今日のテーマは転調です。
転調とは何でしょうか。曲の調が変わることです。
調とは、簡単に言ってしまえば#とか♭の数ですね。これが変われば転調です。よく最後のサビで半音上がるのが転調だと思ってる方がいますが、…まぁあれも転調であることには違いないのですが、あれだけではないということは覚えておいてください。
(よく考えたら増減のない転調もあるけど…まぁいいやw)
これは音楽未経験の方でもご存知だと思いますが、例えばピアノの場合、#や♭が無いときには主に白鍵しか使いませんが、#や♭が付くことによって黒鍵も使うことになります。
使用する音が変化するわけですから、当然曲の雰囲気も変化します。
全て同じ「ドレミファソラシド」ですが、微妙に違いますね。この性質を利用して曲の雰囲気を変える作曲テクニックのことを「転調」と言うのです。
「なるほど。使用する音が変わるのは分かった。でも俺そんなの曲聞いただけじゃさっぱり分からないんですけど…」
そうですね、普通は分からないかもしれません。私も上手く転調されると気づかないことがあります。アハ体験で「あれ、いつの間に服の色変わったの?」ってなるような感じで、「あれ、いつから転調してた?」と思うことがありますw
例えばバッハの有名なこの曲。0分17秒あたり(2つ目のメロディーが登場したところ)から転調してるんですけど、分かります? 絶対分からないでしょ?
だから、初心者の方は転調してるかどうか分からなくても全く恥ずかしくありません。沢山の曲を弾いたり書いたりして耳が鍛えられれば、だんだん分かるようになってきますよ。
最近のアニソンやアイドルの歌は、サビで全然関係ない調に転調する曲が非常に多いですね。そういうルールに変わったのかな? と思うくらいに多い。AKB48も、最近は落ち着いたようですが一時期はサビで転調しまくってました。全然関係ない調に行くと曲の雰囲気が一気に変わるので、多分それがウケているのでしょう。
私は考え方が古い人間なので、正直あまり良いとは思わないのですがw
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近い調・遠い調
ではそろそろ解説に入りましょう。まずは転調するにあたって、どんな調に行くことができるのか。
実は、特にルールや制限は無いので好きな調に行ってくださいw
ただし調にも色々あるので、当然元の調から見て近い調・遠い調があります。
近い調のことを「近親調」と言うのですが、初心者の方にオススメするのはコレです。これらの調は元の調と近いので、親和性が高く、簡単に行き来することができます。また「変わった!」という感じが弱いため、初心者の方でも違和感なく転調することができます。
ちなみに近親調とは、属調・下属調・平行調・同主調のことです。
属調とは、元の調より#が一個多い調。ハ長調にとってのト長調です。#が一個増えただけなので近いですね。
下属調は、♭が一個多い調。ハ長調にとってのヘ長調です。これも♭が一個増えただけなので近いですね。
平行調とは、#や♭の数は同じですが、主音が違う調。ハ長調にとってのイ短調です。#や♭の数は同じですから、これも近い。
同主調とは、主音は一緒ですが、#や♭の数が違う調。ハ長調にとってのハ短調です。主音が一緒だから近い。
ただ、残念ながら近親調の定義はけっこう曖昧らしく…、クラシック理論ではダイアトニックコードの各和音をⅠとする調を近親調とします。
ダイアトニックコードとはコレのことです。
つまりDm(ニ短調)、Em(ホ短調)、F(ヘ長調)、G(ト長調)、Am(イ短調)が近親調とされるわけですね。Bm(♭5)はⅠの和音になれないので除外します。
Cm(ハ短調)はどうなるのかと言うと、クラシック理論ではハ短調は「ハ長調がちょっと変化した状態」と考えるのです。だからもちろん近い調ではあるのですが、近親調よりももっと近い関係性です。ハ短調に変化することは、厳密には転調ではなく「転旋」と言います。兄弟よりももっと近い、双子みたいな感じですかね。
この辺は初心者の方にはちょっと難しいので、覚えなくて構いません。
聞き比べてみよう
一方、これら以外の調は元の調から見て遠い調です。専門用語では「遠隔調」と言います。先程私が言った「全然関係ない調」とはコレのことです。
実際に近親調と遠隔調を聞き比べてみましょう。
まずは近親調への転調です。C(ハ長調)から始まって、属調であるG(ト長調)に行ってみましょう。
次に遠隔調です。C(ハ長調)から始まって、どこに行こうか迷うところですが、とりあえずC#m(嬰ハ短調)にでも行ってみますか。
(曲はどちらも私が適当に作ったものです)
どうですか? 分かった?
授業の流れとしては「やはり近親調は自然な流れですが、遠隔調は雰囲気が変わりすぎてちょっと唐突な感じがしますね!」と言って話を進めたいところなのですが、もしかしたら「全然違いが分からん。どちらも近いと言えば近いし、遠いと言えば遠い!」と思った方もいるかもしれませんねσ(^_^;)
…え、そういう人はどうすればいいか?
分かりませんwww
冒頭でも言いましたが、これは慣れるしかありません。とにかく沢山の曲を作ったり弾いたり聞いたりすればそのうち分かるようになるのですが、では楽器をやらない、聞く専門の人はどうすればいいかと言われたら、申し訳ありませんが私には全く分かりません。
話を戻すと、このように遠隔調への転調は唐突なので、上手く行わないと前後の繋がりが不自然になってしまいます。しかし、なぜか最近はこの唐突な感じが逆にウケているので、サビで遠隔調に進行するアニソンやアイドルソングが非常に多いのです。
転調してみよう!
先程私は「転調にルールは無い」と言ってしまったのですが、それはポップスの話です。クラシックでは色々と細かいルールがあります。一応ポップスもクラシックの理論を土台として出来ていますから、クラシックの転調理論も少し勉強してみましょう。
まず転調というのはコード進行の巨大版みたいなものだと思ってください。つまり、コード進行に「C→G→C」とか「C→F→C」といった流れがあるように、調にも「ハ長調→ト長調→ハ長調」のような流れがあるわけです。
何が言いたいのかと言うと、「C→G→C」というコード進行中でCは安定した性質を持ちますが、Gの部分は不安定で、安定したCに戻りたがりますよね。それと一緒で、ハ長調の部分は安定していますが、ト長調の部分は曲として若干不安定なのです。
ですから、古典的な理論では、転調したらちゃんと元の調に戻って曲を閉じなければいけません。それに、あまり唐突なコード進行は使わないほうがいいのと同様に、あまり遠い調にも行かないほうが良いのです。
ではどうしても遠隔調に行きたい場合はどうすればいいか。
その場合は、少しずつ転調して下さい。
例えばE(ホ長調)に行きたかったら、上のようにまずは近親調であるEm(ホ短調)に行き、その上でEmの同主調であるE(ホ長調)に行ってください。二段階右折ならぬ、二段階転調です。
そこからさらにEの平行調であるC#m(嬰ハ短調)に行けば、先程の「C→C#m」という転調も無事に完了しますね。
しかし!
ホ長調のような中途半端に遠い調は二段階転調しなければいけないのですが、嬰ハ短調のような極端に遠い調は直接転調しても良いらしいです。なぜwww普通は逆だろwww
だったらホ長調だって直接行ってもいいじゃねーかよ…と思うのですが、そういうわけにもいかないのが和声の面倒なところです。
繰り返しますが、これはクラシックの古典的な理論なので、ポップスを作るときには気にする必要はありません。
ちょっと長くなってしまったので続きは後編で。