音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

4度・5度堆積の和音

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普段ポップスなどで我々が耳にする和音は、音が3度ずつ積み重なったものです。

sus4のような一時変化和音を除けば100%そうであると言っても過言ではないでしょう。

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ではそれ以外の和音は存在しないのかと言われれば、勿論そんなことはありません。

4度だろうが5度だろうが、作ろうと思えば作ることができます。

今日はそんな特殊な和音について一緒に考えてみましょう。

 

なお、ジャズピアノで和音の構成音を4度・5度ずつ重ねていくボイシング方法がありますが、今回解説する和音はそれのことではありません。

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4度・5度ずつ重ねる

どんな和音なのか、まずは実際に見てみましょう。

4度堆積、及び5度堆積の和音とは次のようなものです。

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3度の和音の重ね方に長3度・短3度・増3度・減3度などがあるように、4度堆積和音の重ね方にも完全4度と増4度があります。

減4度は長3度と一致してしまうため、あまり使われません。

一方、5度堆積の場合は完全5度のみで構成されることがほとんどです。

 

3度の和音同様、音はいくつ重ねても構いませんが、だいたいの目安として、例えば完全4度堆積の和音ならば、5和音までが協和音、6和音以上になると不協和音であるとされています。

 

4度音程を転回すると5度になるため、4度堆積和音と5度堆積和音は似た性質を持っています。

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音数が少ない場合、こういった和音は3度の和音が成立する前の中世ヨーロッパの和音を彷彿させます。

よって、斬新な響きでありながら古風な面も持つという不思議な存在です。

 

ちなみに、完全5度堆積の5和音は5音音階(メジャーペンタトニックスケール)の構成音と一致します。

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下にファ、上にシを加えればメジャースケールにもなります。

 

また「増4度→完全4度」を交互に堆積させた和音は、メシアンの移調の限られた旋法第5番の構成音と一致します。

移調の限られた旋法について詳しく知りたい方はこちら「(作成中)」ご覧ください。

 

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転回

構成音を転回させて用いる場合は少し注意が必要です。

適当に転回すると、3度の和音っぽく聞こえてしまうことがあります。

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4度堆積和音を使うのは、3度和音とは異なる響きを得るためです。

よって、上のようになってしまうのは全く意味がありません。

 

連結の際にも注意が必要で、例えば「ド・ファ・シ♭」の和音はFsus4と構成音が一緒です。

なので、次の譜例1のように進行してしまうと「お前4度堆積和音じゃなくて、ただのFsus4じゃねーか!」と突っ込まれてしまいます。

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4度堆積和音はあくまで4度堆積和音なのです。

譜例2のように、3度和音の理論とは全く関係のない進行をすれば、晴れて新種の和音として認めてもらえます。


4度堆積和音に3度の音を付加することも可能です。

その場合、和音の一番下、もしくは一番上の音に対して3度の音を重ねます。

例えば「ミ ラ レ」という和音ならば、一番下のミに対する3度音(ド)、もしくは一番上のレに対する3度音(ファ)となります。

長3度ならば協和音(上譜例1番)、短3度ならば不協和音(2番)となります。

転回(3番)したり、ダブルで付加する(4番)ことも可能です。

 

ただし、3度音が加わると当然4度の独特な響きは半減しますから注意しましょう。

 

連結

今見たように、4度堆積和音は4度堆積和音同士、5度堆積和音は5度堆積和音同士で連結するのが最もポピュラーな方法です。

進行先についても特に制限はありません。

 

しかし3度堆積和音と連結させることもできます。

その場合、やはり4度・5度堆積和音は普段は聞きなれない緊張感のある和音なので、機能的にはドミナントの役割を持つことになります。

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進行例が色々あって全てを紹介することはできないのですが、基本的には順次進行か保留をするのが好ましいようです。

特に保留を用いると連結しやすくなると言われています。

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勿論上記以外のパターンも沢山あります。

4度・5度堆積和音は近代に現れたものなので、まだ理論が確立されていません。

現時点では「カッコ良ければ何でもOK」なので、自分で色々と実験しながら使ってみるのがいいでしょう。

(ただし、先程も言ったように3度和音っぽく聞こえてしまうのは駄目ですがw)

 

使用例

では最後に、実際の使用例をいくつか見てみましょう。

有名なものとしては、ベートーベンの交響曲第6番「田園」第5楽章の冒頭に5度堆積の和音が登場します。


www.youtube.com

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ちょっと分かりづらいかもしれませんが、0分8秒あたり、主旋律がクラリネットからホルンに移った瞬間に、弦の響きがなんか不思議な感じになりますね。明らかに3度の和音とは違います。

この人は一体どれだけ革新的なことをすれば気が済むのでしょうね。

 

コープランドのピアノ幻想曲


www.youtube.com

転回・3度音の付加・保留・3度和音との連結などが登場し、まさに今回のテーマのお手本のような作品なのですが、如何せん難解すぎますね……

もう少し分かりやすい例を挙げてみましょう。

 

ムーン・プリズム・パワー・メイクアップ!


www.youtube.com

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はい、実はセーラームーンの変身曲の冒頭が見事な4度堆積和音になっておりましたw

(まぁこれは単音が4度進行しているだけだと解釈すべきなのか微妙なところではありますが…)

余程好評だったのか、第2期以降の変身曲でも似たような音型がちょいちょい登場します。

 

ドラクエ8の「ドルマゲス」

www.youtube.com

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あと確か80年代歌謡曲に、間奏で4度堆積和音が使われた曲があったはずなのですが、何の曲だったか全く思い出せません。

頑張って探しているのですが見つからないので、もしかしたら私の勘違いだったのかもしれませんが、もし発見したらこちらで紹介します。

 

 

というわけで、今回の解説は以上です。

音楽をしっかり勉強しないと、月に代わってお仕置きよ!