音楽理論 ざっくり解説

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バンドでキーボードを弾く! 後編

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バンドでキーボードを弾く! 後編です。

前編「バンドでキーボードを弾く! 前編」では基本的な考え方や役割について勉強しました。

後編ではもう少し細かい部分を具体的に見ていきましょう。

 

音の省略

メロディ楽器がギター・ベース・キーボードという編成の場合、ベースが1音、ギターが(状況によりますが)最大で6音発するので、この時点で既に7音も鳴っています。

この状況でキーボードも沢山の音を出してしまうと、音数が過剰になってしまいます。

よって、音を極力省略して弾いたほうがいい場合があります。

 

代表的なのは第一転回形の和音の第3音、つまりC/Eのときのミの音ですね。

そもそも第一転回形の和音では、ベース以外は第3音を弾かないほうが良いとされているので、ガンガン省略しましょう。

非常にスッキリとしたサウンドになりますよ。

詳しく知りたい方はこちら「第一転回形の和音」をご覧下さい。

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ギターにも省略してほしいところですが、ギターは「この音だけ省略する!」ということがなかなか困難な楽器です。

なので、こういう細かいことはキーボードが積極的に行いましょう。

 

他の音はどのような場合に省略可能か、本当は色々と細かいルールがあるのですが、基本的には「既に誰かが弾いている音は省略可能」です。

バンドは各コードトーンを誰かしらが弾いてくれるので、あまり気にする必要はありません。

音が密集してモワモワしてしまう場合は、不要な音はどんどん捨てましょう。

 

音数を減らすと音の厚みがなくなる! と言う人がいますが、音数と厚みは関係ありません。

必要な音が入っていれば自然と厚く聞こえるし、不要な音をいくら入れても厚くはなりません。


バッハ:シンフォニア第8番 ヘ長調 BWV.794【演奏用楽譜】

 

上の曲を聞いてみてください。

必要な音がしっかり入っていれば、2~3声でもちゃんとゴージャスに聞こえます。

 

前編でも少し触れましたが、厚みが出ないのは各パートが同じような音域で同じような演奏をしているからです。

米ばかり食っても人間に必要な全ての栄養素は摂取できません。

それぞれの量は少なくてもいいので、野菜や肉もバランス良く食べましょう。

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音の追加

省略に比べればレアな状況ですが、音を追加したほうがいいこともあります。

例えばギターがパワーコードを弾いているときは第3音が欠落しているので、キーボードが第3音を弾いてあげたほうがいい場合があります。(そうでない場合もあるので難しいのですが…)

 

あとは、前編で説明した「色塗り」の考え方と重複しますが、例えばお洒落な雰囲気にしたいときはM7thや9thを入れるとか、不協和音度合いをパワーアップさせたいときは#9thや♭9thなどのテンションを入れるとか、そういうことも可能です。

ただし、ここぞと言うときに限ります。

 

オブリガート

歌の合間を埋めるようにちょこっと弾くメロディのことをオブリガートと言います。

助奏・裏メロ・オカズ・オブリなどとも呼ばれます。

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この「ミドシ」の部分がそうです。

このような音は基本的にはキーボードの担当です。

ポピュラー音楽はコードを中心に考えるため、どうしても演奏が「和音一辺倒」になりがちです。

和音を「ジャーン ジャーン」と鳴らすだけでは面白くありません。

オブリガートのような細かい動きが加わると、曲がカラフルになります。

 

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(上の譜例のように動きのない曲は誰も聞きたくない)

ギターは和音を弾きながらメロディを奏でることがなかなか困難な楽器です。

よってオブリガートは消去法的にキーボードの仕事となります。

 

また、ここでどんな演奏をするかによって曲の印象は大きく変わります。

これが前編で言った「色塗り」です。太陽を赤く塗るか青く塗るか、キーボードの腕の見せどころです。

 

例えば先程の「さくら さくら」であれば、当然ながら和風の旋律がピッタリ合います。

ジャズ風やクラシック風、ヘビメタ風の旋律では台無しです。

 

しかも、和風であれば何でも良いわけではなく、ボーカルと自然に繋がるような旋律にしなければいけません。

つまりボーカルの「さーくーらー」というフレーズからバトンを渡され、キーボードは「ミドシ」というオブリガートを奏でます。

そこでボーカルは再びバトンを受け取り「さーくーらー」と歌うのです。

この連携がスムーズだと、ボーカルも歌いやすいし、お客さんも聞きやすいし、曲に立体感が出ます。

 

簡単に言えばオブリガートとは「合いの手」です。

「さーくーらー」と歌ったときにお客さんが「あ、それ!」とか「あ、よいしょ!」とか言ってくれたら歌いやすいし盛り上がりますよね。

それを旋律で表現できるのが「良いキーボード」です。

 

逆に動く

頻度はあまり高くありませんが、キーボードには「皆と逆に動く」ことが要求される場合があります。

分かりやすい例としては、皆が上がっているときにキーボードは下がる。

もしくは皆が下がっているときに上がる。

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先程同様、全員が同じ動きをすると曲が単調になってしまい、面白くありません。

誰かが逆に動くことで和声感と立体感を出すことが出来ますが、それが自然に出来るのはキーボードだけです。

「右手は皆と同じ動きをしつつ、左手は逆に動く」のような工夫があると尚良し。

 

次に音量面です。

皆が前に出てガンガン弾いているときは、キーボードは少し引いてあげる。

また、皆が音量を抑えているときはキーボードが前に出る。

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ちょっと説明が難しいのですが、例えば上の音源では1小節目と3小節目は強奏ですが、2小節目は弱奏になっています。

キーボードはこれと逆の動き、つまり1小節目と3小節目は一歩引いて、2小節目は前に出ると、バランスが取れると共に、様々な楽器が代わる代わる活躍することで曲の色彩が鮮やかになります。

 

ラストのサビ前に、静かなサビ(落ちサビ)を入れることがありますね。

あの部分はキーボードの出番です。思いっ切り前に出て演奏してください。

元々が激しい曲調であればあるほど、ピアノでしっとりと弾くことで曲の新たな一面を見せることが出来ます。

 

次に音数です。

ギターが細かいリフを弾いているときは、キーボードは邪魔にならないように静かにしています。

ギターが格好良いリフを弾いていても、キーボードがこんなことをしていたら超ウザイですよねw

ここは白玉(長い音価)でコードを弾くなど、ギターの邪魔にならない工夫が必要です。

ただし、ギターのフレーズとフレーズの合間にちょこっと何かを弾くと「ギターソロに対するオブリガート」になりますので、それは効果的です。

 

一覧表

では最後にキーボードの弾き方のバリエーションを軽く確認して終わりにしましょう。

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表にするとこんな感じですね。大抵の弾き方はこの組み合わせで説明することが出来ます。

クラシックだともっと様々な要素が複雑に絡み合うのですが、バンドだったらこの程度で充分です。

 

例えば「和音・レガート・少ない」という組み合わせだと、普通の白玉奏法になります。

中音域で弾かれることが多い。

 

「和音・スタッカート・多い」だと「刻み」の奏法になります。

これは高音域で弾くと効果的です。

 

「旋律・レガート・多い」だとソロの早弾きです。

また「和音・スタッカート・少ない」だと「キメ」になりますね。

 

オリジナル曲などで、どんな弾き方をすればいいか迷ったら、上の表から色々と組み合わせを考えてみると何か浮かぶかもしれません。

ただし「旋律・スタッカート・少ない」のように、一般的でない組み合わせも多々あるので注意しましょう。

 

表にはない奏法としては、グリッサンド、トリル、トレモロ、ポルタメント、ベンドなどがあります。

この中でよく使われるのはグリッサンドでしょうか。

しかし、ピアノのグリッサンドは悪い意味で目立ちます。

私は「キーボードの音はギターやドラムに比べて小さい」と何度も申し上げてきましたが、グリッサンドに限っては、なぜか圧倒的にピアノが目立つのです。

よって何度も使うと変なので、ここぞと言うときに使いましょう。

私は対バン形式の30分程度のライブだったら1回。ワンマンだったら2回程度までを目安にしています。

 

 

さて、バンドでキーボードを弾く際のテクニックはこんなところでしょうか。

今回はピアノに絞って説明いたしましたが、他の音色について知りたい方はこちら「キーボードの音色」をご覧下さい。