今日のテーマは三味線です。
三味線ってどんなイメージでしょうか。日本の伝統楽器? 筝や尺八との合奏? 着物を着た兄弟がベンベンと派手に弾きまくる?
人それぞれ色々あるとは思いますが、まずはその辺から説明いたしましょう。
三味線=ギター
三味線が日本に伝わったのは比較的最近の話です。
中国に三弦という楽器があるのですが、それが14~15世紀に沖縄に伝わり三線となりました。
さらにその三線が16世紀末に本州にやって来て三味線が出来ました。
なので、伝統楽器の中では若造の部類に入ります。だって鉄砲やキリスト教よりも歴史が浅いわけですからw
日本の音楽と言えば雅楽ですが、雅楽は皇族・貴族の音楽なので庶民には関係ありませんでした。
一方、三味線はそのニッチを埋めるかのように庶民層に広まりました。
簡単に言えば雅楽はクラシックで、三味線はギターのようなフォーク楽器です。
リスナー・プレイヤー層が全く異なるため、雅楽の楽器と三味線が合奏することは近代までありませんでした。
尺八もお坊さんの楽器なので、これまた層が違う。(ただし、なぜか筝だけは昔から三味線とよくコラボしていました)
最近のクロスオーバー音楽のせいで和楽器アンサンブルを色々と想像してしまう方がいるかもしれませんが、本来はあんなことは有り得ないのです。
ちなみに、三味線とギターって実は先祖が同じだと言われているんですよ。それだけでなく、奏法の点でも非常によく似ています。
ハンマリングオン、プリングオフ、スライド等は当然のように使いますし、ピックスクラッチやカッティングのような特殊奏法、さらにカポタストのような小道具まで存在します。不思議ですね。
どこの国だろうと、人間の考えることって一緒なのでしょうか。
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津軽三味線
では津軽三味線から紹介しましょう。
実はこれは三味線音楽の中ではかなり特殊分野に入るのですが、昭和の時代から定期的にやって来る津軽三味線ブームのせいで、一般の方にとっては「三味線と言えばコレ!」になってしまっています。
古典曲のレパートリーはそれほど多くないし、どの曲も曲調やら構成がだいたい似ているので、とりあえず津軽じょんから節だけ覚えておけばどうにかなります。
これは全部アドリブで弾いているそうです。
私、子供の頃ずっと疑問に思っていたんですよ。全部アドリブ。
メロディもコード進行もリズムもテンポも曲の長さも何も決まっていないのであれば、何を以て「これは津軽じょんから節です」と言うのか。
極端な話、トルコ行進曲を弾いて「これは津軽じょんから節です」と言ってもいいことになってしまう。だって何も決められてないんだから。
答えとしては、実は津軽じょんから節って歌があるんですよ。
と言うか、元々歌なんです。その際、ボーカルの人が入りやすいようにイントロをちょこっとアドリブで弾くんですね。
そのイントロ部分だけを抜き出して、各々の三味線の技術を競い合うようになったのが、先程の動画のような「津軽じょんから節」なのです。歌が有るバージョンと区別するために「曲弾き」と言われているそうです。
また、同じ津軽じょんから節でも「六段」と呼ばれるバージョンはアドリブではなく定型フレーズを弾くようです。
アドリブを弾く際、出だしは六段のフレーズを引用して、そこから徐々にアドリブに入っていく人もいます。
曲の特徴
まず、動画の0分39秒ぐらいまではチューニングタイムです。
三味線は簡単にチューニングが狂ってしまうので、曲が始まる前に必ずチューニングをします。むしろチューニングも曲の一部です。
開放弦の音は次のようになっています。
低い弦から順に「ド ソ ド」です。
しかし三味線は他にも様々なチューニング方法があるので、他の曲もこれと同じであるとは限りません。
また、音の高さも絶対にドソドでなければいけない訳ではないので、他の音(半音上げなど)にする人もいます。
音階は次の通りです。
ほとんどこの音階上の音で進行していくのですが、たまに高いレの音が使われることがあります。
このオクターブ下などにもレの音は存在するのですが、それらは弾かれず、なぜかこの高さのレだけが弾かれるのです。
一番高い弦の12フレットの位置ですね。(ややこしいですが、三味線の12フレットはギターで言うと14フレットです)
この音を上手く挟めるようになると津軽三味線っぽさが出ます。もちろん動画でも要所要所で使われていますよ。
最高音はシ♭のあたりです。
三味線で言うと19フレット。ギターで言うと22フレットの位置です。この辺でチャカチャカ弾くのも定番なので覚えておきましょう。
ギターのようにコードを弾くことはありませんが、チューニング終わりや曲の終わりに「ベベン!」と3つの弦を一気にストロークすることがあります。
その時は全部開放弦の状態か、もしくは真ん中の弦の4フレット(ギターで言うと5フレット)を押さえて一番高い弦と同じ音にして弾くようです。
津軽三味線の説明はこんなところでしょうか。
三味線にはもっと色々なジャンルがあるのですが、少々長くなってしまったので続きは後編で。