今日のテーマは、減七の和音です。コードで言うとdimのことです。
dimは不思議な形をしているので、作曲する上でどう扱えばいいのか困っている人もいるかもしれません。しかし正体が分かってしまえばそれほど難しい和音ではありませんよ。
dimの正体
まずは作り方から見ていきましょう。
Gのコードを用意します。それに7thと♭9thの音をくっつけて、最後にルートを省略すれば、もう出来上がりです。Bdimですね。
正体はG7(♭9)だったわけですね。ということは、dimの機能はドミナントです。先程作ったBdimで言うと、Cにおけるドミナントですね。
和音に7thの音をくっつけると不協和音になるので、トニックに進みたくなる性質を持ちます。そこへさらに♭9thの音が加わるので、不協和音度合いがパワーアップします。
ダメ押しにルートを省略することで、フワフワと不安定な形になります。全ての和音はルートを土台として、その上にジェンガのように音を積み重ねていくことで構成されます。ルートを省略すると、ジェンガの一番下のブロックを取ってしまったような状態になるので、いつ倒れてもおかしくない、一刻も早く安定したい性質を持ちます。
これが、dimの独特の響きの秘密です。
スポンサーリンク
解決は、基本的に限定進行音で構成されているので特に問題はないのですが、唯一注意しなければならないのは第5音のレです。そのまま3度堆積の状態でレの音をドに進行させると連続5度が生じてしまいます。
これを回避する方法としては、強引にレをソに進行させるという悪い意味で理論的な手法か、或いは適当に転回させて、5度にならないような配置にしてからドに進行させる現実的な方法があります。
転回すると…
さて、ここでdimの構成音を見てみましょう。
dimは、全ての構成音が隣の音と短3度ずつ離れているという面白い形をしています。この独特の形によって、ある性質が生まれます。
先程作ったBdimを転回させると、なんとDdimと全く同じ構成になってしまいます。もう一度転回するとFdimです。さらにもう一度転回するとA♭dimになります。(ちなみに、さらにもう一回転回するとBdimに戻ります)
さて、BdimはCにおけるドミナントであると先程言いましたね。
それを他の転回形にも同様に当てはめていくと、DdimはE♭におけるドミナントであり、またFdimはF♯の、A♭dimはAのドミナントということになります。
つまり、曲中にBdimをポンと入れれば、E♭にもF♯にもAにも行けるし、さらにはこれらの調の同主調(E♭mなど)にも転調できると言うことです。
便利な和音ですね。
…とは言っても、それはあくまで理論上の話であって、実際にはdimを一個入れたぐらいで遠くの調まで行くのはちょっと無理がありますが。
では実際の使用例はどうなっているかと言うと、転調に使われるというよりは、dimが元々持っている強烈な響きを利用して恐怖のイメージを作り出している場合がほとんどです。
私の中では、バッハやシューベルトがよく使っている印象ですね。意外なところで言うと、ベートーベンがあまり使わない印象です。(正確に言うと、ここぞという時に必殺技的な感じで使うので、普段は温存している)
dimは、少なくとも1860年か70年ぐらいまでは押しも押されもせぬ最強の不協和音でした。きっとdim本人にもそれなりのプライドや自負があることでしょう。あまり乱発はせず、用法用量を守って正しく使いましょう。
使い方を間違えると、ジェンガが崩れて二度と元に戻せなくなるかもしれませんよw
もう少し初心者の方向けに、こんなのも書きました。