今回紹介するのは、ヤニス・クセナキスの作曲法です。
クセナキスはギリシア人の現代音楽作曲家です。
大学では建築と数学を学んだという異色の経歴の持ち主で、数学や物理の理論を作曲に応用したことで有名です。
|
一般的には非常に難解な数式を音楽の世界に持ち込んだと言われていますが、よく見ると実は学部生レベルです。
「数式を見ると頭がクラクラする…」という方はともかく、数学や物理が得意だった人であれば手も足も出ないわけではありません。
私も理系の端くれなので、こんなもん余裕で解説してやるぜ!
…と言いたいところなのですが、私、学生時代はライブに明け暮れていたため、まともに勉強などしておりませんでした (;-ω-)ゞ
と言うわけで、私が理解できた極めて初歩的な範囲のみ、何となく解説していこうと思います。
スポンサーリンク
音が存在する確率
クセナキスが作曲に用いた分野は、確率・統計・集合・線形代数・エントロピー・アルゴリズム・フラクタル・ゲーム理論など多岐にわたるのですが、何となく統計・ベクトル方面に偏っていますよね。
クセナキスの作曲法は、基本的には「ある音が存在する確率分布を定義して、その確率に則って音のベクトルを五線譜上に配置していく」というやり方です。
…え、何言ってるか分からない?
すみません、実は私もよく分かっていませんw
え~っと、例えばポアソン分布というものがありまして、これは何かと言うと「単位時間あたりに平均λ回起こる現象がk回起こる確率」を示した式なんですよ。
これを利用すると、例えば「1小節内に音符が平均10個存在する曲で、ある小節内に音符がk個存在する確率」的なことを計算できるわけです。
平均10個ですから、k=10 が確率としては一番高いわけですよね。(計算してみたら12.5%だった。意外と低いな)
そこから音の数が「9 , 8 , 7…」或いは「11 , 12 , 13…」となるに従って確率は下がっていきます。100個とかになったら確率はほぼゼロですよね。
この確率分布に従って音符を配置していきます。例えば12.5%(8小節に1回)の確率で音符を10個配置します。
ただ、具体的に「1小節目には何個の音符を置くべきか。2小節目は何個か」ということをクセナキスがどのように決定していたのかは語られておらず…。(語られてはいるが文章が難解すぎて私が理解できなかっただけ、という可能性も有ります)
もしかしたら、確率だけ計算して、あとの細かい部分は感覚で作曲していたのかもしれません。
ともかく、これで音の個数は決定しましたね。
音高・音価など、残りの要素についても同じようにポアソン分布に則って配置することも可能ですが、別の方法を使うこともできます。
n秒後の音の確率
マルコフ過程(マルコフ連鎖)について考えてみましょう。
これも確率なのですが、まぁ簡単に言うと「時間とともに確率が変化していく」的な感じです。
ドとレの2音だけの曲を考えます。
最初の音がドだった場合、例えば「次もドである確率が30%、レに行く確率が70%」。最初の音がレだった場合「ドに行く確率が80%、次もレである確率が20%」であるとしましょう。
まず、最初の音がドだった場合、次の小節の音(の確率)は何でしょうか。
これは簡単ですね。先程の定義の通り「ドが30%、レが70%」です。
では「次の次の小節」は?
これはちょっと計算が面倒ですね。
上の図のように、「ド→ド→ド」と進行する確率は9%、「ド→レ→ド」と進行する確率は56%です。よってドである確率は65%。
同様に「ド→ド→レ」と進行する確率は21%、「ド→レ→レ」と進行する確率は14%です。よってレである確率は35%となります。
ほら、時間とともに確率が変化しましたね。
しかしちょっと計算が面倒ですね。
「次の次の小節」でもこれだけ面倒なのですから、「次の次の次の小節」は? さらにその次は? n小節後は? となったら更に大変です。
そこで、行列を用いて式をシンプルにしてみましょう。
細かい説明は省略しますが、2小節目(1小節後)の音の確率は上のような行列式で表すことができます。
先程定義したように、「ド→ド」が30%、「ド→レ」が70%、「レ→ド」が80%、「レ→レ」が20%という意味です。
では3小節目(2小節後)の音の確率はどうなるかと言うと、実はこの行列式を2乗するだけで簡単に求められてしまうのです。
最初の音がドであるとき、2小節後もドである確率は65%、レである確率は35%。先程の計算結果と見事に一致していますね。
最近は高校で行列をやらないみたいなので、若い方は行列の掛け算が分からないかもしれませんね。
やり方を説明すると長くなるので、分からない方はとりあえずこちらのサイト様(行列の積の計算方法と例題 - 具体例で学ぶ数学)をご覧下さい。
同様に、3小節後は3乗、4小節後は4乗、n小節後はn乗するだけで簡単に(?)確率が求められてしまうのです。これ考えた人すげーな!
しかし、今はドとレの2音だけで考えたから簡単でしたが、実際には12音で考えなければいけないことをお忘れなくw
音の空間ベクトル
マルコフ過程は確率を扱うので、ブラウン運動のようなランダムな動きと非常に相性が良い。
実際、クセナキスも音を粒子に見立てて、粒子が3次元空間内を運動するかの如く音を動かしています。
例えば「音高、強度、時間」の3次元空間に音の粒子を配置します。
この音を先程やったような計算に従って動かしていくわけですが、私も詳しい操作方法はイマイチ理解できませんでした。
しかし面白い点が一つあって、最終的にこの運動の正射影ベクトルを作ってやると、そのまま楽譜の形に出来るのです。
簡単に言うと、「3次元を真上・真横などから眺めれば2次元に見えるでしょ」ということです。
この場合、音高は連続的に変化することになります。クセナキスの曲でグリッサンドが多用されるのは、こういった理由からなのです。
4分50秒辺りからが分かりやすいですかね。
集合論
いかがですか? チンプンカンプンですよねw
私としては、途中で離脱せずにここまで読み進めて頂けただけでも感謝です。
最後に、あまり計算を必要としない手法を軽く紹介して終わりにしたいと思います。
これは考え方としては非常に単純なのですが、まず音を上のようにグループ分けします。
図で描くと次のようになりますね。
Aグループ(ドレミソラ)、Aにしか無い音(ドソ)、AとBの共通部分(レミラ)など、様々な集合を考えることができますね。
あとは、これに従って適当に音符を置いていくだけです。
数式が必要ないため、これなら我々でも作れそうですね!
ま、これも例によって、実際の曲はもっと複雑なんですがw
さて、今回はクセナキスについて解説いたしました。
元の文章や数式が難解なので、間違っている点も多々あるかとは思いますがご容赦下さい。
というか、誰か俺にも教えてくれ!w