音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

雅楽 前編

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今日のテーマは雅楽です。神社でよく演奏されるアレですね。

もちろん私は雅楽の専門家ではないので、そこまで深く理解しているわけではありませんが、頑張って解説していこうと思います。

 

東洋の不思議な音楽

まず雅楽とは次のような音楽です。

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素晴らしい音楽ですね。ちなみに3分10秒あたりからが曲のスタートとして分かりやすいです。これ以降に出てくる譜例も、3分10秒あたりを例として多く挙げています。

 

雅楽とは基本的には中国から渡ってきた音楽がベースになっているようですが、それに日本土着の音楽がミックスし、日本独自の音楽となりました。また、シルクロードによってベトナムやらインドやらの文化も入っているようです。

ちなみに雅楽の演奏形態は世界最古のオーケストラとされています。

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雅楽という音楽は、基本的には一本の旋律で出来ています。複雑そうに聞こえますが、実は一本だけなのです。西洋音楽のように、主旋律があって対旋律があって和音があって…ということはありません。そういう意味では非常に分かりやすい音楽ジャンルです。

ちなみに「一本の旋律で出来ている」というのはアジア音楽によく見られる特徴ですので覚えておきましょう。

 

雅楽の楽器

では雅楽で使われる楽器を簡単に紹介します。

西洋音楽的に言うと、メロディを担当するのが篳篥と龍笛。和音を担当するのが笙、和音を奏でながらリズムを刻むのが筝・琵琶。パーカッションを担当するのが太鼓・鞨鼓・鉦鼓です。

 

まずパーカッションだけ簡単に説明してしまいますと、太鼓がバスドラム、鉦鼓がハイハット、鞨鼓がスネアのような役割です。

簡単に言うと、曲を4小節単位で考えたとき、ハイハットは各小節頭、バスドラは1小節目と3小節目、スネアは2小節目と4小節目に叩かれます。

言葉で説明すれば非常に単純そうに見えますが、先程の演奏を聞いて頂ければ分かる通り、スネアパートはトレモロを主な奏法としており、また雅楽は曲が進むにつれてテンポが早くなり、ビートも激しくなるという特徴があるため、実際の演奏はかなり熟練を要すると思われます。

実際、雅楽の中ではスネア、つまり鞨鼓奏者がリーダーを務めるそうです。

 

ちなみにこの「鞨鼓」ですが、この漢字が多数派ではあるのですが、私が持っている本には「羯鼓」と書かれています。どちらが正しいのかよく分かりません。

 

篳篥

続いてメロディ楽器を見ていきましょう。メロディは篳篥と龍笛によって奏でられます。篳篥とはオーボエの仲間。龍笛はフルートの仲間です。

主旋律は篳篥によって奏でられるのですが、それだけでは不十分なところがあるため龍笛というサポート役がついています。

 

どんな点が不十分なのかと言うと、まず篳篥という楽器は音域が非常に狭い。1オクターブ強しか出すことができません。

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これほど音域が狭いと、移調ができなくなってしまいます。雅楽でも同じ曲を違う調で演奏することがあるのですが、その際、篳篥パートは次のように無理のある変換をすることになります。(メロディは私が適当に考えたものです)

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つまり、元の旋律を+3して演奏しようと思ったとき、篳篥はラまでしか高音が出ないため、シ以上の音はオクターブ下げて演奏することになります。しかしメロディがどんどん下がってくると、今度はソまでしか低音が出ないため、ファ以下は再びオクターブ上げて演奏するということです。

 

不便な点はまだまだあって、篳篥は指の押さえ方や息の入れ方が少し変わっただけで音が3度も4度も簡単に上下してしまう上に、音の強弱もつけられないらしいです。

 

しかしこれには素晴らしい解決方法があります。

音が簡単に上下してしまうことを逆手にとって、メロディに装飾音を入れるのです。それによって強弱の代わりとすることができます。チェンバロと同じ考え方ですね。

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例えば雅楽では上のようなフレーズがよく登場します。元の旋律はファとラの2音だけですが、そこにミを装飾音として加えます。このミはファと同じ指使いで、息の調節だけで出すのですが、こうすることによって旋律を強調し、クレッシェンドの代わりとすることができます。

 

龍笛

そんな篳篥の旋律をサポートするのが龍笛です。龍笛は音域が2オクターブ程あるので、篳篥のような無理をしなくても広い音域を演奏することができます。

基本的には篳篥とユニゾンしていると思って差し支えないのですが、篳篥とはまた違う独自の装飾音を入れることで演奏を華やかにしています。

 

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ただし、上のように明らかに外してくる場面も多々あるので注意が必要です。外し方に何か法則性があるのかどうか、私もそこまでは分かりません。とにかく西洋音楽での常識では考えられないぶつけ方ですが、こんなのは東洋音楽では朝飯前です。

 

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また、篳篥と龍笛のコンビネーションとして、上のように息継ぎのタイミングを敢えてずらすという技があります。これによって、音が途切れることなく永遠に続いているような印象を与えることができます。これも覚えておきましょう。

 

次は和音を奏でる係の笙です。

冒頭で「雅楽は一本の旋律から出来ている」と言いましたね。一本の旋律から出来ているなら和音はどうなっているのか。雅楽の作曲に挑戦してみたいと思っている方は、ここが一番気になるポイントではないでしょうか。

 

実は、雅楽の和音というのは主旋律を補強するためのものです。西洋音楽の和音はトニック・ドミナントなどの役割があり、和音一つ一つよりも、むしろそれらの連結が大きな意味を持ちます。しかし雅楽の場合、篳篥が吹いているメロディをゴージャスにするというのが目的であって、前後の和音との連結とか、そのキーにおける1度の和音とか5度の和音とか、そういったことは関係ありません。

(しかし、状況によっては終止形のような進行も存在するらしいです)

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分かりやすく例えると、上のようになります。

つまり雅楽では、メロディがルートのような役割を果たしているわけです。メロディがドだったらいつでもCのコード、レだったらいつでもDのコードを当てていくのです。このキーでこのコードを使うのは変だとか、このコードからコードに行くのはおかしいとか、そんなことは考えずに機械的に当てはめていきます。

では具体的に雅楽の和音を見ていきましょう。(実際の音は記譜よりオクターブ上)

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はい、以上です。正確にはもう少し存在するようですが、メインで使われるのはこの10種類です。赤く塗ってある音符がルートです。つまり篳篥がシの音を奏でているときは、曲のキーや前後の和音に関係なく、笙は「一」の和音を奏でるようです。

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「凢」とか「一」というのはコードネームと一緒ですね。笙の奏者は上のように楽譜に書いてあるコードを演奏するのです。現代のポップスと全く一緒です。

 

しかし西洋音楽の常識で考えると凄い和音ですよね。その昔、ドビュッシーはパリ万博で五線譜に記された笙の和音を見て衝撃を受け、自身の作品に取り入れたと言われています。

当時の西洋の最先端作曲家に影響を与えたのは、日本の1000年前の音楽だったのです。

 

演奏テクニックについても少し触れておきましょう。

笙は吸っても吹いても音が出ます。ハーモニカなどは吸うときと吹くときで違う音が出てしまいますが、笙の場合は同じ音が出ます。

 

また、笙のコードチェンジはギターのように瞬時に行われるのではなく、ゆっくりと時間をかけて徐々に変化させていきます。

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ギターで例えると、AmからEmにコードチェンジするとき、まずは人差し指を離し、それから中指を5弦に持っていき、最後に薬指を4弦に持っていく、といった流れになります。この動作を1拍分ぐらいの時間をかけて行います。

1拍というとそれほど長く感じないかもしれませんが、雅楽は曲のテンポが遅いので、1拍と言ってもかなりの秒数になります。

 

さて、これらの2つのテクニックを組み合わせるとどうなるでしょうか。

コードチェンジをゆっくりと行うことによって、和音がグラデーションで変化していきます。さらにその時、呼吸を切り替えることによって、音が途切れることなく続きます。

これによって、篳篥と龍笛のコンビネーション同様、音が永遠に続くかのような効果を出すことができるのです。

 

琵琶・筝

最後はこの2つの楽器です。これらの楽器は、和音楽器でありながらリズムを刻む役割があります。バンドで例えるとベース、或いはギターがコードをミュートで刻むようなイメージです。

 

まずは琵琶から見てみましょう。キーによって調弦方法が色々あって大変なのですが、とりあえず主要調弦は次のようになっています。

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次に演奏方法ですが、篳篥のメロディに対して次のように演奏していきます。(キーは平調)

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つまり、低いほうの3つの弦は開放弦で弾き、最高音の弦だけフレットを押さえて、メロディとユニゾンするのです。分かりづらい例え方ですが、バラライカのような演奏法だと思ってください。

あ、実際に弾くときは「ジャラララ~ン」と一弦ずつアルペジオで弾くので注意してくださいね。

 

他にも細かいテクニックが沢山あるのですが、それは置いといて筝に行きましょう。筝もキーによって調弦が色々あるので、まずはそれを見てみましょう。

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次に演奏方法です。

筝も琵琶同様、細かいテクニックが色々あるので全てを紹介することはできないのですが、一応メインの弾き方としては次のようなものがあります。(キーは平調)

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赤い音符がルート(篳篥のメロディ)です。このように、奇数小節のときにルートに向かって少し低い弦から「タン、タカ、タン」というリズムで弾いていきます。

(正確に言うと、和音部分はアルペジオで弾かれ、しかも一番下の音以外はかなり小さく弾かれます。つまり1小節目の3拍目で言うと、ファ#は強く弾かれますが、ラとド#は少し遅れて弾かれ、しかもほとんど聞こえません)

 

筝は琵琶のようにフレットで音程を変えることができないため、開放弦の音をそのまま弾くしかありません。よって、篳篥と少々合わない音があってもそのまま気にせず演奏します。例えば先程の譜例の1小節目のルートはレですが、筝の平調のチューニングにはレが存在しないため、ド#で代用します。凄い度胸ですねw

(正確には筝もピッチを変化させることはできるのですが、雅楽ではなぜか行われないようです)

 

さて、これで雅楽の楽器の紹介が一通り終わりました。楽器紹介だけでだいぶ長くなってしまったので、続きは後編で。

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