音楽理論 ざっくり解説

音楽理論をざっくり解説します。最低限のポイントだけ知りたい方へ

分数コード

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今日のテーマは、分数コードです。

和音を弾く際、本来弾くべきベース音とは違う音を指定される場合があります。

そのとき、コードネーム上ではスラッシュを書いてその横に指定のベース音を書き記しておくのですが、その形が数学の分数のように見えるので、そういったコードを一般的に「分数コード」と呼ぶのです。

 

…え、何言ってるか分からない?

 

分母はベース音 

つまり、通常「C」と書かれていたらドミソの和音を弾き、ベース音はドを弾くわけですが(下譜例左)、「C/D」と書かれていた場合、和音はドミソのままですが、ベース音はD(つまりレ)を弾くのです。(譜例右)

 

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分子が和音を表し、分母がベース音を表している。ただそれだけのことです。

ベース音に関わることですから、ベーシストは当然マスターしておきましょう。

ちなみに私が上京して初めて組んだバンドのベーシストは、インディーズでけっこう活躍していたらしいのですが、分数コードの弾き方を知りませんでしたw 皆さんは彼のようにはならないで下さいね。

 

さて、書き方は何種類かあります。

先程言ったようにスラッシュで表すのが正式ですが、「on」と書く人もいます。

これはなぜかと言うと、分数コードは「オン」と読むからなのです。「C/D」であれば「シー・オン・ディー」と読みます。

そのため分数コードのことを「オンコード」と言う人もいます。

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ただし、ここで注意。

スラッシュではなく横棒で書いてしまうと、違う意味のコードになってしまう場合があります。

これは「Dコードの上にCコードを乗せる」という意味もあるため、紛らわしいので横棒で書くのはやめておいたほうが無難です。

詳しく知りたい方はこちら「ポリコードとUST」をご覧下さい。

…まぁ前後の繋がりを見れば、どちらを表しているのかは分かりますけどね。

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あともう一点。

「オンコード」などと横文字使ってカッコつけていますが、おそらくこれは日本だけの呼び方です。

英語では「スラッシュコード」とか「オーバーコード」などと呼んでいるようです。

「オンコード」と呼ばれていないのであれば、きっと海外では「on」と書くこともないでしょう。

自分の曲を海外の人にも弾いてもらいたいと思っている人は、今後「on」と書くのはやめましょうw

そもそもこの書き方だと「Caugadd9onD」みたいな状況のときには非常に分かりにくい。誰が考えたのか知りませんが、こんなものは廃止しましょう。

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ギターで弾いてみよう

分数コードを弾く際は、ピアノは左手が変わるだけ。ベーシストがいる場合は、ベーシストに分母を弾いて貰えばいいだけなので、特に影響はありません。

しかし、アコギ一本で弾き語りをする場合などは自分でベース音を工夫しなければいけません。つまり、コードの押さえ方がちょっと変わります。

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よく見かける分数コードを並べてみました。
初心者の方のために一応説明しますが、例えばGというコードは、通常は6弦3フレットも押さえます。

しかし「G/B」は「B音をベース音にしなさい」という意味なので、5弦2フレット(B音)が最低音になるように弾きます。

 

以下、全て同様です。

通常のCコードは5弦3フレットが最低音ですが、「C/E」は6弦開放(E音)が最低音になるように弾きます。

「D/F#」は6弦2フレット(F#音)が最低音です。これは親指で押さえます。

「F/A」は5弦開放(A音)が最低音です。

 

このように、5弦か6弦あたりで分母の音をどうにか押さえられないか工夫するのです。

私が初心者のときは、指板上のどこがC音でどこがD音なのかよく分からなかったので、チューナーを使って目的の音が表示されるまで探しまくりました。

(例えばG/Bだったら、チューナーに「B」と表示されるまで指板上のあらゆる場所を弾きまくりましたw)

D音とE♭音(D#音)は4弦じゃないと出せませんが、4弦~1弦だけで奏でるコードは音数的にちょっと寂しいので、そういう時は5弦5フレットや6フレットを使ってどうにか弾けないか考えましょう。無理なら諦めましょうw

 

分数コードの役割

ここからは全てのパターンについて具体的に見ていきましょう。

冒頭でお伝えしたように、分数コードとは通常とは異なるベース音を指定されたコードです。

1オクターブの中には12個の音があり、その内の1つは通常のベース音ですから、分数コードは一つのコードに対して11種類存在することになりますね。

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これら11種類のコードは、だいたい次のような分類をすることができます。

 

・転回形

・経過音型

・テンション型

・未解決型

 

ただし、これは私が勝手に考えた分類なので、バンド仲間などに「このテンション型の分数コードが~」などと得意気に言っても通じませんよw

 

転回形 

では順番に見ていきましょう。

まず転回形の分数コードですが、これは元から和音の構成音だったものが低音を担うパターンです。C/E , C/G , C/B♭ がそうですね。

第一転回形・第二転回形・第三転回形と呼ばれますが、これらの和音については既に別ページで解説済みですので、詳しく知りたい方はそちらをご覧下さい。

第一転回形の和音

第二転回形の和音

第三転回形の和音

 

これらのタイプは、元々のコード構成音がベース音として置き換わっただけです。

よって、アコギ一本で弾く場合はコード自体の響きは分数にしてもしなくてもそれほど変わりません。(ピアノで弾く、或いはベーシストがいる場合は別)

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例えば「D→A/C#→Bm」のような進行のとき、アコギ一本ではA/C# はなかなか大変ですよね。

このように、押さえるのが困難な場合は普通のAを弾いてしまってもそれほど問題ありません。

 

経過音型

はい、では次は経過音型です。

簡単に言ってしまえば、ドの音からミの音まで行きたい場合、ド→ミ とダイレクトに進行するのではなく、間にレを挟んでド→レ→ミ と滑らかに進行させるとき、そのレの音のことを経過音と言います。

分数コードのこのような使われ方としては、例えばC→Am という進行のときに間にC/Bを挟むことで、ベースラインを滑らかにすることがあります。場合によっては先程のC/B♭でもいけますね。

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或いは、Am → Am/G# → Am/G → Am/F# のように、半音ずつ動かすパターンもあります。

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この進行もアコギ一本ではなかなか大変ですが、かと言って無視してしまうと曲の雰囲気が失われてしまいます。

こんな時は「Am→AmM7→Am7→Am6」のように、せめて上声部に組み込んであげることで多少は雰囲気を残せます。

 

テンション型

次はテンション型です。

テンションコードを表記する際は、G7(9 , 11 , 13) のように数字をずらずらと並べていくのが正式なやり方ですが、これだと書くのが面倒だし、一目見ただけでは構成音が分かりません。

分数コードの形で書くことで、それらの手間を省略できるものがあります。

C/D , C/F , C/A、あとは場合によっては C/B , C/F# なんかもこのグループに当てはまります。

例えばD7(9 , 11) と楽譜に書いてあっても、なかなか一瞬では構成音が分かりにくいのですが、C/D と書いてあれば楽勝です。ギターは分子を弾いて、ベースは分母を弾くだけなのですから。

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構成音はどうなるでしょうか。

分子にC(ドミソ)としか書いていないわけですから、真ん中に堆積していた音がダルマ落としのようにゴッソリと無くなってしまいます。

特に3rdの音がなくなってしまうことで、当初意図していたD7とはちょっと違った浮遊感あるサウンドになります。これは好きな人にとっては堪らない響きなので、使う人はとことん使います。

 

また、当初のコードから見て11thに当たる音が含まれている場合、その11thをsus4に読み替えることで C/D → D7 のようなコード進行をすることも可能です。

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そのままテンションとして使うか、sus4として元の3度堆積和音に戻るか。この2つの使い方があることを覚えておきましょう。

 

アコギ一本の場合、Dm/GはG7、Bm/EはE7のように、テンションを省略した状態で弾いても問題ありません。

 

未解決型

では最後、未解決型です。

これは、本来の和音に対する倚和音として形成されたはずの和音が、解決せずにそのまま居座ってしまった形です。

具体的に言うと、C/C# という和音はC#の転位和音で、本来であればすぐにC#に戻らなければいけないのに、それがいつまでも解決せずに居座っている状態、ということです。

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C/E♭ , C/F# , C/A♭ などがこのグループに含まれます。あとは先程のC/Bなどもそうですね。

ただし、弾いてみれば…いや、弾かなくても分かりますが、現代音楽に出てきそうなトンデモナイ響きの和音ですから、普通のポップスなどで使われることはまずありません。

 

さて、これで全ての分数コードの分類が終わりました。繰り返しますが、この分類法は私が勝手に考えたものなので誰にも通じませんよ。

コード初心者の方は、分数コードまで分かるようになればもう一人前です。コード譜を初見で弾けるようになったら、バンドを組んだりライブに挑戦したりしてみましょう。

 

 

www.mie238f.com