ギターをチューニングする 後編です。前編はこちら「ギターをチューニングする 前編」
基本的なチューニングの仕方は前編で学んだので、今回は少々難しい雑学的なことを勉強しましょう。
ハーモニクス
前編で学んだ5フレットでチューニングする方法の延長のような形で、ハーモニクスでチューニングする方法があります。
ハーモニクスとは12フレット・7フレット・5フレットなど、ある特定のフレット上に指を軽く置き、ピッキングと同時に指を離すことで倍音を出す奏法のことです。
これを使ってチューニングすることも出来ます。
5フレットチューニング同様、3弦と2弦のときは他のフレットと異なるので注意しましょう。
しかし、解説しておいて申し訳ないのですが、一般的にはこの方法でチューニングしてはいけないと言われています。
なぜなら、ハーモニクスは純正音程の音が出ますが、ギターのフレットは平均律で作られているからなのです。
純正音程とは、ある音に対して3/2 とか4/3 とか、単純な振動数比で表される音のことです。これにちょっと手を加えたものが純正律で、純正律を用いると綺麗なハーモニーを作り出すことができますが、転調に弱いという欠点があります。
一方平均律では、例えば本来3/2(=1.5)とすべき音程が1.498 のような「ちょっとズレた状態」になっています。振動数比が複雑になるため当然ハーモニーは純正律に比べて汚くなりますが、どんなキーにも転調できるというメリットがあります。
少々難しい説明になってしまいましたが、つまりギターは平均律で弾くように設計されている楽器(転調できないと困るので)なので、各弦も平均律に則ってチューニングしなさいということです。
前編で紹介した5フレットチューニングならば、ちゃんと平均律でチューニングされますよ。
(ま、どちらにしてもチューナーを使えば何の問題もないのですがw)
平均律や純正律について詳しく知りたい方はこちら「音律」をご覧下さい。
スポンサーリンク
オクターブチューニング
では最後にこれを解説して終わりにしましょう。
これはチューニングと言うよりはエレキギター特有の調整方法です。アコギには関係ない…わけではないのですが、アコギの場合は素人が下手にやると大変なことになるので、やめたほうがいいです。
エレキギターのブリッジ部分には、ネジがくっついていますよね。
これをドライバーでクルクル回すことによって弦を支えている部分(サドル)が動き、弦長が変わります。
これを利用して、12フレットを押さえたときの音と、12フレットをハーモニクスしたときの音が同じになるように調節することをオクターブチューニングと言います。
12フレットを押さえると開放弦に対して1オクターブ高い音が出ます。物理が得意な方はご存知だと思いますが、実はここは弦を2等分した位置なのです。
しかし日々のプレイや弦を交換したとき、或いは弦高とか押さえ方の癖とかで徐々にズレが生じ、ピッタリ真ん中ではなくなってしまいます。
これが狂っていると、フレットを押さえたときに正しい音が出なくなってしまいます。特にハイポジションのときに誤差が大きくなります。
一方、12フレットのハーモニクス音は開放弦に対してピッタリ1オクターブ高い音、つまりナット・ブリッジ間のピッタリ真ん中を節とした音が出ます。
これは自然の摂理なのでズレようがありません。
ですので、ハーモニクスの節の部分と12フレットの位置が一致するように調節しましょう、と言うのがオクターブチューニングなのです。
12f > ハーモニクス
まずは12フレット押弦音がハーモニクス音よりも高い場合ですが、これは下図のような状態になっているわけです。(かなり極端な図ですが…)
12フレット押弦音の弦長は5cmですが、先述のようにハーモニクス音は弦のピッタリ真ん中を節としますから、弦長は7.5cmです。よって、12フレット押弦音のほうが高い音になるのです。
これを是正するためには、ブリッジ部分(正確に言うとサドル)を伸ばして(図で言うと左方向に動かす)12フレット・ブリッジ間が10cmになるようにしてやればいいのです。
12f < ハーモニクス
次に12フレット押弦音がハーモニクス音よりも低い場合ですが、これは下図のような状態ですね。
12フレット押弦音の弦長は15cmですが、ハーモニクス音は12.5cmです。よって12フレット押弦音のほうが低くなります。
この場合は、ブリッジ部分を図の右方向に動かすことで是正されます。
さて、これでチューニングは完璧ですね。
チューニングが出来たら、実際にコードをジャカジャカ弾いてみましょう。