コード進行の規則 後編です。前編はこちら(コード進行の規則 前編)
前編では、音階上の7つ(使うのは6つ)の和音の役割について説明しました。今回は、もう一歩踏み込んでノンダイアトニックコードについて解説いたします。
ダイアトニックとは簡単に言うと「音階上の」という意味で、ハ長調で言うとドレミファソラシドのことですね。今から説明するのは「ノンダイアトニック」なので、ハ長調の音階上に無い音を使っているコード。#とか♭がついたものについて解説する、ということです。
基本はルート
ここで重要なのは、T・D・Sの分類です。分類さえ出来てしまえば「DはTにしか進行できない!」的な役割は全く一緒なので、#や♭が付いていても迷うことなく使いこなすことができます。
では分類の基準は何かと言うと、それはルートです。ルートとは和音の最低音のことで、Cならド、Dmならレのことです。
前編で7つのダイアトニックコードについて「Cはトニック、Dmはサブドミナント…」と分類したのを覚えていますか? あれを応用して、例えばCをルートに持つ他のコード(CmやC7など)も、Cの仲間だからトニックとしてしまうのです。
代表的なものをいくつか見てみましょう。
C7 Cm …トニック
D7 …サブドミナント
F7 …サブドミナント
A7 …トニック
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「あれ、何か所々抜けてない?」
そうなんです。このルートによる分類法は非常に便利で簡単なのですが、これだけでは説明できないコードもあるのです。
サブドミナントマイナー
例えばFmは何でしょうか?
これは一見サブドミナントのようですが、ラ♭の音が含まれています。このラ♭が曲者で、普通のサブドミナントとはちょっと違った雰囲気を持っています。
よってこれはサブドミナントマイナー(SM)という新しいカテゴリーに分類します。戦隊ヒーローで言うと6人目の戦士的なポジションですね。サブドミナントマイナーに分類されるコードは他に、B♭7やA♭などがあります。いずれもラ♭を含んでいますね。
サブドミナントマイナーはサブドミナントとドミナントの中間の性質を持っています。つまり、ドミナント程ではないものの、かなりトニックに行きたがる。そんな性質です。サブドミナントマイナーはトニックとドミナントには進むことができますが、サブドミナントには進めません。
コード進行とは滑り台のようなものです。トニックが滑る部分。それ以外は梯子です。短い梯子から長い梯子には行けますが、長い梯子から短い梯子には行けません。結局のところ、カデンツとはこの中のどれかを省略したものです。
ちなみにこのサブドミナントマイナーは、クラシックには存在しない、ポピュラー音楽独自の理論です。
なぜ急にそんな理論が誕生したのか、一体誰が考えたのか、私にもよく分かりません。誰か知ってたら教えてw
多分ジャズの人が考えたのではないかと思うのですが…。
裏コード
では話を戻して、コードの分類を進めましょう。
D♭7は何でしょうか? これはサブドミナントマイナーっぽいのですが、実はドミナントです。D♭7にはファとシが含まれています。
前編でちらっと紹介しましたが、これはトライトーンです。これを持つコードはトニックに進みたがります。G7がトニックに行きたがるのは、トライトーンを持っているためだと学びましたね。
よってD♭7もCに進みたがる性質があるので、ドミナントなのです。ポピュラーではこれを「裏コード」と言います。G7とは一見似ても似つかないのに同じ性質を持っている、裏表のような関係なのでそう呼びます。
この関係を定義することにより、次のコードも分類できるようになります。
F#7 …C7と同じトライトーンを持つのでトニック
B7 … F7と同じトライトーンを持つのでサブドミナント
ところで、色々分類してまいりましたが、初心者の方で「ノンダイアトニックコードをいつ、どのように使えばいいのか」という質問をする方がいます。
答えは、好きなときに使ってくださいw
今まで何のためにコードを分類してきたのかと言うと、それはコード進行のバリエーションを増やすためです。例えばF→G→Cというコード進行に対して何か変化をつけたいと思ったら、それぞれのコードに同じ機能(TやSなど)の代理コードを当てはめていけばいいのです。ダイヤルロック式の鍵のように、好きなものを選びましょう。
サブドミナントのところにサブドミナントマイナーも入っていますが、まぁ似たようなもんです。ドミナントのところにサブドミナントマイナーを入れることもできますよ。
難しく言うと、トニックやドミナントとは「主語」とか「動詞」みたいなもんです。主語のところにIを当てはめるかyouを当てはめるか。あるいは意表を突いてthoseとか。それだけのことです。
まとめ
さて、ノンダイアトニックコードの分類、理解できましたか?
ただし注意してほしいことが一点あって、それは「複数の性質を持つ、あるいは複数の解釈ができるコードも存在する」ということです。そういうコードには、上記のような分類は意味を成しません。
例えばE7は、Emに似ているからトニックの性質を持つし、Amに進行したがるからドミナントでもあるし、B♭7の裏コードであるからサブドミナントマイナーの可能性だって有り得ます。
そう言うB♭7だって、クラシック理論ではドミナント。同様にA♭はトニック。B7はドミナント。
F#m7(-5)はD9のルート省略形だからサブドミナントだけど、Am6の転回形だと考えればトニック。D♭7はドミナントだけど、D♭M7はFmの代理だからサブドミナント。
難しい… (´;ω;`)
しかし大事なのは曲そのものであって、分類ではありません。別にトニックだろうがドミナントだろうが、貴方が作った曲は1ミリも揺らぎません。自分に都合の良いように解釈してしまうのが一番です。
ちなみに…クラシックの和声法では、ノンダイアトニックコードが出てきたら、その部分は一瞬転調している(借用と言います)と考えます。
例えばC→D7→G というコード進行があったとき、「D7ってトニックかな…サブドミナントかな…」などと悩むのではなく、「Gに対してのドミナントである」とバッサリ分類してしまいます。この考え方のほうが暗記する量は少なくて済みますね。
転調や借用について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
色々解説してまいりましたが、結局のところコード進行は「自由」です。一つのコードで多様な解釈が出来るため、どうにでも説明できてしまうのです。ただ適当に並べるだけではダメですが、「こういう意図があってこのコード進行にしました」と胸を張って言えるのであればどんなコードを使っても構いません。
G→F という進行でさえ、考え方によってはG→F#→F のF#を省略した形であるとも言えます。これなら全く問題ありません。
斬新なコード進行を使って格好良い曲を生み出してください。
~追記~
上記の内容をもう少し具体的に解説しました。
戻る方はこちら。