音楽理論 ざっくり解説

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第三転回形の和音

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今日のテーマは、第三転回形の和音です。

コードで言うとG/FとかC/B♭とか、そういうやつですね。三和音の形では存在しませんが、7th以上の音がくっつくことによって定義することができます。

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第三転回形の和音で注意しなければいけないのは、ベース音が限定進行音であるというただ一点のみです。他には特にうるさい決まりは無いので、使い勝手のいい和音ですね。

G/Fを例にとると、ドミナントなので次はトニックに進行します。ベース音が限定進行でミの音に行くので、後続和音はC/Eに限られますね。(Emは古典和声ではまず使われません)

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トニックという観点から言うとAmも該当しますが、Amを後続にしようとすると第二転回になってしまうので、これはいけません。しかしAmの第二転回はEに進行しますから、全体としてはG/F→Am/E→E7みたいなコード進行になって、これはこれで特に問題なさそうですけどね。

ただ私はこの進行を試したことがありませんので、もし挑戦なさる方がおられましたら自己責任でお願いいたしますw

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さて、第三転回はこれぐらいしか語ることがないので、ついでに第四転回について見てしまいましょう。

 

第三転回が7th以上の音を付加することによって定義できるように、第四転回は9th以上の音を付加することによって定義することができます。古典和声ではドミナントのときに9thの音が登場します。

(他の場面でも登場しないわけではないのですが、かなりレアです。9th以上の音はポピュラーでも「テンション」と呼ばれるように、オマケみたいな存在ですから、古典和声には基本的に登場しません)

 

さて、そんなドミナント9thの和音ですが、不思議なことに古典和声では第四転回形は登場しません。G9/Aというコードは存在しないのです。その理由をいくつか見ていきましょう。

 

まず、和音として難しいw

これが一番分かりやすい理由ですね。私は何度も言っていますが、和音は難しくなればなるほど複数の性質を持つようになります。つまり和音の意味や進行を明確にすることができないため、古典和声では扱わないのです。

古典和声ではEmさえ中級者向け和音です。G9/Aなど扱うわけないのです。

 

次に、9thの音は転位音であるということが挙げられます。

どういうことかと言うと、9thとは独立した音ではなく、根音が励起して2度上に上がった状態だということです。

(7thも本来は転位音だったはずなのですが、今ではすっかり主要キャラ扱いになってしまっています。サザエさんの声優や笑点のメンバーも、時間がたつと違和感なくなってきますよね。それと一緒です)

励起した音はエネルギーを放出してストンと落ちるのが宿命ですから、9thの音も早く2度下に落なければいけません。というわけで、アナリーゼ上は「G7が一時的におかしくなった形」として処理されてしまうため、わざわざ第四転回形として処理するケースが存在しないという結論になってしまいます。

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ついでにもう一つ。

和声には「第9音は根音と第3音よりも上に置かなくてはいけない」という規則があります。つまりG9のラの音は、ソとシよりも上に置かなくてはいけないのです。この規則を理由に第四転回は存在しないと言う人もいるのですが、それはちょっと違いますね。

なぜなら、この規則には続きがあります。「ただし、前の和音から保留されていればこの限りではない」とされているのです。

まぁ第3音はともかく、さすがに根音より下に置くのはマズイみたいですが、和声には根音省略という技もありますし、結論としては第9音が低音に来てもいいということになります。

 

では無理矢理ドミナントの第四転回形を作るとどのような進行になるか考えてみましょう。

まず、第5音以外の全ての音は限定進行なので、次に来る音は決まっています。ラはソに、シはドに、ファはミに進行します。するとCのコードの第二転回形が出来上がりますね。

ちょっと嫌な予感がしますが続けましょう。第二転回ということは、次は同じルートの3度体積和音に解決しますから、次はGのコードに進行します。

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ん? Gのコード?

なんと、頑張って進行させたはずが元の和音に戻ってきてしまいました。メビウスの輪みたいですね。というわけで、この進行はあまり意味を成さなくなってしまいます。

 

ちなみに…。

ルートをソではなくソ♯(ラ♭)に進行させることで、このメビウスの輪のような進行を回避させる技もあるようですが、私はこの進行は全く好きになれません。

 

さて、色々な角度からアプローチをしてきましたが、第四転回はどうも古典和声では上手く扱うことができませんね。7thがいつの間にか主要キャラとして認められたように、おそらく未来の和声学では9thも上手く取り扱われているかもしれませんが…。

その頃の笑点の司会は、きっとサイボーグになった歌丸師匠が担当していることでしょう。