続いてはミクソリディア旋法です。
「ミクソリディアンスケール」「ミクソリディアンモード」「ソの旋法」などと呼ばれることもあります。
このように「ドレミファソラシド」をソから始めた旋法を指します。
上譜例はG音から始まるミクソリディア旋法なので、これを「Gミクソリディア旋法」もしくは「Gミクソリディアンスケール」などと言います。
ちなみに「ミクソ」とは「mix」という意味です。
古代ギリシアでは、歴史的にまずドリア・フリギア・リディアの3種類の旋法があって、後からこの旋法を追加することにしたらしい。
(古代ギリシアの旋法は、現代とは開始音が異なります)
この新しい旋法は構成音がリディアの隣だったため「ミクソリディア」という適当な名前を付けられてしまった…ということらしいです。
だったら「ネクストリディア」みたいな名前でも良かったのではないかと思うのですが、なぜ「ミックス」なんでしょうねw
特徴
ミクソリディア旋法をドから始めると下のようになります。長音階と比べると♭が1つ増えた形ですね。
つまり、長音階の第7音を半音下げれば何でもミクソリディア旋法になります。
EミクソリディアンはEメジャーに対してレがナチュラルになった形。FミクソリディアンだったらFメジャーに対してミが♭になった形、BミクソリディアンだったらBメジャーに対してラがナチュラルになった形です。
第7音が半音上下することによって長音階とミクソリディア旋法の差が決定づけられるので、この第7音のことを特性音(特徴音)と言います。
しかし、やはりカデンツを一段落させるときには、第7音は導音化していたほうが格好良いですよね。
よって、中世ヨーロッパではミクソリディア旋法の第7音はしばしば半音上げられ、リディア旋法同様、比較的早い段階から長音階化してしまいました。
コード進行
以下、特に指定がない限り全てGミクソリディアンで説明いたします。
基本的なことは今まで勉強した旋法と一緒です。長調・短調のような、細かいコード進行の規則は無い。Bm(♭5) は使わないほうが無難。
ドリア・フリジアでは「G→C」という進行はCメジャーを連想するためNGでした。
しかしミクソリディアの場合、Gコードは主和音です。
主和音なのに進行できない和音があるというのもおかしいので、ミクソリディア旋法では「G→C」はOKです。
ただし、主音上に四和音を作るとG7になってしまいます。
ブルースなどでない限り、流石にここからCコードに進行するのは無茶です。
他にも、ミクソリディア上の「Ⅴ→Ⅰ7」は「Dm→G7」になってしまうので、これもうっかり使ってしまうとCメジャーっぽくて危険です。(特にジャズの場合)
ジャズでは、これらの進行を避けるためにGコードをsus4の形にする等の工夫がなされるようです。
しかし、そもそもミクソリディア上のⅤの和音は導音を持たないため、ドミナントとしての役割を果たしません。
よって、ドミナント感を出したいならばD7として使用するので、ミクソリディア旋法の曲ではあまりDmを使うことはありません。
ダイアトニックコードの中で言うと、Dmの代わりに用いられるのはやはりFコードで、ポピュラー系や近代クラシックでは「G→F→G→F」のような進行がよく見られます。
また、クラシック系の曲の場合、メロディの終止はどちらかと言うと下行形(ラ→ソ)が多く使われます。
上行形(ファ→ソ)にしてしまうと、導音が無くて何となく締まらないし、コード進行によっては連続8度が生じるためでしょう。
以上を踏まえて、実際にミクソリディア旋法の曲を作ってみましょう。
今までの旋法と同様に、メロディに対して適当にコードをくっつけていくだけです。
ブルース
ブルースやロックンロール系の本などを読むと、「このコード上ではミクソリディアンスケールを使え!」などと書かれていることがあります。
(Cミクソリディアン)
先程少し触れたように、ミクソリディアンスケールにはⅠの和音上における7thの音が含まれているので、ブルースを弾くときに都合が良いというだけのことです。
別にブルースの成立にミクソリディアが何か関係しているわけではありません。
昔のロックバンドの曲で「この曲にはミクソリディア旋法が使われている」などと言われるものがありますが、それも理由は同様。
ブルースを土台として「C→B♭→C」とか「C7→F→C7」みたいなコード進行を使用したら、それが見かけ上ミクソリディアっぽくなっただけです。
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使用例
まずはギヨーム・デュファイの「Balsamus et munda cera」
Guillaume Dufay - Balsamus et munda cera [Isorhythmic motet]
先程説明したように、しばしばファに#が付けられていますね。ドリア旋法のときに解説した二重導音もちょいちょい登場します。
続いてバルトークの「子供のために」第40番
RCM Piano 2015 Grade 8 List D No.2 Bartok Swineherd's Dance Sheet Music
続いてスコットランド音楽より「勇敢なるスコットランド」
"Scotland the Brave" by the Isle of Cumbrae Pipe Band as they march out of Braemar, Scotland
B♭ミクソリディアンです。バグパイプと言えばこの曲ですね。(譜例は0分52秒頃)
スコットランドやアイルランドの音楽には、一部ミクソリディア旋法を用いたものが存在しますが、これはバグパイプの音階が元々ミクソリディアンになっているためです。
続いてはビートルズの「Tomorrow Never Knows」
Tomorrow Never Knows (Remastered 2009)
ほぼCコード一発のCミクソリディアン。C音を弾き続けるだけのベースが段々カッコ良く聞こえてくるのが謎w
ビートルズの曲にはミクソリディアンを使ったものがいくつかあります。
これは先程触れたようなブルースの影響もあるでしょうが、イギリス人である彼らにとって、スコットランド音楽が身近であったことも関係しているのでしょう。
「Hey Jude」の最後の部分なんて、先程のようにスカート履いてバグパイプを持ったオッサンの大群が行進しているようにしか聞こえないw
続いてゲーム音楽。ドリアからリディアに至るまでずっとクロノトリガーの曲を紹介しているので、今回も一曲いきましょう。
ガルディア王国千年祭のテーマ
Dミクソリディアンです。
コードはA7などを使用してしまっているので完全なミクソリディアンではないのですが、メロディは終始ドがナチュラルになっています。
先程申し上げたように、多少導音が無いと曲が締まらないので、むしろこの程度の長音階化は全然OK。
それからFFのチョコボのテーマのAメロ。
【FF4】11 - Chocobo-chocobo(チョコボ)High Quality Soundtrack 高音質 作業用BGM サントラ
作品によってアレンジが異なるので、どれを紹介すればいいか分からないのですがw
今回はミクソリディア旋法について解説いたしました。
クロノトリガーの曲を紹介していたら、またプレイしたくなってしまいました。弁当食って、ペンダントすぐに拾って、猫は放置して、キャンディ屋で動き回るぞ!