音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

ガムラン 前編

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今回紹介するのはガムラン音楽です。

フィリピンやマレーシアにも類似の音楽が存在しますが、我々がイメージする「ガムラン」とは、インドネシアのジャワ島・バリ島に伝わるものです。

 

インドネシアって、島が沢山ありますよね。なんと1万以上もの島から成るそうです。

と言うわけで、現在インドネシアと呼ばれる地域には元々沢山の小さな国が存在していました。

17世紀にオランダが植民地支配を始めて以降、それらの国は徐々に強制統一されていきましたが、何となく「現在の形」になったのは20世紀に入ってからです。

つまり、つい最近まで別々の国だったわけですから、インドネシアの中には多種多様な文化が存在しています。ここがポイントです。

事実、バリ風ガムランとジャワ風ガムランも、別ジャンルの音楽なのではないかと思えるほど違います。

 

音階

では解説に入りましょう。

まずは音階です。ガムランでは「ペロッグ」「スレンドロ」という2種類の音階が使われます。

まずはペロッグ音階から見てみましょう。「ペロッ」「ペログ」などと呼ばれることもあります。

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この音階をドから始めると「ドミファソシド」となり、琉球音階と同じ構成になります。

ですので、日本人にはペロッグ音階のメロディは沖縄風に聞こえます。

このペロッグ音階は、本当は7音(フリジア旋法に近い)で、その中から5音を選んで演奏するというスタイルらしいです。

どの5音を選ぶかによって「ヌム」「リモ」「バラン」の3種に分かれるらしいのですが、私にはイマイチ違いが分かりませんでした。

全部沖縄にしか聞こえないσ(^_^;)

 

ここで注意事項が一点。

便宜上、五線譜で音階を紹介いたしましたが、当然ながらガムラン音楽は平均律を採用しているわけではないので、正確に「ミファソシド」のピッチになっているわけではありません。また、キーもバラバラです。

それに加えて、先程説明したようにインドネシアには多種多様な文化が存在します。

よって調律も土地によって全く異なります。例えば、A村ではミファ間が広めに設定されてるけど、隣のB村ではミファ間は狭くてファソ間が広め、など。

 

続いてはスレンドロ音階です。

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半音上げると、丁度ピアノの黒鍵だけを使った音階になります。こちらのほうが分かりやすいかもしれませんね。

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これもペロッグ音階同様、地域によってキーや調律はバラバラです。

スレンドロ音階は1オクターブを5等分した音階であると言う人もいますが、そんなことはありません。

いろいろ調べてみると、おそらくインドネシア人は「音程の狭い部分・広い部分が顕著なのがペロッグで、そうでもないのがスレンドロ」のような感覚を持っているのではないかと思われます。

そういったことから「5等分」と言われるようになったのではないでしょうか。

 

ペロッグとスレンドロはどう使い分けるのか、ということについては、私もよく分かりません。

ジャワ島ではペロッグの曲もスレンドロの曲もゴチャゴチャに演奏されるようなので、単なるメジャーとマイナーのような扱いなのかもしれません。

しかしバリ島では、ワヤンと言う影絵芝居のBGMとしてスレンドロ音階が使われます。

このワヤンは冠婚葬祭のような人生の節目では必ず上演されるものらしいので、もしかしたらバリ島の人々にとってはスレンドロ音階は神聖なものなのかもしれません。

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メロディの仕組み

次に、それらの音階をどのように演奏していくかを見てみましょう。

メロディを奏でるにあたっては、ジェゴガン・ウガル・ガンサといった鉄琴のような形をした楽器が基本となるのですが、これらの楽器は見た目が非常に似ているので、見ただけでは違いがよく分かりません。

しかも、これらの名称はおそらくバリ島だけの呼び方で、ジャワ島ではサロン・グンデル・ガンバンなどと呼ばれているようです。

名前だけが違うのか、楽器としても違うのか、ジャワでも実はジェゴガン等は使われているのか、申し訳ないですがそういった細かいことは私には分かりません。

 

役割としてはウガルがメインで、ジェゴガンはベースウガル、ガンサはピッコロウガルのような存在だと思ってください。


gamelan Rejang Dewa pemade polos

 

上の動画はおそらく適当に叩いているだけだと思われますが、ともかくこのように四分音符で音階を叩いていくのがウガルです。

動画の後半では八分音符になりますが、同じ音を2回叩いているだけなので、四分音符と変わりません。

 

そして、ガムラン音楽ではこのウガルの旋律が基本骨格となります。

ちなみに、演奏者の左手を見て下さい。次の音板を叩く際に、一つ前に叩いた音板をミュートしていますね。

ウガルはかなりサスティンが効く楽器なので、音を伸ばしたままにしておくと半端なく濁ってしまいます。

それを防ぐために、前の音をいちいちミュートするのです。

 

ジェゴガンは、下の譜例のようにウガルの旋律を簡略化したものを低音で奏でるパートです。(譜例は私が適当に作ったものです)

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ガンサは、逆にウガルの旋律を装飾して高音で奏でる楽器です。

2つのパートに分かれ、それぞれが少しズレたリズムを叩きます。

一つ一つは単純ですが、2つが合わさることによって複雑な音楽が出来上がります。

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複数の旋律が合わさって新たな旋律が浮かび上がることを「コテカン」と言います。

ガムランではこのコテカンの考え方が非常に重要です。特にバリ風ガムランでは顕著です。

 

同じようにコテカンを利用して主旋律を装飾するのが「レヨン」という楽器です。

これは銅鑼の仲間らしいのですが、お鍋にしか見えませんね。


Gilak reyong pt 1

 

0分20秒あたりからのウガルとレヨンのコンビネーションが素晴らしいですね。

こういうのはコテカンとは言わないようですが、ともかくこのように複数の楽器が基本旋律を修飾するように参加することで、新たな複雑な旋律を生み出すのがガムランの魅力です。

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動画はただの練習風景なので一人で叩いていますが、実際の曲では偶数人で叩きます。

そうじゃないとコテカンになりませんからねw

 

ちなみにジャワでは、同じ見た目の「ボナン」という楽器が使われるようです。

ウガル系の楽器とレヨン系の楽器は音色が少し異なるので、Aメロはウガル系で演奏して、Bメロはレヨン系、などとパート分けする場合もあります。

 

メインの旋律楽器はこんなところでしょうか。

あとは笛などが加わることもありますが、基本的には一緒です。つまり、骨格のメロディを修飾するだけ。

 

ちょっと長くなってしまったので続きは後編で。

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