続いては短音階です。早速見てみましょう。
長音階の第3音・第6音・第7音が半音下がった形です。
ラから始めると調号なしで表せるので、初心者の方にも分かりやすいですよ。
短音階の特徴は、2番目の音から3番目の音に行くときと、5番目の音から6番目の音に行くときに半音だけ上がることです。
長音階は3番目から4番目、及び7番目から8番目だったので、ちょっと違いますね。
自然的短音階
音階に関する基本的な知識はこちら「長音階」で学んだので、早速一覧を紹介します。
最初は主音順に見ていきましょう。
では次は調号順に見ていきましょう。まずは#が付くパターンです。
♭が付くパターン。
長音階同様、主音が5度上がると#が1個増え、4度上がると♭が1個増えるという法則があります。
また、#6個と♭6個は同じ調です。(厳密に言うと違うのですが…)
長調12種類、短調12種類。合わせて24種類が基本的な音階と調です。
余程マニアックな曲(現代音楽とか古楽とか民族音楽とか)でない限りこの中のいずれかを用いてますので、全部覚えてしまいましょう。
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和声的短音階
ここで、長音階と短音階それぞれの「Ⅴ→Ⅰ」を聞いてみましょう。
前者が長音階(Cメジャー)で、後者が短音階(Cマイナー)です。
長音階の「Ⅴ→Ⅰ」は「終わった!」という感じを強く受けるのですが、短音階の場合は何だか中途半端で、長音階ほどビシッとしていませんね。
その原因は、第7音と第8音の音程です。
つまり、長音階の「シ→ド」は半音で上がっているのに対して、短音階の「シ♭→ド」は全音(鍵盤2つ分)で上がっています。
曲が終わるときは、やはり音程が半音になっていたほうが格好良い。
短音階は、半音でないために鋭角な感じが出ず、ビシッとしない雰囲気になってしまっているのです。
…と言うわけで、ビシッと決めたいときだけ第7音を臨時で半音上げるようになりましたとさ。
うむ、これなら「終わった!」という感じが出ますね。
ラから始めるとこうなります。
このアイデアは和音にとって都合が良いので、この音階のことを和声的短音階(ハーモニック・マイナースケール)と言います。
…しかし、新たな問題登場。
世の中そう上手くはいきません。一つの問題を解決したら新たな問題が浮上するだけです。
東京都にカラスが多いからと言って一生懸命駆除をすれば、今度はハトが増えるだけです。
和声的短音階の場合はどんな問題があるかと言うと、歌いづらさです。
ちょっと先程の音源に合わせて音階を歌ってみてください。ラからシに行くときが超難しいですよね。
第7音が半音上がってしまったために第6音との間が「増2度音程」になってしまい、歌いづらくなってしまいました。
旋律的短音階
では一体どうするべきか。知恵を絞った挙句、このような措置が取られました。
7番目の音に続いて、6番目の音も半音上げてしまいました!
もうヤケクソですね。でもこれによって増2度音程はなくなり、無事に歌いやすくなりました。
旋律にとって都合が良い音階なので、これを旋律的短音階(メロディック・マイナースケール)と言います。
ラから始めるとこうなります。
旋律的短音階は、上行するときは先程紹介したように6番目と7番目の音が半音上がるのですが、下行するときは元に戻る(半音上げない)というルールがあります。
元々上行するときに「終わった!」という感じを出すために半音上げたわけですから、下行するときはその必要はないということです。
(ただし、初心者の方にとっては上行なのか下行なのか判断しにくいケースも多々あるので、慣れるまではこのルールはあまり気にしないほうがいいです)
あ、ちなみにこの元々の短音階のことは自然的短音階(ナチュラル・マイナースケール)と言います。
では、旋律的短音階が発明されたことによって一件落着か。
いえ、そうでもありません。旋律的短音階は確かに合理的で素晴らしい発明ですが、6番目と7番目の音を半音上げたことにより、長音階とあまり変わらなくなってしまいました。
ジャズのアドリブなどでは旋律的短音階がよく使われます。このメジャーかマイナーか分からない中途半端な感じが好まれるようです。
しかし私は逆にそこが好きになれず、アドリブでは一度も使ったことはありませんw
分かりやすい使用例としては、ブルグミュラー「25の練習曲」の「バラード」など。
Burgmüller : Ballade, Op. 100, No. 15
Aメロがほぼ旋律的短音階で作られています。
3つの短音階
ただし一つ注意して頂きたいのですが、和声的短音階と旋律的短音階は「この音階の音を使って曲を作りなさい」ということでは決してありません。
短調の基本となるのはあくまで自然的短音階です。
しかし終止感を出すためには第7音を半音上げなければいけない。増2度音程を回避するためには第6音も半音上げなければいけない。
ということで、仕方なくそれを理論化したものが和声的短音階と旋律的短音階です。
バークリー系の理論書では、3つの短音階がそれぞれ独立した音階であるかのように書かれていますが、そんなことはありません。
例えば「匹」という字は状況によって「ひき」「ぴき」「びき」と、読み方が変わりますよね。
あくまで基本の読み方は「ひき」ですが、1匹や3匹のときは「ひき」では言いづらいので、臨時で変化するだけです。
それと一緒で、短音階も状況によって臨時で変化するだけです。状況に応じて半音上げたり上げなかったりすればいい。
和声的・旋律的短音階は独立した音階ではなく、自然的短音階の臨時変化形です。
決してこの中から一つだけを選んでそれを基に曲を作るわけではありません。
長音階が1種類しか存在しないのは、その音の並びが和声的にも旋律的にも非常に都合が良いからです。
しかし短音階は和声的に都合の悪い点があり、それを是正しようとすると今度は別の場所に歪みができる。
ただ、それぞれにメリット・デメリットがあるために一つにまとめることが出来ず、短音階は3種類も存在するのです。
それぞれの性質を理解して、フレキシブルに対応しましょう。
さて、今回は短音階について勉強しました。
世の中には他にも様々な音階が存在しますから、それらを駆使して面白い曲を沢山書いてくださいね。