ギターでコードを覚える 後編です。前編はこちら「ギターでコードを覚える 前編」
前編ではメジャーコードを押さえた状態から指の位置をずらすことで様々なコードに変化させる方法を学びました。後編では、AとEという2つのコードのポジションを移動させて、別のコードに変化させる方法を勉強しましょう。
少しでもギターをかじったことのある方ならご存知でしょうが、ギターには「セーハ」という技があります。セーハとは一本の指で複数の弦を押さえることで、一般的には人差し指を使って1弦から6弦まで一気に押さえることを指します。
セーハは別名「バレー」とも言うので、セーハを伴うコードのことを「バレーコード」と言います。(セーハはスペイン語、バレーはフランス語らしいのですが、私も詳しくは分かりません)
ではそんなバレーコードについて見ていきましょう。
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フレットの性質
…おっとその前に、ギターのフレットについて説明しなければいけません。
ギター(と言うか、弦楽器は何でもそうですが)のフレットは、1つ上がるごとに音が半音ずつ高くなるという性質があります。半音というのは、ピアノの鍵盤1個分ですね。
例えばギターの6弦の開放弦を弾くとミの音が出るわけですが、1フレットを押さえると鍵盤1つ分上がってファの音が出ます。同様に、2フレットを押さえるとさらに1つ分上がってファ#の音が出るのです。
この関係を頭に入れておいてください。
左手はズラすだけ
これでやっと本題に入れます。
先程説明した性質によると、人差し指で1弦から6弦までセーハした場合、全ての弦が半音上がるという現象が起こることになります。
これを利用して、AとEという2種類のコードだけを使って次々と他のコードを作り出してしまうのがバレーコードの考え方です。
では実際に見てみましょう。まずはAのコードの場合です。
Aのコードは「ラ ド# ミ」という音で構成されているのですが、1フレットをセーハしながらこのコードを押さえることによって全ての音が半音上がり、「シ♭ レ ファ」という構成音になります。
これは実はB♭のコードなのです。
同様に、2フレットをセーハすることによって更に半音上がってBのコードを作ることができ、3フレットをセーハすることによってCのコードを作ることができます。
はい、初心者の方はここで2つの疑問が生じたことでしょう。
まず一つは、上の図でAとBのコードの間にはA#(B♭)というコードが存在するにも関わらず、BとCの間にはB#(C♭)というコードが存在しないことです。
これはピアノの鍵盤を思い浮かべて頂ければよく分かるのですが、ラとシの間にはラ#(シ♭)という黒鍵が存在しますが、シとドの間には黒鍵が存在しないためです。そのため、Bの次がいきなりCになってしまうのです。
この辺をもっと詳しく知りたい方はこちら「ドレミはCDE」をご覧下さい。
(混乱を招くかもしれないし、滅多に無いことなので初心者の方は覚えなくてもいいのですが、一応説明しておくと、「#」とは半音上げる記号、「♭」とは半音下げる記号です。よって、もし楽譜に「B#」と書かれていたらそれはCのコードを弾くという意味ですし、「C♭」と書かれていたらBのコードを弾けという意味になります)
もう一つの疑問は、いきなりCという見慣れたコードが登場したことですね。
Cは「2弦1フレット・4弦2フレット・5弦3フレット」という押さえ方があったはずですが、そのCと、いま登場したCは何が違うのでしょうか。
実は、どちらも一緒なのです。
Cというコードは「ドミソ」の和音を表しています。つまり、ギターからドミソという和音が出ていれば、どんな押さえ方でもCのコードと呼べるのです。
試しに上の2種類の押さえ方を弾き比べてみましょう。どちらも同じ音がしますよ。
(最高音が違う音なので微妙に違って聞こえるかもしれませんが、バレーコードのCの1弦を弾かないようにすれば、ほぼ同じに聞こえますよ)
このように、Aのコードを押さえながらセーハする位置を変えるだけで様々なコードに変形させることができるのです。
次に、Eのコードを押さえるバージョンも考えてみましょう。理屈は先程と全く同じです。
このように、1フレットをセーハすると半音上がってFのコードになり、2フレットをセーハすると更に半音上がってF#のコードが出来上がります。
EとFの間にE#(F♭)というコードが存在しない理由は、先程同様ミとファの間に黒鍵が存在しないことによります。
ちなみに…。
Fのコードが難しくて押さえられない方はこちら「簡単なFの押さえ方」をご覧下さい。
さて、前編ではAやEのコードの指の位置を少し変化させてマイナーコードや7thコード等を作る方法を勉強しましたね。あのテクニックも勿論そのまま使うことができます。
例えば、Emのコードを押さえながらセーハをすればFm , F#m , Gm …というコードに変形させることが出来るし、E7のコードを押さえながらセーハをすればF7 , F#7 , G7 …というコードに変形させることが出来ます。
このテクニックを理解していれば、頻出コードはほとんど全て押さえられるのです。
理不尽なE♭
今までAとEのコードについて長々と解説してまいりましたが、それ以外のコードでもこの理論は応用できるのではないか!? と思われた方もいるでしょう。
しかし残念ながら、それはできません。
理由は簡単で、押さえられないからですw 上の図のようなバイオレンスな押さえ方が可能な人は、おそらくいないでしょう。
結局のところ「人差し指を使わなくても押さえられる」「押さえる場所が全体的にまとまっている」という2つの条件を満たすのがAとEしかないので、それ以外のコードはバレーコードに応用することができないのです。
この問題が理解できると、なぜE♭のコードがあんなに弾きにくいのか、その理由もよく分かります。
E♭のコードは、6フレットという辺境の地をセーハしなければいけません。何とも無慈悲な形ですが、こう見えても一応これが最も簡単な押さえ方なのです。
E♭はDの半音上なので、1フレットをセーハしつつDのコードを押さえれば理論上はE♭のコードが出来上がるのですが、残念ながら人間には不可能です。
同様に、3フレットをセーハしつつCのコードを押さえる方法もありますが、これも無理ですね。
ただし、ルートを無視すれば、Cm7の押さえ方で5弦6弦をミュートした形を使うことができます。ベーシストがいる場合はこの押さえ方で代用ができます。
さて、コードの押さえ方の法則性について色々見てまいりましたがいかがでしたでしょうか。
セーハを制覇して、コードを楽に覚えてしまいましょう!
もっと難しいコードに挑戦する方はこちら