楽曲の調とは、楽器で弾いてみたり、頭の中で鳴らしてみたり、和音も調べることによって感覚的に判断するものですが、ある程度論理的に判断するためのテクニックも存在します。
楽典の「調の判定」という項目がそれに当たります。
正直、音大の入試問題以外の場でこの知識を使う機会があるかどうかは非常に微妙ではありますが、細かい部分転調などを把握するときには役立つかもしれません。
なお、ポピュラー音楽の調を判定する方法についてはこちら「曲のキーを判別する」をご覧ください。
音を並べてみよう
調判定の第一歩は、楽譜上に現れる音を並べてみることです。
下譜例1を音高順に並べ替えると譜例2のようになり、これがニ長調(Dメジャー)であることは誰でも分かります。
(以下、譜例は全て私が適当に作ったものです)
譜例3を並べ替えると譜例4のようになり、この場合はニ長調ともイ長調とも取れるのでちょっと困ってしまいますが、このようなときは和音などから推測したり、和音がなければ感覚的に判断するしかないようです。
まぁ入試でこのような意地悪問題が出題されることはないと思います。多分w
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臨時記号
ダイアトニックな音だけが登場してくれれば簡単に判別できるのですが、そういうわけにもいきません。
次のような曲はどうでしょうか。
ファがナチュラルとシャープの2種類現れるので、曲全体としてはハ長調なのかト長調なのか迷ってしまいますね。
というわけで、次は臨時記号の論理的な判定方法を勉強しましょう。
半音上がる
ある音に#が付いたとき、もしくは♭だった音がナチュラルになったときに重要なのは、後続音へと短2度上行するかどうかです。
短2度上行した場合、次の4パターンが考えられます。
1. 臨時変化音
2. 長調・短調の「Ⅶ→Ⅰ」
3. 長調の「Ⅲ→Ⅳ」
4. 短調の「Ⅱ→Ⅲ」もしくは「Ⅴ→Ⅵ」
このとき、2番〜4番のパターンであれば音階固有音ですが、1番に該当する場合はそうではないので慎重に考えなければいけません。
例えば上譜例の場合、レ#とファ#は明らかに刺繍音です。
よって、これら2音は音階固有音ではありません。
また、1番は下譜例左のように素直に解決するとは限らず、右のように修飾音を挟む場合もありますので注意しましょう。
2番について、もう少し詳しく見てみましょう。
ある音が短2度上行した場合、それは長調・短調の「Ⅶ→Ⅰ」である可能性があります。
(短調は和声短音階もしくは旋律短音階)
特にその曲が短調であった場合、平行長調との判別をする上でこの音が非常に重要となります。
例えば上のような曲は一瞬ト長調かと思ってしまいますが、後半でいきなりレ#が現れます。
先程の3番と4番でないことは明らかなので、この音は2番ではないかと推測できます。
すると、この曲はト長調ではなく、実はホ短調だったということになるわけです。
ちなみにレ#が1番であるか2番であるか、その違いについては、結局は「どちらが多いか」「重要な場所ではどうなっているか」みたいな感じで判別するしかないようです。
例えばレが100個存在し、その内全てが#になっていれば文句なしでホ短調ですし、#は1個だけで、残りの99個はナチュラルであるならばト長調です。
これについても、意地悪問題が出題されないことを祈るしかありませんw
半音上がった音が短2度上行しない、つまり、長2度以上の上行か2度以上の下行をするときは音階固有音です。
作曲をする方はよくお分かりだと思いますが、通常の状態より半音上がった音は上がっていない音に比べて上行するパワーが強くなります。
よって、音を臨時で半音上げるのは、その音を後続音に対する導音として使用したい場合に限られ、結果的にその音は短2度上行する。
逆に、短2度上行以外の進行をしたときはわざわざ臨時で半音上げる必要はないので、その音は音階固有音であると考えられるのです。
まぁ現実には上のような曲も存在するのですが、先程言ったように、入試でこのような意地悪問題が出題されることはありませんw
半音下がる
ある音に♭が付いたとき、もしくは#だった音がナチュラルになったときは、先程の逆を考えればいい。
♭が付いた音は付いていない音に比べて下行するパワーが強くなります。
よって、今度は短2度下行するかどうかが重要です。
短2度下行した場合、次の4パターンが考えられます。
1. 臨時変化音
2. 長調・短調の「Ⅰ→Ⅶ」
3. 長調の「Ⅳ→Ⅲ」
4. 短調の「Ⅲ→Ⅱ」もしくは「Ⅵ→Ⅴ」
先程と同様、2番〜4番のパターンであれば音階固有音で、1番はそうではありません。
短2度下行しない、つまり、長2度以上の下行か2度以上の上行をするときは音階固有音です。
今回の解説は以上です。
これで君もA判定だ!