音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

テンション

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テンションとは、コードに付く9以上の数字のことです。

「緊張」という意味なのですが、これを含んだコードはサウンドが複雑になって緊張感が増すのでそう呼ばれます。

 

7度

では始めましょう。

冒頭でお伝えしたように、テンションとは本来は9th以上の数字を指すのですが、最初にこれを説明しないと話が繋がらなくなるのでご了承ください。

 

7thとは、ルートに対して7度上の音のことで、C7ならシ♭、G7ならファの音を指します。

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この音は17世紀頃から徐々に使われるようになりました。

起源としては、元々ルート(のオクターブ上)だった音が2度下に変化したものです。

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つまり、元々はソからミに進行する際にファを挟んで滑らかに経過解決していたのですが、最初のソを省略していきなりファから始めるようになったものが7thの正体です。

 

よって、当たり前ですが2度下のミの音に解決しなければいけません。

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G7のシとファによる減5度(増4度)音程は不協和なので、ヨーロッパでは「悪魔の音程」と言われていました。

しかし3rdであるシがドに。それから7thであるファがミに進行することによって、協和音程である長3度(短6度)に解決します。

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これによって「あー良かった」という安心感が生まれます。

 

推奨される進行はCとAm、及びそれらを短調に置き換えたCmとA♭です。

(クラシック理論ではEmには進行できませんが、普通のGならば可能です)

 

7thコードのバリエーションは色々あるのですが、現実的なところは次の8つでしょうか。

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左から順に、Gdim , Gm7(♭5) , Gm7 , G7(♭5) , G7 , GmM7 , GM7 , Gaug7 です。

 

しかしどんなコードであろうとも、7thは全て下行の性質を持ちます。

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例えばGm7だったら、基本的にはC7か何かに進行するわけですが、その際に7thのファ音がC7の3rdであるミ音に下行するということです。

 

GM7の7thは上行しそうなイメージがありますが、これもルール的には下行です。

上行すると連続5度が出来てしまうので冷静に考えれば当然なのですが、感覚的にはなんか不思議ですね。

 

dimコードとm7(♭5) コードはちょっと特殊なので、次の章で解説します。

 

あとは「Ⅴ7の根音省略第二転回からⅠの第一転回へ進行する際、内声にある7thは2度上行させてもいい」というマニアックなルールも存在しますが、こんなのは受験生以外は知らなくても構いません。 

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9度

次は9thのテンションです。

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9度とは、ルートに対してオクターブと2度上の音のことで、C9ならレ、G9ならラの音を指します。

本当はC7(9) のように、括弧を付けて表記したほうが正確なのですが、却って読みづらくなってしまうため、以降は括弧なしで表記します。

 

G7はCとAmに進行できましたが、G9はCにしか進行できません。 

 

この音は、元々ルート(のオクターブ上)だった音が2度上に変化したものです。

つまり当初は別の和音の音だったのに、そのうち音の交替が遅れて掛留音となり倚音となり、いつの間にか復元解決することなくコードトーンとして居座ってしまったものです。

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9thのテンションを半音下げたものを「♭9th」、半音上げたものを「#9th」と言います。そのまんまですね。

短調のラは♭になっているので、短調上の属九和音は「♭9th」になります。

 

9の和音は、当然ながら5音で構成されています。

全て弾くのが大変な場合、どれかを省略することとなりますが、ルートか9thを省略してしまうと9の和音ではなくなってしまう。3rdを省略するとメジャーかマイナーか分からなくなる。7thを省略するとドミナントっぽくない。

よって、最も推奨されるのは5thの音です。

 

クラシックでは配置方法が色々と面倒で、9thの音は「根音よりも9度以上上、かつ3rdよりも上に置かなければいけない」とされています。

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ただし、9thが前の和音から保留されている場合、それから普通の9thではなく♭9thの場合は、3rdより上でなくても構いません。

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まぁいずれにしても「9thは困ったら一番上に置いときゃ問題なし」ってことです。

 

解決方法としては、2度下のソの音に進みます。3rdと7thは、先程と同じです。

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♭9thの解決も下行ですが、#9thの解決方法は私もよく分かりません。

まぁ#9thという名前ではありますが、普通はラ#ではなくシ♭で記譜するので、この場合は他の9th同様ソで問題ありません。

ジャズ・ポピュラーでは、後続和音がCトライアドならば5th(ソ)に進行するケースが一番多く、後続が何らかのテンションコードならば、近所のテンションに進行するようです。

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さて、先程「5度の音が最もよく省略される」と申し上げましたが、次は大胆にもルートを省略してみましょう。

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すると、G9はBm7(♭5) に、G(♭9) はBdimに変わります。

つまりドミナントとして使用する場合、Bm7(♭5) とBdimのコード進行や解決方法はG9と同じ。ルート(シ)は2度上行し、5th(ファ)と7th(ラorラ♭)は2度下行するということです。

 

9thの和音は物凄い数のバリエーションが存在します(軽く数えただけで24種類くらい)が、実際に使われるのはG7(♭9) , Gm9 , G9 , GM9 , G9(#5) , G7(#9) あたりでしょうか。

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ポピュラーでは、7thをくっ付けずに9thだけを付加する「add9」というコードも定番ですね。

 

11度

続いて11thのテンションです。

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11度とは、ルートに対してオクターブと4度上の音のことで、C11ならファ、G11ならドの音を指します。

 

元々この音はsus4として使われていました。

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つまり、ドが一旦シに落ちて、その後改めてドに解決する流れ(譜例1)だったのですが、その「一旦落ちる」という工程が無くなった(譜例2)のが11thのテンションです。

 

完全和音の状態で使われることも無いわけではないのですが、音数が多すぎてゴチャゴチャしてしまうので、何らかの音を省略したほうがスッキリします。

根音と11thは省略できないので、3rd 5th 7th 9th の中から1~2音抜く形となりますが、3rdの音が11thとぶつかっているので、3rdが最もよく省略されます。

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3rdを省略するとF/G とかDm7/G のような形になるので、ポピュラーでもお馴染みですね。

 

解決方法としては、11thの音はそのまま保留。9th以下は、今までと同じです。

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音数の多いコードは、転回すると別のコードになってしまうため、転回形は安易に使わないほうがいい。

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GM11の和音の使い方は、G11とだいたい同じです。(下譜例3)

Gm11は、3rdと11thがぶつからないので、必ずしも3rdを省略する必要はなくなります。(譜例4)

#11thの場合は、5th省略が推奨されます。(譜例5)

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それ以外にも、11の和音は数え切れない程のバリエーションが存在します。

当然ながら全てを説明することは出来ないし、使用例も少ない。しかも、11th以上のテンションは(特に属和音でないときは)ルール通りでない解決もよく見られます。

何が正しいのかは、最終的には耳で判断するしかないし、そのときの状況にもよります。

 

13度

続いて13thのテンションです。

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13度とは、ルートに対してオクターブと6度上の音のことで、C13ならラ、G13ならミの音を指します。

 

一応近代の和音なのですが、逸音としては古今東西の作品に登場してしまう不思議な存在です。

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この和音も2~3音省略したほうが綺麗に響きますが、今までの和音と比べると省略方法がちょっと複雑です。

 

まず、3rdの音を残す場合、先程説明したように11thの音は使えません。

よってこの場合は11thを省略し、さらに5th 7th 9th の中から1~2音抜きます。(ただし、7thは残したほうがいいとされています)

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逆に、11thを残す場合は3rdは使えません。

さらに5th 7th 9th の中から1~2音抜きますが、5thが推奨されます。

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先程の3rdを残すパターンはただの逸音の和音っぽく見えてしまうのに対し、こちらはちゃんとテンションコードっぽいので、こちらのパターンのほうがよく使われます。

 

解決方法は、3度下行が無難。

11th以下は今まで解説した通りです。

曲の段落部分以外では一応これ以外の音に進行することも可能なようですが、多用しないほうがいい。

 


13の和音は、全音階上の全ての音を含みます。

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よって、C13=Dm13=Em13=F13=G13=Am13=Bm(♭5)13 となってしまうし、4度堆積・5度堆積、それからポリコードなど、他の様々なコードに置き換えられます。

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つまり、一つのコードがそれだけ多数の性質を持っているということですから、11thのとき以上にゴチャゴチャしています。

この和音の使い方も、最終的には耳で聞いて変じゃなければOKです。

 

15度以上

最後に15度以上のテンションについて考えてみましょう。

 

13度のテンションのさらに上に音を乗せると、根音と同じ音になってしまいます。

しかしこれを半音上げてド#にすれば、C15のコードが出来上がります。(厳密には#15thのテンションですね)

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この#15thのテンションは、オクターブと異名同音を考慮すれば♭9thと一緒です。

ポピュラー音楽では、9thと♭9thのような普通のテンションとオルタードテンションは同時に使用できないとされているので、13度までのテンションしか登場しませんが、そのルールを気にしなければ一応それ以上の数字も定義できるのです。

 

12音全部使い切るまで音を積み重ねてみましょう。

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ルートと一番上の音との音程は3オクターブと2度、つまり23度です。理論的にはテンションは23rdまで存在するのです。(平均律にこだわらなければもっといける)

ちなみに上のコードの正式名称は、C7(9 , #11 , 13 , #15 , #17 , #19 , 21 , #23) です。長えwww

 

しかし、11thや13thの和音でもかなりゴチャゴチャで、理論はほとんど整備されていませんでした。

15th以上の和音は、舗装されていないどころか、草ボーボーの状態です。

近代和声の解説書でも「こんな和音もあるよ」と紹介されているだけで、具体的な使い方は書かれていませんので、好きなように使いましょう。

 

さて、今回はテンションについて解説いたしました。

作曲するときも演奏するときも、テンションはMAXでいきましょう。