音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

偶然性の音楽(不確定性の音楽)

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今日のテーマは偶然性の音楽(不確定性の音楽)です。

2つの言葉の違いはけっこう難しいのですが…、作曲・演奏の際にサイコロなどを用いることによって次の音を決定させるため、作曲者本人の意思ではドレミや音の長さを決められないものを偶然性の音楽。

一方、作曲者がドレミを明確に指定していないため、何の音を出すかは演奏者に委ねられており、どんな曲になるか演奏を始めてみないと分からないものを不確定性の音楽と言うらしいです。

となるとジャズのアドリブなんかも広い意味では不確定性の音楽に入ってしまいますが、まぁそれは置いといて…。

 

図形楽譜

一番簡単(?)なのは図形楽譜ですね。

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ここでは分かりやすくするために五線上に図形を書きましたが、五線すら書かれない場合もあります。とにかく演奏者が図形を見て、そのインスピレーションを音にすればいいのです。

図形楽譜 - Google 検索

 

ただ、ここまで来ると何一つ音楽の知識がない人が適当に絵を描いても音楽になってしまいます。図形楽譜から優れた音楽が生まれた場合、褒めるべきは作曲者ではなく演奏者でしょうね。

ちなみに現代音楽の作曲家ジョン・ケージは、図形楽譜を書いておきながら「ここはもっとこんな感じで弾いてくれ」などと注文していたようです。なら五線譜で書けやwww

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18世紀に流行った遊び

モーツァルトも偶然性の音楽のジャンルで作品を残しています。「音楽のサイコロ遊び(K.516f)」という曲で、その名の通り、サイコロを振って曲を組み立てていきます。

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実際の曲を説明しようとすると長くなるので思いっきり簡略化しますが、まず上の譜例のように、曲の断片に番号が振られています。演奏者はサイコロを振って、出た数字の順番に曲を演奏していくわけです。

 

例えばサイコロの目が1→2→3→4という順番で出たら次のように演奏し、

4→3→2→1という順番で出れば次のように演奏するわけです。

 

繰り返しますが、実際の曲はこんなに単純ではありませんよ。

しかし、さすがモーツァルト。20世紀の音楽を既に先取りしていたなんて! …と思うかもしれませんが、これはモーツァルトのオリジナルのアイデアではなく、彼が生きていた時代にはこういう遊びが流行っていたそうです。

数学者ラプラスが確率について研究していたのも同じくらいの時代だし、もしかしたらサイコロブームだったのかもしれませんねw

 

易経

先程登場したジョン・ケージは東洋思想にハマっていたため、易経を利用して曲を書くことを思いつきました。

易経のやり方、ご存知ですか? まぁ分類的にはタロット占いと一緒ですね。筮竹を使うのが正式な占い方ですが、コインでも代用できます。コインを投げて、例えば表が出たら一本線。裏が出たら二本線を書いていきます。

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これを6回繰り返すと卦(本卦)というものが完成します。

 

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本卦は64種類存在するのですが、例えば1番の卦はド、2番の卦はレ。或いは1番の卦は四分音符、2番の卦は八分音符、という具合に、あらかじめルールを決めておきます。

あとはひたすらコインを投げていけば、自動的に一つずつ音符が定まっていくというわけです。(本当はコインは3枚使ったほうがより詳しく占えるのですが、ここは占いの解説をする場ではないので深入りはしません)

ジョン・ケージは東洋思想にハマっていたので易経を利用しましたが、いちいちコインを投げるのが面倒な方は乱数表を使っても全く同じことができますね。

 

ここで大切なのは、どんな曲が出来上がるか、作曲者自身もコインを投げてみなければ分からないということです。

結果が気に入らなかったからと言って「やっぱ今の無し! やり直し!」ということは許されません。完全に偶然に支配されるので「偶然性の音楽」と言うのです。

ちなみにジョン・ケージはキノコ研究家としても知られていますが、彼がキノコに興味を持ったのは、辞書で「music」の隣が「mushroom」だったからだそうですw

 

では最後にジョン・ケージの代表作「4分33秒」を聞いて終わりにしましょう。 


John Cage's 4'33"

 

ナニコレwww