今日のテーマは長調(メジャーキー)のダイアトニックコードです。
「ダイアトニック」とは全音階という意味で、まぁ簡単に言えばドレミファソラシドのことです。
ドレミファソラシドを和音の形にしたものを「ダイアトニックコード」と言います。
だんご三兄弟
早速ですが作ってみましょう。
簡単です。ドレミファソラシドの上に音を2つ加えて、お団子の形にすればいいのです。
(最後のドは最初のドと一緒なので省略)
これらの7つの和音をダイアトニックコードと言います。
本によっては団子が4つになっている場合もありますが、3つでも4つでも意味は一緒です。
コードネームで表記すると次のようになります。
これらの和音はドレミファソラシドを基に作られているので、曲を作る上で基本となる和音です。
初心者の方が曲を書くときは、まずこれだけを使って書いてみましょう。
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ダイアトニックコード一覧
冒頭で申し上げたように、ダイアトニックコードとは「その音階上の和音」という意味です。
つまり、音階が変化すればダイアトニックコードも変化します。
先程紹介したのはハ長調(Cメジャー)のダイアトニックコードです。
世の中にはそれ以外にも沢山の音階が存在しますから、まずはそれらを一気に見てみましょう。
まずは#が付く音階
次に♭が付く音階
すげー多いな…( ̄д ̄;)
しかし心配無用です。
毎日使っているうちに自然と覚えてしまいますし、詳しくは後述しますが、ちゃんと法則もあります。
ちなみに#7つの調と、♭7つの調はまず使われることはありません。
なぜなら、#7つの調と♭5つの調は同じ。同様に、♭7つの調と#5つの調は同じだからです。
手元にピアノがある方は、それぞれの調を弾き比べてみましょう。全く同じ鍵盤で弾けますよ。(ギターの場合は、全く同じフレットで弾ける)
というわけで、調号を7つ書くよりは5つのほうがまだマシなので、調号7つ書かれることはまず有り得ないのです。(厳密に言うと「全く同じ」というわけではないのですが、初心者の方は同じだと思っていても差し支えありません)
このへんの説明がイマイチ理解できない方は、こちら「移調」「調と調号」で勉強してきてね。
何番目なのかが大事
各調のダイアトニックコードをもう一度よくご覧下さい。
どんな調でも、1番目・4番目・5番目はメジャー、2番目・3番目・6番目はマイナー、7番目は意味分からんやつですねw
どんな調でも、和音の種類(メジャーとかマイナーとか)の並び順は一緒なので、大事なのは和音そのものではなく「何番目か」ということです。
不思議ですが、和音というものは音の高さそのものはけっこうどうでも良くて、この「何番目に並んでいるか」ということで役割が決定してしまうのです。
よって、和音の役割(機能)を表すためには順番さえ分かっていればいいので、次のようにローマ数字で和音を表すこともあります。
(芸大和声では上のようにⅠ・Ⅱ・Ⅲ…と書くのですが、バークリー系の理論書ではⅡやⅢを「Ⅱm」「Ⅲm」などと書きます。私は芸大和声式のほうが慣れているので、そちらに則ります)
例えばハ長調の場合、Ⅰの和音はCのコードです。Ⅰの和音はリーダーの役割があるので、ハ長調の曲においてはCのコードがリーダーを務めます。
しかしそれ以外のキーでは他の和音がⅠに座るので、Cはただの平社員になってしまいます。
上の譜例はどちらも「きらきら星」ですが、ト長調のときのCのコードは完全に脇役と化していますね。代わりにGのコードがリーダーとして居座っています。
しかし、ローマ数字的には同じ和音を使用しているので、どちらも同じ曲に聞こえます。
ローマ数字は店長とか部長とかマネージャーのような役職と同じです。誰が店長になろうが、店長が担当する仕事は変わりません。
ちなみに和音の役割を軽く説明すると、Ⅰ・Ⅲ・Ⅵはトニックと言って、曲の中心となる和音です。
ⅤとⅦはドミナントと言って、トニックに進行したがる性質があります。
ⅡとⅣはサブドミナントで、トニックとドミナントの中間の性質があります。
ではいよいよ個々の和音の詳しい解説です。
C(Ⅰの和音)
Cのコードはトニックです。
ダイアトニックコードの中にトニックは3つありますが、その中でも特に曲の中心となる和音です。1番目だから1番偉いのです。
一番偉いので、曲の始まりや終わりにもだいたいCのコードが使われます。
進行可能コード…全部
おすすめ進行…全部
Dm(Ⅱの和音)
Dmはサブドミナントで、Fの代理コードです。
Fはメジャーコードなので、「ここでFを使うとちょっと曲が明るくなりすぎてしまうなぁ…」とお悩みのときは代わりにDmを使ってみると良いスパイスになったりします。
特に「F→G→C」という終止形のときにDmを代用すると、4度進行が連続することになって非常に綺麗なベースラインが出来上がります。ジャズでは定番パターンです。
一方、芸大和声ではDmを分数コードの形にして「Dm/F→G→C」という進行を奨励されますが、やたら奨励される割には実際のクラシック曲での使用頻度はそこまで高くありませんw
ちなみにDmはFの代理コードであると先程言いましたが、理論上、代理コードは元のコードに進行することはできません。
つまりこの場合、「Dm→F」という進行はNGです。
また、クラシック理論ではCとAm(ⅠとⅥ)に進行することは出来ませんが、ポピュラーではどうなんだろうか…。まぁいずれにしてもダサイのでオススメしませんw
進行可能コード…C(Ⅰ)F(Ⅳ)Am(Ⅵ)以外
おすすめ進行…G(Ⅴ)
Em(Ⅲの和音)
Emは一応トニックに分類される和音なのですが、ちょっと特殊です。
このように、CにもGにも似ているので、どちらとも言い切れない何とも中途半端な性質を持っています。そのため、古典クラシックでは使われることはまずありません。
よくある用法としては、「ミ→ファ」という導音の性質を利用してFに進行したり、「ミ→ラ」という4度進行を利用してAmに進行したりします。
Cの代理なのでCには進行出来ません。
進行可能コード…C(Ⅰ)を除く全部
おすすめ進行…F(Ⅳ)とAm(Ⅵ)
F(Ⅳの和音)
Fはサブドミナントです。
楽曲というものは基本的にトニックとドミナントがあれば成立するのですが、それだけでは面白くないので第三勢力として存在しているのがサブドミナントです。
トニックが主語、ドミナントが動詞だとすれば、サブドミナントは形容詞や副詞のようなものです。
これがあることによって文章が相手に伝わりやすくなります。(ちなみにベートーベンは主語と動詞だけの曲が大好きです。性格が良く出ていますねw)
クラシック理論ではAm(Ⅵ)には進行できませんが、ポピュラーだったら気にしなくていいと思う。
小技を一個紹介すると、CとCの間にFを挟むときは「C→F/C→C」とするとベースラインが綺麗になります。
進行可能コード…ポピュラーだったら全部
おすすめ進行…状況によるが全部
G(Ⅴの和音)
Gはドミナントです。ドミナントはトニックに進行したがる性質があります。
ドミナントとトニックは「緊張と緩和」のような関係にあります。トニックに進行した瞬間「あ~良かった」という気持ちになるのです。
例えば音楽の授業で礼をするときの「アレ」は、「C→G→C」というコード進行で出来ています。
手元に楽器がある方は、最後のCを違うコードにして弾いてみましょう。
頭を上げるどころか、そのままコケてしまいますよw
ドミナントは7thの音を加えることで、トニックに進みたがるパワーがアップします。
Gに元々含まれるシの音と、7thのファの音は不安定な音程関係にあるので、安定した音程に進みたがります。
「シファ」のときは、早く「ドミ」に行きたい気分になりますね。
そして「ドミ」に変わった瞬間「あ~良かった」という気分になるはずです。これが音楽の緊張と緩和です。これによって音楽が進行していきます。
進行可能コード…トニック
おすすめ進行…C(Ⅰ)とAm(Ⅵ)
Am(Ⅵの和音)
Amはトニックで、Cの代理コードです。
FとDmの関係同様、Cだとちょっと明るすぎるなぁ…というときにAmを使うと良い変化球になります。
基本的にはCと似たような性質を持っているので、他のどのコードとも親和性があります。
ただしCの代理コードなので、Cには進行できません。
(稀にC/E に進行することがあるようなのですが、初心者の方は知らなくて構いません)
進行可能コード…C(Ⅰ)を除く全部
おすすめ進行…状況によるがC(Ⅰ)を除く全部
Bm(♭5) (Ⅶの和音)
長調のⅦの和音はちょっと特殊なので、ほとんど使われることはありません。
本当はⅥの和音までで充分なのですが、「ドレミファソラシ」の各音をお団子の形にすると当然シの音の上にも和音が出来上がるので、それによって生まれた、ただの「理論上の産物」だと思ってください。
一応機能としてはドミナントで、Cに進むことができます。4度進行を利用してEmに行くのも良いですね。
この形の和音(減三和音)は短調ではそこそこ活躍するのでお楽しみに。
はい、ではこれで長調のダイアトニックコードの解説は終わりです。
短調編はこちら「ダイアトニックコード(マイナー)」