今日のテーマはトータル・セリエリズム(総音列技法)です。十二音技法がさらに進化した形なのですが、考え方としてはそれほど難しくありません。十二音技法についてよく知らないのにいきなりこちらのページにたどり着いてしまった方は、こちら「12音技法について」を読んでからもう一度来てね。
十二音技法とは、自分で音列を定義して、それに従って音符を置いていく作曲技法でしたね。つまり次に何の音を使うか、音高が機械的に決定してしまうわけです。
トータル・セリエリズムは、音高以外の要素(強弱とか音の長さとか演奏法とか)も機械的に決定させてしまいましょう、という技法…と言うか試みです。
あまり説明することは多くないのですが、とりあえず見てみましょう。
強弱
例えば強弱について、次のように1から12まで番号を振ります。
これを音列と組み合わせます。「十二音技法」のページで作成した音列に再度登場して頂きましょう。
この番号に対応するように強弱を配置するのですが、このまま「ドがppppp」「レがpppp」と配置していくとワンパターンで面白くないので、例えばこの音列を2度上に移高してみましょう。(ドが1、レが2…という音符と数字の対応関係は変えずに移高する)
多少、数字がバラバラになりましたね。
あとは先程の強弱記号と数字の対応表に従って、順番に「レがpppp」「ミがppp」「ファ#がfff」とすればいいだけです。元の音列が無調的であれば、もっと数字がランダムになるので面白くなりますよ。
或いは、音列の順に番号を振るのではなく、鍵盤の音高順に「ドが1、ド#が2、レが3…」という具合に番号を振っていけば最初からランダムになります。また、今回は強弱記号を「弱→強」の順番に並べましたが、「pが1、fffが2、mfが3…」のように完全ランダムに配置しても面白いですね。
十二音技法は、とりあえず定義さえしっかりしていれば後は何でも有りです。難しく考える必要はありません。
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音価
続いて音の長さについて見てみましょう。…と言ってもやる事は先程と全く一緒なのですが。
このように音価の順番に番号を振って、
音列と組み合わせるだけです。
本当は音と音の間に休符を挟まないほうがいいようなのですが、まぁ挟んでも怒られはしないと思います。いや、多分ね…。
その他
ここまで来ればもう説明しなくてもお分かりだとは思いますが、その他の要素についても音列と組み合わせることができます。例えば演奏法であれば、
このようになります。
並べる順番や、どんな演奏法を使うかは決まっていないので、好きなものを12個適当に選んでください。
以上のように、12個の配列さえ定義できるなら何でも十二音技法に組み込むことができ、またそうやって作られた音楽のことをトータル・セリエリズムと言うわけです。
例えばバンドであれば、ギターのエフェクターに番号を振るとか、ドラムセットに番号を振るとか、そういうことをすればトータル・セリエリズム風の曲を作ることは一応可能です。
専門書を読めばもっと複雑なことが書かれています。
例えばシュトックハウゼンは、音高ではなく振動数を用いました。つまり、例えばドとソは振動数比が1:1.5 だから、ソはドの1.5倍の長さで演奏しろ、とかねw
他にも、こんな複雑なことをよく考えたなーと思う技法が多々あるのですが、果たしてそれが人間に演奏可能なのか、聞いて面白いのかということになると別問題ですね。
Pierre Boulez, Structures I & II (Kontarsky/Kontarsky)
う~む、分からんw
トータル・セリエリズムの考え方を自作曲に取り入れる場合は、ほどほどにしたほうが良さそうですねw