今日のテーマは変化記号です。
変化記号というと意味不明かもしれませんが、つまり#とか♭のことです。音楽をやったことのない人でも知ってるかもしれませんね。
超簡単ですからパパッとマスターしてしまいましょう。
シャープとフラット
#とは指定の音を半音上げる記号。♭とは指定の音を半音下げる記号です。
基本的にはピアノの黒いところを弾けばいいのですが、ミファ間とシド間には黒い鍵盤がありません。よって「ミ#」と言われたらファを弾き、「ド♭」と言われたらシを弾くことになります。
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また、#や♭の効果を打ち消す「ナチュラル」という記号もあります。(下譜例の右音符にくっついてるやつ)
#や♭の効力はその小節内のみ。また、オクターブ違いの音には効果はありません。
…とは言っても、やはり演奏している側には紛らわしいので上の譜例は次のように書いてあげたほうが親切です。基本的に、楽譜はルールよりも読みやすさ優先です。
変化記号がくっついた音符がタイで小節をまたぐ場合も、ルール上は改めて変化記号を書く必要はない(下譜例1)のですが、書いておいてあげたほうが親切です。(譜例2)
調号
ちなみに今まで説明してきた「その小節内で特定の音にのみ効力を発揮する変化記号」のことを臨時記号と言います。変化記号にはもう一つ、音部記号の隣に書く「調号」というものもあります。
臨時記号と調号の違いが分からない人がたまにいますが、調号は小節が変わろうがオクターブ違いだろうが延々と効果を発揮します。調号は「この曲のファは全部#だよ! いちいち書くの面倒だから先頭にまとめて書くよ!」という意思表示です。だから余程のことがない限りはその運命(さだめ)から逃れることはできません。
調号について詳しく知りたい方はこちら「調と調号」をご覧下さい。
ここまでが変化記号の基本部分です。特に難しくはありませんね。では続いて応用編に行きたいと思います。
ド#とレ♭の違い
#は半音上げる記号。♭は半音下げる記号。ではド#とレ♭は同じ音なのでは? 似たような記号を2つも使わずに、どちらか一方に統一してしまえばいいのでは?
はい。確かにピアノの鍵盤上やギターのフレット上ではド#とレ♭は同じ音です。しかし本来はド#とレ♭は違う音なのです。
ドレミ…の各音は、本来は「他の音と上手くハモるかどうか」を基準に決められ、そのピッチは数学的な非常に面倒な計算によって求められます。その計算によると、ラと上手く協和するド#と、ファと上手く協和するレ♭のピッチは微妙に異なります。
しかしピアノの鍵盤はそれを無視して全部近似値でチューニングしているため、ド#もレ♭も同じ音になってしまっているのです。つまり本当はピアノの和音は全て不協和音。
…とは言っても、その誤差は(定義にもよりますが)半音の3分の1とか4分の1程度。普通の人には違いは分かりません。ちなみにバイオリンの人なんかは、ド#を弾くときとレ♭を弾くときで微妙に指の位置を変えているらしいですよ。
この辺について詳しく知りたい方はこちら「音律」をご覧下さい。
さらに半音変化させる
では次は「ダブルシャープ」と「ダブルフラット」を解説します。
左のXのような記号がダブルシャープで、右がダブルフラットです。ダブルシャープは独自の記号なのに、なぜダブルフラットはそのまんまなのでしょうか。Yとかにしてあげればいいと思うのですが…。
だいたい予想がつくと思いますが、効果は「全音上げる」「全音下げる」です。上の譜例であれば、それぞれ「ソ」「ラ」の鍵盤を弾くことになります。
これらの記号は、調号と組み合わせて使うことが多いです。
つまり、調号によって既に半音上がっている(下がっている)音をさらに半音上げたい(下げたい)場合、これらの記号を用いるわけです。
ソのナチュラルじゃ駄目なの?
えぇ。先程言ったように、「ソのナチュラル」と「ファのダブルシャープ」は本来違う音なんですね。だから少々面倒でもこのような記譜法になります。
スケールで考えると分かりやすいかもしれません。
あまり良い例が思いつきませんが、例えばホ長調(Eメジャー)上にD#のコードを置いた場合、その瞬間のスケールは次のようになっています。(状況によって他にも様々なスケールが考えられますが)
この時、レから順番に音名を振っていくと、「ソのナチュラル」に相当する音に振るべき音名がファしか無いという事態になってしまいます。よってこの音はソではなくファ。
ダブルシャープ・ダブルフラットとナチュラルの関係はちょっと複雑です。
ナチュラルという記号は「全ての変化記号の効果を打ち消す」という、けっこう強い権力を持っています。調号だろうが臨時記号だろうが、全て消してしまう。「凍てつく波動」と同じ効果だと思ってください。
シャープだろうがダブルシャープだろうが、ナチュラルが付いたら元の音に戻ります。別に「ダブルシャープだからナチュラルも2個書かなきゃ」なんてことにはなりません。スクルト1回だろうが2回だろうが、凍てつく波動が来たら全てチャラです。
「ファのダブルシャープ」が「普通のファ」に戻る場合は特に問題はありません。困るのは「ファのダブルシャープ」が「ファのシャープ」に行く場合です。
ルール上は譜例3のように書けばいいのですが、これでは「ダブルシャープをさらに半音上げるのか?」と混乱してしまいそうです。そこで譜例4のように書く場合もありますが、これだと今度はナチュラルの「全ての効果を打ち消す」という働きに引っ張られて、右隣の#まで打ち消してしまいそうになります。
こんな曲を書くことは普通ないと思いますが、もしうっかり書いてしまったらなるべく演奏者に分かりやすい記譜を心がけましょう。
半音の半分
では最後に、もう一つだけ特殊な記号を紹介して終わりにします。
現代音楽や民族音楽では半音よりも狭い音程が要求されることがあり、それを五線譜上に無理矢理記す場合は独自の記号が必要となります。
例えば4分の1音(半音のさらに半分)変化させるという指示のときに上のような記号を使うようですが、これらの記号はまだ記譜法が世界で統一されていないので覚える必要はありません。
さて、今回は変化記号について勉強しました。ド#とレ♭が実は違う音だったなんて、驚きの発見でしたね。
おすぎとピーコも一緒に見えるけれど、もしかしたら本当は別々の人間なのかもしれません。