今日のテーマは、速度記号です。
発想記号は特に覚える必要はないのですが、速度記号は数が少ないので最低限のものは覚えてしまいましょう。速度記号も元々は発想記号同様、曲のイメージを表すものだったのですが、なぜか現在では独立して速さを表すようになっています。
言葉で表す方法
このへんが中心選手ですね。
たまに「アダージェット」「アンダンティーノ」のように接尾語がくっついて、元々の意味より速くなったり遅くなったりする場合があります。(ちなみに、この2例はいずれも元々の意味より速くなる)
変化形としては他にもmolto Allegro(凄くアレグロ)、Allegro assai(非常にアレグロ)、Allegro ma non troppo(アレグロで、しかし甚だしくなく)などがあり、挙げればキリがありません。クラシックの方はこの辺まで覚えたほうがいいですが、ポピュラーの方はその必要はないでしょう。
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さて、ここで一つ注意点があります。
アレグロは一般的に「速い」という意味で使われますが、実際には「陽気な」という意味の言葉らしいです。他の国でも「速い」という認識なのか、それとも日本だけが誤訳をしてしまったのか、そこまでは分かりませんが、とにかくアレグロと書いてあるからと言って速く弾きすぎるのはやめましょう。あくまで「陽気に」弾いてください。
よくある笑い話ですが、イタリアでタクシーに乗って、間に合わないから急いでほしいときに「アレグロ!アレグロ!」と言っても全然急いでくれないらしいです。「俺はいつもアレグロで走ってるぜ~」と言われてしまうとか何とかwww
そういう時は「プレスト!」と言えばいいそうです。
曲のテンポが途中から変わる場合はpiù mosso(前より速く)とmeno mosso(前より遅く)を使いましょう。
テンポがだんだん速くなる場合はaccelerandoもしくはstringendo、だんだん遅くなる場合はritardandoもしくはrallentandoと書きます。リタルダンドはよく使いますね。実はそれぞれ意味が微妙に違うらしいのですが、私にはよく分かりません。
また、変化したテンポを元に戻したい場合はa tempoという記号を書き、冒頭のテンポに戻したいときはTempoⅠと書きます。
ただし、フェルマータの後にはこれらの記号は書きません。フェルマータとは元々「停止」という意味です。曲が一旦そこで停止するから音がジャーンと伸びるのであって、別にテンポが遅くなって音が伸びているわけではないのです。テンポが変わったわけではないので、a tempoなどを書く必要はないということです。
テンポを自由に伸び縮みさせて弾く場合はTempo rubatoという記号があり、これはポピュラーでもよく使われます。「ここはルバートで弾いて」なんて言われますから覚えておきましょう。
ジャズではin tempo(正確な速度で)とセットで使われることが多く、冒頭は歌とピアノでルバート、そこからin tempoでドラムがリズムを刻み始める、というのが定番です。
例えばこの曲であれば、冒頭はルバートで、0分46秒あたりからin tempoです。
in tempoとa tempoは似ているので間違えないようにしましょう。
数字で表す方法
さて、ここまで色々と解説してきましたが、これらの記号では作曲者が具体的にどれくらいのテンポで演奏してほしいのか正確には分かりません。と言うわけで、曲のテンポを正確に指示したい人のためにメトロノームの数字でテンポを表す方法があります。
M.M.記号、通称BPMと呼ばれるやつですが、これはbeats per minute、つまり一分間に何回拍を打つかということを表します。例えば「♩=100」と書いてあったら「一分間に四分音符を100回打つ速さで演奏しなさい」という意味になります。
♩=100
これが一分間に四分音符を100回打つ速さです。60秒で四分音符100個、つまり四分音符1個の長さが0.6秒になるような速さで演奏しなさいという意味です。
「コン」が四分音符と同じ長さなので、演奏するときは当然この「コン」と四分音符を合わせます。
テンポが遅くなるほどBPMの数値は小さく、速くなるほど大きくなります。だいたい♩=80~90を下回るとスロー、♩=120~130を超えるとアップテンポという感じでしょうか。まぁ人それぞれですけど。
メタルだと200を超える曲も珍しくないですねw あとスイングする曲や三拍子の曲は、BPMが170~180ぐらいあっても体感テンポはそれほど速く感じません。
♩=60
♩=120
♩=60というのは60秒で四分音符60個、つまり四分音符1個の長さが調度1秒ということです。♩=120 はその倍の速さなので、四分音符1個の長さは0.5秒ですね。
BPMは四分音符で書くのが一般的ですが、勿論それ以外の音符で書く場合もあります。例えば8分の6拍子のときは「四分音符=いくつ」と書かれても分かりづらいので「八分音符=いくつ」とか「付点四分音符=いくつ」と書いたりします。
八分音符=100
これが一分間に八分音符を100回打つ速さです。実際に曲を聞いてみましょう。8分の6拍子の曲が「仰げば尊し」しか思いつかなかったのですがw
この赤線1本分が八分音符、つまり「コン」1個分です。
では次に付点四分音符のバージョンを見てみましょう。
付点四分音符=100
もう説明しなくてもお分かりだとは思いますが、一分間に付点四分音符を100回打つ速さのことです。
赤線1本分が付点四分音符、つまり「コン」1個分です。1つの「コン」の中に四分音符と八分音符を詰め込むので、かなり忙しい演奏になってしまっていますね。
八分音符と付点四分音符、どちらを使っても間違いではありません。演奏者に伝わりやすいほうを採用しましょう。
ちなみに…。
このBPMを世界で初めて取り入れたのはベートーベンだと言われています。自分の曲がイメージとは違うテンポで演奏されることに常々腹を立てていたベートーベンは、当時発明されたばかりのメトロノームの存在を知るや否や大喜びで自作品のBPMを楽譜に書き加えました。
しかしその数字をよく見てみると、どうも何となく速い。曲によっては演奏不可能な程に速いものまであり、ベートーベンのメトロノームは壊れていたのではないかとまで言われています。
20世紀前半に活躍したバルトークのメトロノームは不正確だったと言われています。その頃でもまだ不完全なものだったのですから、それより100年程前のベートーベンのメトロノームが壊れていても何も不思議ではありません。
「壊れたメトロノーム」なんて、曲のタイトルにありそうですが、後世の私達にとってはただただ迷惑ですw