音楽理論 ざっくり解説

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転調 後編

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転調 後編です。

Googleで「転調」で検索しようとしたら「店長 うざい」と表示されました。その意見については私も賛成です。

前編(転調 前編)では転調の基本的な考え方について学びました。後編では補足説明と、あと借用和音について説明していきたいと思います。

 

対斜の禁止

まずはこちら。早速あまり聞き慣れない言葉ですが、対斜とは「連結する2つの和音の間に増1度音程の関係にある音が含まれるとき、その2音を異なる声部で処理すること」です。

 

…What? (―"―;)

 

「C→A7」というコード進行で考えてみましょう。

Cにはド、A7にはド#という半音関係(増1度関係)にある音が含まれています。このドとド#を異なる声部で連結してしまうのが対斜。

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今回言われているのは「対斜の禁止」なので、つまり「ドとド#は同じ声部で連結させなさい」ということです。まぁこれは言われなくても分かる人は分かると思いますが。

対斜には物凄い数の例外があります。例えば減七の和音を使うとき、ナポリの和音を使うとき、反復進行をするとき、その他いろいろ。これらの場合に生じる対斜は許されます。

だったら全部OKにしちゃえよ…と思うのですが、そういうわけにもいかないようです。

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繋ぎ目の和音

転調するときに気を遣うのは、繋ぎ目(転調直前・直後)でどんな和音を使うかということです。これもポピュラーでは気にする必要はないのですが、クラシックでは色々と面倒な規則があります。

転調直前はⅠの和音じゃないと駄目だとか、Ⅴじゃないと駄目だとか、転調直後はⅠじゃないと駄目だとか、逆にⅠ以外じゃないと駄目だとか。どんな調に行きたいかによって細かく決まっています。

メンドクセー(。´-д-)=3

 

ただ、困ったらとりあえず転調後のキーのⅤの和音を入れておけば問題ありません。

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近親調の場合は規則がユルいので、だいたいどんな和音を使っても転調することができますが、流石に下のような進行は「ドミナント→サブドミナント」と捉えられてしまうので注意しましょう。

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共通する和音

転調前・転調後のどちらのキーにも共通して含まれるコードは、当然ながら双方の調と相性が良いです。例えばC(ハ長調)とD(ニ長調)だったら、EmとGが共通していますよね。

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Cの部分は明らかにハ長調、A7の部分は明らかにニ長調ですが、Emはどちらとも解釈できるファジーな存在です。こういった和音を挟むことで、グラデーションで滑らかに転調することができます。(ハ長調からニ長調への転調は、クラシックの場合は二段階転調が必要です。詳しくは前編で)

このような和音を「ピボットコード」と言います。ピボットは「軸」という意味らしいです。また、このような和音を利用した転調のことを日本語では「定調的転調進行」と言います。早口言葉かよw

 

異名同音

ド#とレ♭のように、高さが同じなのに名前が違う音のことを「異名同音」と言います。まぁ厳密に言えば高さも違うのですが、平均律で考えれば同じですね。

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この考え方を和音に適用すると、転調にも応用することができます。代表的なのは減七の和音、つまりdimです。

ご存知のように、dimは構成音がカブっているコードがいくつかありますね。例えばBdimは、Ddim、Fdim、A♭dimと構成音が同じです。ということで、曲中のdimを別のdimに読み替えて、さりげなく転調することが出来るのです。

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つまり、曲中にBdimをポンと入れるだけで、次はCにも行けるし、E♭にも行けるし、F#にも行けるし、Aにも行けるということです。凄い! ややこしいが凄い!

この辺について詳しく知りたい方はこちら「減七の和音(dimコード)」も合わせてご覧ください。

 

ちなみに異名同音のことを「異度等高」「エンハーモニック」などと言うこともあります。ついでに覚えておきましょう。

 

借用和音

さて、転調について色々見てまいりましたが、転調部分が物凄く短い場合はどうなるでしょうか。

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例えば、この「D7→G」というたった1小節を「Gに転調している」などといちいち考えていたら、曲全体が煩雑になってしまいます。

よって、このような一瞬だけの転調は「借用」と言います。Gからちょっと借りてきただけで、別に転調しているわけではないと考えるのです。ポピュラーの「セカンダリードミナント」などは借用和音の代表ですね。

どこまでが借用でどこからが転調かというのはちょっと難しいところです。具体的に何小節以上というのは無いのですが、とりあえずカデンツが一段落していれば、誰が聞いても転調になるのではないでしょうか。

まぁ転調とするか借用とするかは単なる解釈の違いなので、どちらにしても音そのものは何も変わらないのですが…。

 

ただ、その解釈の違いによって「事件」が起こります。

「C→G→D→G→C」というコード進行を考えてみましょう。この「G→D→G」の部分は、転調と考えれば何も問題ありません。

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しかし借用と考えることによって、何と「ドミナント→サブドミナント」の進行が生じてしまいます!

転調として考えれば何も問題ないわけですから、もちろんこの進行は合法です。法の抜け穴と言うか、バグと言うか、なかなか面白い事件ですね。「場合によってはドミナントからサブドミナントに進行してもいい」という、良いのか悪いのかよく分からない判例が出来てしまいました。

 

 

さて、転調・借用について色々見てまいりましたが、いかがでしたでしょうか。これらのテクニックを駆使して名曲を沢山書いてくださいね。

ただし、あまりに転調しすぎて「転調 うざい」と言われるような曲はやめましょうw

 

www.mie238f.com