今日のテーマはフリジア旋法です。
「フリジアンスケール」「フリジアンモード」「ミの旋法」などと呼ばれることもあります。発音の都合上「フリギア」と言う人もいます。
このように「ドレミファソラシド」をミから始めた旋法を指します。
上譜例はE音から始まるフリジア旋法なので、これを「Eフリジア旋法」もしくは「Eフリジアンスケール」などと言います。
特徴
フリジア旋法をドから始めると下のようになります。短音階と比べると♭が1つ増えた形ですね。
つまり、マイナースケールの第2音を半音下げれば何でもフリジア旋法になります。
DフリジアンはDmに対してミが♭になった形。F#フリジアンだったらF#mに対してソがナチュラルになった形、AフリジアンだったらAmに対してシが♭になった形です。
第2音が半音上下することによって短音階とフリジア旋法の差が決定づけられるので、この第2音のことを特性音(特徴音)と言います。
また、フリジア旋法は主音と第2音の間の音程が半音になっていることにより「ファ→ミ」という下行で主音に解決する進行が可能となります。
このファ音を「下行導音」と言います。
短調の曲でⅣの第一転回からⅤの和音へと半終止をした場合、これを「フリギア終止」と言います。
上譜例はイ短調の「Ⅳ→Ⅴ」ですが、Ⅴの和音をピカルディーのⅠと考えれば、確かにEフリジアンが終止したように見えますね。
フリギア終止は現代では半終止のことを指しますが、バロック時代は短調の曲をこれで終えてしまうこともありました。キーがAmなのにEのコードで終わるのです。大胆ですね。
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ドミナント
クラシック系の本には、フリジア旋法のドミナントは第6音(ド)であると書かれています。
実は、この場合のドミナントとは「トニック和音に進行する音」という意味ではありません。
カトリックでは、聖歌を歌った後に旧約聖書の「詩篇」と呼ばれる部分をメロディに乗せて歌うことがあるのですが、その時に主に使われる音を「ドミナント」と言うのです。
つまり「聖歌がフリジアだったら、詩篇はド音で歌え」という意味です。
大昔はフリジア旋法のドミナントも他の旋法と同様に第5音だったのですが、いつものようにファ音とのトライトーンが気になったため、第6音に変更されたようです。
第6音がドミナントだからと言って、別に「C7→Em」という終止をしなければいけないわけではないのでご安心くださいw
コード進行
以下、特に指定がない限り全てEフリジアンで説明いたします。
基本的なことはドリア旋法「ドリア旋法」のときと一緒です。
長調・短調のような、細かいコード進行の規則は無い。
しかし「G7→C」という進行を使ってしまうと、その瞬間にCメジャーに聞こえてしまうので、これは無し。(使っている例を見たことがあるので、100%ダメなわけではないようです)
Bm(♭5) は使わないほうが無難。
その他、フリジア旋法の独自の特徴としては、Amが多用されます。
特にクラシック系・フラメンコ系の曲では顕著で、「これは最後こそEmコードで終わっているものの、それ以外は完全にAmの曲調だよなぁ…」と思える曲が多々存在します。
ちなみに「F→Em」というコード進行は、実はクラシック系の曲ではあまり使われません。
先程説明したように、「F→E」とか「Dm/F→E」というフリギア終止はたまに見かけるのですが、「F→Em」が使われるかというと微妙…。
ただし、先程言ったように第2音は特性音ですので、ポピュラー系やフラメンコ系の曲ではFコードはよく使われるし、使ったほうが手っ取り早くフリジアンの雰囲気が出せます。
もう一つ。
これは主観ですが、DドリアのときのDコードに比べて、EフリジアのEコードは使用頻度が高いように思います。曲の途中でも最後でも、フリギア終止とは関係なくけっこう登場する。
曲の途中で使われた場合、通常のセオリー通りAmもしくはFに進行するのが定番です。
以上を踏まえて、実際にフリジア旋法の曲を作ってみましょう。
ドリア旋法のときと同様に、メロディに対して適当にコードをくっつけていくだけです。
ドリア旋法のときはDmとGが多用されたので、「G→Dm」のような、現代人の感覚からすると気持ち悪いコード進行が多々見られましたが、フリジア旋法の場合は多用されるのがEmとAmなので、ドリアに比べればそこまで変な進行は見られません。
使用例
では実際にフリジア旋法で作られている曲をいくつか聞いてみましょう。まずはクラシックから。
Josquin: Mille regretz - Hilliard
ジョスカン・デ・プレの「千々の悲しみ」です。
これは、天正遣欧少年使節がヨーロッパから日本に持ち帰り、豊臣秀吉の前で演奏した曲として有名です。
秀吉はこの曲を非常に気に入り、3回も演奏させたそうです。
続いては、ドビュッシーの「弦楽四重奏曲ト短調」
Claude Debussy [1862-1918] - String Quartet g-moll, Op.10 [1893]
(スペースの都合上、分数コードの分母は省略しています)
Gフリジアン、つまりGマイナースケールのラ音も♭になった形ですね。
分かりやすいのは0分24秒頃まででしょうか。それ以降は旋法が目まぐるしく変化します。
フラメンコではフリジア旋法がよく使われます。
特に、ソが#になった「スパニッシュ・スケール」は有名ですね。フラメンコについて詳しく知りたい方はこちら「フラメンコ 前編」をご覧下さい。
厳密に言うと「フリジア旋法」とはクラシックの用語なので、このような民俗音楽系のジャンルでは「ミの旋法」と言う人もいます。
Fandango - Flamenco Legacy - with music and tab (No. 7 of 15)
動画ではタイトル部分に「ファンダンゴ」と書かれていますが、ファンダンゴとは本来ジャンルの名前なので、正式タイトルは一体何なのか…。無いのかな?
続いては、童歌「通りゃんせ」
フリジア旋法(ミの旋法)と呼ぶにはちょっと苦しいですが、ミで始まりミで終わっているのでカウントしてしまいましょう。使用例が少ないのでこういうのも入れないとw
また、メタル系の曲のギターソロやリフでフリジア旋法が使われることがあります。
メタルではダークさ・浮遊感・不気味さなどを表現するために、コードに対してアウトサイドなフレーズが使われることがあります。
フリジア旋法はアウトサイド加減が丁度良いのでしょう。
最後にゲーム音楽ですが、私の世代はフリジア旋法のゲーム音楽と言えばやはりコレです!
(楽譜は0分24秒頃)
黒い風が…泣いている…。
クロノ・カエル・マールの3人で行ってしまうと、水属性がカブってしまうので苦戦するんですよねw
また、ストⅡのバルログのテーマは一瞬フリジア旋法に聞こえますが、実はあれは普通のAmです。
ポケモン赤緑のチャンピオン戦も、最初はフリジアっぽいのですが、途中からEmになってしまいます。
以上、今回のテーマ「ルッカの過去イベントで、パスコードの入力が何回やっても成功しない」を終わりにしたいと思いますw