対位法とは、ルネサンス期からバロック初期にかけて確立された音楽理論です。
簡単に言うと、普通はメロディに対して和音で伴奏をつけると思いますが、それに対して伴奏部分もメロディにしてしまうのが対位法です。もっとざっくり言うと、カエルの歌を思い浮かべて頂ければ分かりやすいかと思います。
では一体どうやってメロディをもう一つ作ればいいのか。
簡単に言えば「綺麗にハモるかどうか」です。対位法とは綺麗なハーモニーを追求していく中で生まれた理論です。よって基本は3度・6度の和音を使い、たまに5度・8度を入れていくのが無難です。逆に、2度や7度は音が濁るので使えません。
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本を見ると、3度の連続・6度の連続は3回までとか4回までなどと書かれています。別にこの回数制限に意味はなく、つまり「ほどほどにせぇよ」という意味です。
もちろん、連続5度はダメですよ。
2声対位法
では以上の条件の下で、カエルの歌にもう一つのメロディを乗せてみましょう。
まぁあまり面白くはありませんがw とにかく理屈としてはこんな感じです。
しかし、実際の曲はこんなに単純ではありませんよね。色々と音が動き回ります。次はそういう音の取り扱いについても学びましょう。
ある和音の構成音に含まれていない音が鳴った場合、その音を非和声音と呼び、それらの音は元の和音の構成音が変化したものであると考えます。詳しくはこちら(非和声音(和音外音))をご覧下さい。
対位法の場合、2度や7度の音程は使えないと先程言いましたが、この非和声音の考えを使うことによってそれらの音程も使えるようになります。
例えば、上の譜例のように「ドレミー」というメロディがあるとします。低音パートの音はドなので、レの瞬間は2度(9度)になるので不協和音程ですね。
しかしこれは、元々「ドミ」というメロディだったものが、ドとミを滑らかに連結するためにレの音を間に挟んだ形です。元々の「ドミ」にはルール上何の問題もないし、ましてや連結を滑らかにするという大義名分のもとに挟まれた音符なのだから、このレは不協和音程と呼ぶには忍びない。
じゃあ、このレはOKにしちゃおうぜ!
つまり「元の形に問題がなければ、その変化形に多少不協和音程が含まれていても大目に見てやろう」ということです。ちょっと都合が良すぎるようにも思えますが、便利なルールですからあまり突っ込むのはやめましょうw
こういった不協和音程回避のテクニックが他にもいくつか存在するのですが、ともかくこの考え方を使ってもう一度作り直してみましょう。
だいぶ曲らしくなってきましたね。様々な非和声音のパターンを紹介するために無理矢理詰め込んだので、理論的に少々怪しいところがありますがご了承ください。
…え、和声法の最後の方っぽい?
そうですね。音楽史を考えればわかりますが、対位法は和声法成立以前にまとめられた理論です。対位法が発展していく中で、「この和音からこの和音に行くと何か気持ちいいぞ」ということがだんだん分かってきたので、その「和音の繋がり」に注目して理論をまとめ直したものが和声法です。
つまり、対位法成立時には和音の進行という概念はなかった(…わけではありませんが、今よりも希薄でした)ので、あまり和音のことは気にせず、単純に音程が協和か不協和かということだけを考えて作ったほうがバロック感が出ますよ。
和音に慣れきった我々現代人には逆に難しいですがw
3声対位法
次に三声以上の対位法について解説します。
三声と言っても特に難しいことはなく、今までやってきた「基本は3度・6度、たまに5度・8度」をそれぞれのパートに適用するだけです。
なんか姓名判断みたいだなw
しかし、こうなってくると良い配置を探すのも一苦労ですね。ですので、「3度・6度はあまり連続させない」のような枝葉のルールだったら少々破っても大目に見て貰えるようです。
連続5度のような根幹のルールは駄目ですけどねw
あ、そう言えば4度の音程について全然触れていませんでしたね。4度は第二転回形の和音を連想させるため、二声のとき、あるいは三声以上のバスには使用できません。高音で使う場合や、倚音など非和声音のルールに則って使う場合は問題ありませんよ。
と言うわけで、カエルの歌を三声にしてみましょう。
大喜利「こんなカエルの歌はイヤだ」って感じですねw
相変わらず怪しい部分がありますが、その辺はご了承下さい。
基本的に対位法は何声になってもやり方は一緒です。なので、まずは二声を徹底的にマスターしましょう。そうすればその延長で自動的に三声以上も作れるようになりますよ。
ちなみに四声以上(特に五声以上)になると、ずーっと同じ音を伸ばしているパートがあったり、休みだらけのパートがあったりして、結局三声のときとあまり変わりませんw
対位法は音が細かく動き回ることや和音が目まぐるしく変化していくことから、少ない音数でもゴージャスに聞こえるのが特徴です。三声、いや二声でも上手く作れば充分に響きます。
某RPGの曲(特にお城とか)に対位法で書かれたものが多いのは、中世ヨーロッパの雰囲気を出したかったのが一番の理由ですが、ファミコン時代に少ない音数で曲を書きたかったということも関係しています。
ゲーム好きの方は、お城の曲をイメージすると書きやすいかもしれません。
では、少々長くなってしまったので続きは後編で。
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