を増やしていって最終的にクラスターの形になるパターンもあります。

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また、低音パートと高音パートで異なる音階のクラスターを同時に用いても構いません。

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このように、複数のクラスターが同時に鳴ることを「ポリクラスター」と言うらしいです。

 

当然ながら、2度和音およびクラスターは近代以降によく使われるようになった手法なので、まだ理論が確立していません。好きなように使いましょう。

 

小さなクラスターをいくつか重ねることで、通常の3度和音が重なったような状態を作ることも出来ます。

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例えば上譜例のように、ソから始まるクラスター、シから始まるクラスター、レから始まるクラスターを重ねると、Gコード・Aコード・Bコードが重なったような状態になります。

もちろんメジャーコードだけでなく、マイナーコードや7thコード、或いは4度・5度堆積和音でも構いません。

 

記譜法

クラスターを楽譜に書く場合、ご丁寧に音符を一つ一つ書いてもいいのですが、最高音と最低音だけ書いて、中間部分は塗り潰す書き方もあります。(譜例1と2)

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ピアノで演奏する場合は、この範囲の鍵盤を掌や肘でバーン! と叩きます。

 

譜例3のように、上側に#が付いていたら「その範囲内の音符に全て#を付けろ」という意味になるようです。

ただし、先程も言いましたが、クラスターは内声がどうなっていても全体の響きはあまり変わりません。外声が正しく弾けていれば問題ありません。

 

またオーケストラでは、譜例4のように図形を使って表すこともあります。

 

使用例

まずはシャルル・ヴァランタン・アルカンの「打ち上げ花火 序奏と即興」


Charles-Valentin Alkan - Introduction and impromptu Op. 55 "Une fusee" (audio + sheet music)

6分15秒頃から。

花火が次々と打ち上がる様子でしょうか。どうやって譜面通り弾くのか謎。

 

 

続いて、先日惜しくも亡くなられたペンデレツキの「広島の犠牲者に捧げる哀歌」


Penderecki - Threnody (Animated Score)

曲のほとんどがクラスター。こういう音を思い付くだけでも凄いのですが、実際に作ってしまう度胸はもっと凄い。

タイトルは後付けらしいのですが、いずれにしても素晴らしい曲です。

 

 

今回は2度堆積和音とクラスターについて解説いたしました。

音は密集させても構いませんが、人間は密集しないように注意しましょう。