アドリブ 後編です。前編はこちら「アドリブの練習方法 前編」
前編ではペンタトニックスケールを使って何となく自由に動き回れるようになりましたね。後編ではもう少し細かいテクニックを色々と見てみましょう。
リズムが大事
前編でも触れましたが、ペンタは適当に弾いていると民謡・童謡っぽくなってしまいます。格好良いロックを演奏していても、間奏に入った瞬間に童謡風のギターソロが聞こえてきたら台無しですよね。
どうすれば格好良くなるのか。やはりスケールを色々覚えないといけないのか? …いえいえ、そんなことはありません。そんな時は、リズムを工夫してみましょう。
実は、ほとんどの音楽はメロディよりもリズムが大事です。リズムをちょっと工夫するだけで、印象が一気に変わりますよ。
例えば、上の譜例1のようにギターを演奏しても全くカッコ良くありません。
それに対して譜例2は、2つ目以降の音符を半拍前にずらしただけですが、これだけで何となく「それっぽい」感じになりますよね。
普通は小節や拍の頭に音符を置きたくなるところですが、そこを敢えてズラすのです。小節や拍の頭のことを「表」、それ以外の部分を「裏」と言うのですが、この「裏」を意識することで演奏にリズム感が出てカッコ良くなります。
簡単に言うと、この「ンチャ、ンチャ」という感覚が大事だということです。
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いくらでも例を挙げることができるのですが、とりあえず譜例3のような形が分かりやすいでしょうか。このように小節頭の半拍前からスタートさせると、比較的簡単に裏を意識した演奏ができます。
ジャンルによっては譜例4のように16分音符で細かく弾いてもいいでしょう。(最後の部分はかなり極端な例ですが)
先程は休符でしたが、今回の譜例では拍の裏から表にかけて音符がタイで繋がっていますね。これをシンコペーションと言うのですが、休符とは少し違った独特のリズム感を出すことができます。
初心者の内は、こういったテクニックを色々試しながら弾いてみましょう。慣れれば何も考えなくても自然と裏を意識して弾けるようになりますよ。
ブルーノートを使う
裏拍を意識して演奏できるようになれば、それだけでアドリブはほとんど卒業なのですが、時間が少し余ってしまったのでもう少し色々紹介して終わりにしたいと思います。
個人的にオススメなのが、ブルーノートを使う方法です。ブルーノートとは、その名の通りブルースで使われる独特の音のことで、何の音を使うかは人や状況によって色々あるものの、とりあえずミ♭とシ♭を使っておけば間違いありません。
私がペンタを使うときは、だいたいこのブルーノートをミックスします。ドレミソラの中にミ♭とシ♭を入れてしまうのです。
パッと見、ドリアンスケールのような状態ですね。ロックギターの先生がよく「ドリアンスケールを使うと格好良いぞ!」などと言っていますが、あれはつまりブルーノートを使えという意味なのです。
譜例5は、先程の譜例3のフレーズの後半のミをミ♭に変えたものです。これだけで一気にブルージーになりますね。
譜例をよく見て頂ければ分かるのですが、最初のミはミ♭にはなっていません。いくらブルーノートがオススメだと言っても、毎回毎回使うわけではないのです。当たり前ですが、スケールから外れてはいけないという決まりは一切ありません。
また、譜例6のようにレの音からチョーキングでミ♭に持っていくのも格好良いですね。このまま2~3小節伸ばしていても良さそうです。
ミ♭と普通のミの中間ぐらいのピッチに持っていくのもオススメです。私は本業がピアノ弾きなので、ギターのこういうテクニックが羨ましいです。
和音を使う
今まではずっと単音で見てまいりましたが、もちろん和音の状態で弾くこともできます。ピアノの場合は、むしろこういった弾き方のほうが多いかもしれませんね。
ギターの場合は、譜例7のように弾けばファンキーな感じになるし、譜例8のようなジャズ風の弾き方もよく使われます。(適当に音符を置いただけなので、ギターでこのまま演奏できるかどうかは分かりません)
アルペジオを使う
和音の形でアドリブを弾くことができるなら、当然アルペジオにして一音ずつ弾くこともできますね。ジャズ、特にビバップではよく使われる手法です。
ピアノやギターだけではなく、サックスやトランペットの方も是非覚えておきましょう。
コードの構成音を並べるだけなので、この演奏法は「誰がやっても同じ」と揶揄されることもあります。しかし逆に考えれば、コードの構成音さえ分かっていれば、ジャズの名プレイヤー達と同じような演奏ができるということです。
元の旋律をアレンジする
歌の一部と同じコード進行が使われている場合、その歌のメロディをそのまま、もしくはアレンジして使うことができます。例えば、イントロでサビと同じコード進行が使われている場合、そのイントロではサビのメロディを弾くことができます。
上の譜例は童謡「ぶんぶんぶん」をアレンジしたものです。勿論これは極端な例です。こんなイントロだったら歌い出しづらいですからねw
最初の2~3小節は元のメロディをそのまま弾いて、そこからだんだん離れて完全アドリブになっていくという手法もあります。アドリブで弾くときに、なかなかフレーズの出だしに困る方は、このように元のメロディを利用するのも一つの手です。
逆に、最初は好きなように弾いて、最後の2~3小節はお決まりのフレーズに戻るという方法もあります。この方法だとボーカルが歌い出す位置が分かりやすいという利点がありますが、あまり好き勝手に弾いているとお決まりのフレーズに戻りにくくなってしまうので注意が必要です。
まとめ
さて、アドリブについて色々解説してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
色々練習していると、たまに「お、なんかコレ格好良いぞ!」というフレーズが見つかるはずです。もし思いついたら、それをいつでもどこでも弾けるように色々なキーで徹底的に練習してください。一般的に「引き出し」、悪く言えば「手癖」と呼ばれるものですが、そういった物を一つずつ積み重ねていくのが大事です。
慣れてくれば、何も考えなくても自分の引き出しを組み合わせるだけでアドリブが何小節でも弾けるようになりますよ。
引き出しはその人の音楽人生そのものです。誰に憧れ、どんな曲に涙し、どんな曲をコピーしてきたか。そういったことが凝縮されているのです。
前編でも言いましたが、話し方が人それぞれ違うように、アドリブも人それぞれ違います。時には噛んでしまうかもしれないし、同じ話ばかりしてしまうかもしれないし、冗談の一つも言えない人もいるかもしれません。それでも胸を張って「俺はこういう人間なんだ!」と主張(演奏)してください。
勇気を持って主張すれば、お客さんは最大級の拍手を送ってくれますよ。